佐藤寛太 人にも仕事にも恋「好きになったら一筋!嫌なこと、しんどいことが多少あっても諦めきれない」

映画『不死身ラヴァーズ』に出演する佐藤寛太さんが、自ら監督にSNSのDMで連絡したという本作出演の経緯や、作品の裏側を明かしました。

【写真10枚】アンニュイな表情も 佐藤寛太 撮り下ろしショット!

5月10日公開の映画『不死身ラヴァーズ』は、高木ユーナさんの同名コミックが原作で、松居大悟監督の最新作。“好き”というまっすぐな思いが胸を打つラブストーリーです。

主人公・長谷部りの(見上愛)は、幼い頃に出会った“運命の相手”甲野じゅん(佐藤寛太)と中学生になって再会。しかし、両思いになった瞬間にじゅんは消えてしまいます。じゅんは高校の先輩、アルバイト先の店主など、何度も別人になってりのの前に現れ、そのたびに彼女は全力で恋をして…。りのの“好き”が起こす結末とはーー。

じゅん役の佐藤さんに、出演オファーを受けた際の心境や、共演の見上さんの印象、「一途」だという恋愛観についても聞きました。(前後編の前編)

親友・金子大地とのサウナでの会話がきっかけ

――じゅん役に決まったときの気持ちを聞かせてください。

実は、僕と仲のいい金子大地くんが、松居監督の作品『手』(2022年)に出演していて、大地とサウナへ行ったときに「あの映画めちゃくちゃ良かった」と話したら、大地が「寛太もいつか、松居監督とご縁があるかもね」と言ってくれたのがきっかけです。

ずっと松居監督の作品に出たいと思っていたので、勢いでその日の帰りに、SNSからDMを送ろうと思ったんです。でもちょっとビビって、その日は送れなくて(苦笑)。文章を一晩か二晩寝かせて、「何もしないより、やって後悔したほうがいい」と勇気を出して送ったら、2日後くらいにお返事をいただけて、すごくうれしかったです。

その後少しやり取りをして、数ヵ月後にこの作品のオファーをいただきました。とにかく松居監督の作品に出演したかったので、タイミングも含めて運命的な出会いを感じました。

――松居監督作品の、どんなところに惹かれますか?

人間のダメで情けない部分にもスポットを当てて、人と人との対話なかで見せていくところが、松居監督の“色”かなと僕は思っています。

この作品も、一見するとキラキラした恋愛物語かもしれませんが、りのは「私、無敵!恋って素敵!」という“最強の主人公”ではなく、悩んでウジウジすることもあります。そういう面が見えるからこそ、りのの笑顔には胸をつかまれるものがあると感じています。

――憧れの松居監督と仕事をして、得たものはありますか?

「安心しないこと」だと思います。松居監督には、僕にはわからない“正解”が見えているんじゃないかと思わせる不安を常に感じます。

そもそも松居監督は、僕が憧れている池松壮亮さんや蒼井優さんを撮っている方です。監督が今まで一緒に仕事をしてきた役者さんの顔が浮かんで、そのレベルの高さに不安になって…“彼女の元カレと自分を比べる”みたいな状態になりました(苦笑)。でも、いい意味でプレッシャーというか、今の僕にとって必要な経験だったと思います。

アドリブを見返して「恥ずかしい!」

――じゅんは陸上選手の中学生、軽音楽部の高校生、クリーニング店の店主など、さまざまな「甲野じゅん」として、りのの前に現れます。どう演じようと思いましたか?

最初は、全然違う人物として演じ分けようと思っていました。でも、たぶん監督はそれを求めていないだろうと感じて、自分の中でどんどん研ぎ落とされていって、気づけばもう素の僕に近くなっていました。丸裸にされたような。どの「甲野じゅん」を演じていても、僕自身がしゃべっているような感覚で。恥ずかしかったです。

――りのと仲睦まじく話すシーンは、アドリブもあったそうですね。素の佐藤さんが垣間見えるようで、リアルな感じがキュンとします。

ありがとうございます。でも、自分で映像を見返すと「俺はなんてアドリブが下手くそなんだろう!」って、もう恥ずかしくて。「勘弁してくれ!早送りしてくれ!」と思いながら見ました(苦笑)。

――そういったところも、松居監督の演出のひとつなのでしょうか?

たぶんそうだと思います。撮影現場では、それが監督の狙いだとはまったく思わず、「これでいいのかな?」と思いながら演じていました。出来上がった映像を見たり、こうして取材で話したりするなかで、気づきました。

「役者を続けられているのは、作品に恋しているから」

――主演の見上さんの印象はいかがですか?

共演したいと思っていた方なので、ご一緒できてすごくうれしいです。毎回、新鮮な顔で、新鮮な声で、新鮮なお芝居をされる方だと思います。りのの暗い面もしっかり表現されているから、笑ったときに強いエネルギーを放つ。人間らしさを感じる、すごく素敵な方だなと思います。

僕が見上さんの年齢(23歳)だった3〜4年前は、自分の知識不足・経験不足が原因でなかなか実力を出しきれなくて、いつもピリピリしていました。「尖らないと芝居なんてできねぇ!」みたいな。必死だったんですよね。

でも、当時の僕には難しかったことを、見上さんはまるで息をするように、さらりとやっていて、「俺の尖ったこだわりは何だったんだろう…」と(苦笑)。見上さんは考え方が大人なところが素敵ですし、それがお芝居にも表れているのだろうと思います。

――“直球の恋愛映画”である本作に携わって思う、佐藤さんの恋愛観を教えてください。

恋って人に対してだけではなく、物や仕事に対してもあると思います。僕が役者を続けられているのも、たぶん作品に恋をしているから。嫌なことや、しんどいことが多少あっても、恋だから諦めきれないんですよね。追いかけている自分が好きというのもあるし、ちょっとした依存とも言える。でも、それが踏ん張るパワーになっている気もします。

――りのも一直線に“追いかけるタイプ”ですが、共感できる部分はありますか?

めちゃくちゃ共感します!僕も、好きな相手がいたらもう一筋です!

――松居監督にも「一緒に仕事をしたい」と、自ら連絡したわけですものね。

はい。僕はそれしかできないので。当たって砕けたいんですよね(笑)。当たりに行きたい先がある、いつか一緒に仕事をしたいと憧れる監督がいるって幸せなことですよね。あぁ、なんていい話(笑)!

撮影:今井裕治
ヘアメイク:Kohey
スタイリング:平松正啓(Y’s C)

映画『不死身ラヴァーズ』は5月10日(金)より全国ロードショー
(c)2024『不死身ラヴァーズ』製作委員会
(c)高木ユーナ/講談社

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