【浜口京子 気合でＧＯ！】レスリングで五輪２大会銅メダリストの浜口京子（４６）の好評連載「気合でＧＯ！」、今回は同男子フリー６５キロ級で３月のアフリカ・オセアニア予選を勝ち抜きサモア代表としてパリ五輪に出場する赤澤岳（３３）との対談をお届けする。実は、赤澤は京子の元練習パートナーで、両者は旧知の仲。久々に東京・浅草の浜口ジムを訪問した赤澤が語る、五輪を引き寄せた驚異の行動力に京子は仰天しきりだ。
京子 おめでとう！ 家族で喜んでいるよ。
赤澤 ありがとうございます。ここはパワースポット。大学時代に（アニマル浜口）会長にウエートを教えてもらったのが最初。卒業後ロシアに渡って、ビザが切れて帰国した時に京子さんのパートナーに。２０１２年ロンドン五輪の後、合計１年くらいかな。
京子 暑い日も寒い日も渋谷周辺から浅草まで自転車で来てくれた。ロシアに行ったり、まさに野獣！ 父を超えた！
赤澤 ええ！ 京子さんは本当にピュアで。会長と３人、練習は２人だけなのに、僕が「肩回して～」って言うと京子さんは高校生が全体練習で出す大声で「ヘーイ！！」。「周り回って～」「ヘーイ！！」。「有名人なのにすれてない！」と。
京子 やだ～。なぜサモアにご縁が？
赤澤 どこなら五輪に出られるか考えた時に、オセアニア地域があり、サモアが出てきた。中学の英語の先生が昔、サモアで柔道を教えていて。先生を探して聞いた、教え子３人の名前を書いた紙を持って１７年にサモアに行きました。
京子 え～！ 名前だけで探し当てたの？
赤澤 はい。１人がたまたま日本大使館で働いてて、レスリング協会の元会長を紹介してくれた。協会はなくなってたんですが、元会長がまた会長になってくれて。ゼロから人集めて、草むらで練習して。教えながら自分の練習もして。昨年末に国籍を取りました。
京子 五輪予選（３月）までギリギリだ。
赤澤 はい。サモアは国籍取得の時、首相立ち会いの儀式が必要。でもフィアメ首相は腰の手術で１２月下旬まで海外で、帰国後も自宅静養。仕事に復帰してなかった。そしたら協会会長が「ガク、家に行こう！」と。
京子 え！ 行っちゃったの？
赤澤 はい。ご自宅前のカフェに集まって「今日は行けるかなぁ」と。で、ある時首相が「ガク、久しぶり～？」って。
京子 え？
赤澤 マッサージの仕事をしていたんですが、フィアメ首相はお客さん。知り合いなんです。大臣も家に来てくれて、無事行われました。
京子 夢を持って行動し、出会いも訪れる。パワーが半端ないわ。レスリングを始めたのは？
赤澤 遠い親戚に瀬古利彦さん（元マラソン五輪代表）がいて。小学生の時「ねえ瀬古お父さん、五輪に出たいから、何かやりたい」って言ったら「ＯＫ。柔道だったら山下（泰裕）、レスリングだったら富山（英明）を紹介する。みんな金メダリストだ！」と。レスリングをちょっとやった時に面白かったので、富山先生に連絡しました。
京子 すごいわ。今はどんな練習を？
赤澤 実は、五輪予選で左ヒザの前十字靭帯を断裂しちゃって。リハビリや治療をして、上半身を鍛えてます。普通にやったら自分はメダルのレベルではないけど、ライバルを本気で研究すれば見えてくる。本気でメダルを取りにいきます。
京子 スキー競技（クロス）で、トップ集団が転んじゃって大逆転で優勝した選手もいる。五輪は何が起こるかわからないよ。絶対にメダルを取ると思ってて。私の心がここら辺（体の前）にあるからね。気合だよ～！（と腕にパワーを送る）
赤澤 京子さん、僕のケガはヒザですよ！（笑い）。ボケとつっこみの練習パートナー時代と、いい意味で全く変わってなくて、うれしかったです。ますますやる気が出ました！
【猫ひろしはカンボジア国籍でリオ五輪マラソン出場】国籍を変えて五輪に出場した選手は多数いる。フィギュアスケートペアでロシア選手と組んだ川口悠子氏は２００９年にロシア国籍を取得し、１０年バンクーバー五輪に出場。４位に入った。サッカーではブラジル出身の田中マルクス闘莉王氏が０３年に日本国籍を取得し、０４年アテネ五輪に出場。また、タレントの猫ひろしは１１年にカンボジア国籍を取得し、１６年リオデジャネイロ五輪男子マラソンに出場した。
☆あかざわ・がく １９９０年６月２１日生まれ。東京都出身。剣道を経て京北中（現東洋大京北中）でレスリングを始める。２００５年、全国中学生選手権で優勝。埼玉・花咲徳栄高に進学し、０８年にインターハイ優勝。日大時代はケガに苦しみ、卒業後はロシアを拠点に練習。１７年にサモアに移住し、１８年に看護師のシナバリーさんと結婚。昨年１２月にサモア国籍を取得した。３月のアフリカ・オセアニア予選を勝ち抜き、パリ五輪出場を決めた。
