『祇園の惨状』 ごみだらけの「京都」がネットで話題 政令市最多のごみ箱300基でも追いつかず 観光税・宿泊税で対応すべきか

京都でごみ問題が深刻になっている。コロナ禍の後、観光客の数が再び多くなり、観光地ならではの悩みが膨らんできた。花見シーズンからゴールデンウィークまで、京都のごみ問題の実態を追った。

■SNSで「祇園の惨状」 対応しても「いたちごっこ」

4月、「祇園の惨状」というタイトルと共に投稿された動画。京都・四条通の路上に散らばる空き缶やポリ袋、食べ物が入っていた空き容器、さらに世界的な観光名所・八坂神社の目の前に散らばるごみが映っていた。

八坂神社参道祇園商店街振興組合 北村典生理事長:ここすごいんですよ。朝になったら。それにカラスが来るから、もうむっちゃくちゃになるんです。足の踏み場もないぐらい。

この動画が投稿されたのは、4月6日の朝。ちょうど京都の桜が満開を迎えたころで、花見客がピークの時期だった。

コロナの影響もなくなり観光客の数も元に戻りつつある中で、今、再び顕在化してきた古都・京都のごみ問題。 祇園に店を構える人たちも頭を悩ませている。

よーじや祇園本店 高橋久実店長:これは4月7日、日曜日の(店舗前の)写真です。飲み物と屋台で食べた串ですね。伝統ある地域ですので、ごみにフィーチャーされて、というのは残念。

京都市内には、行政が観光ごみなどの対策として、合わせて300基ほどのごみ箱を設置していて、これは政令指定都市では最も多い。今回話題になっている四条通り周辺、八坂神社の参道のエリアにも、7カ所のごみ箱があるが、それでも観光シーズンの夕方から朝方にかけて、ごみがあふれるという。

各店舗が掃除をするなどの対応をしているものの、「いたちごっこ」のような状態になっているのが現状だ。

よーじや祇園本店 高橋久実店長:(観光客に)来ないでということはできないですし。来ていただいて、私たちも売り上げをいただいているので。でも市民努力では、もう無理な段階まで、来ているのではないかなと思います。

■ごみの回収 回数を1日2回から3回に変更 効果は?

観光シーズンにごみが増えることを想定し、京都市はごみの回収頻度を、これまでの1日2回から3回に増やした。その効果は?

記者リポート(4月26日):祇園周辺はゴールデンウィーク直前ということもあり、多くの観光客でにぎわっています。
(午後3時すぎ)暑さの影響もあるのでしょうか、飲み物を捨てていく方が多い印象です。
(午後4時すぎ)午後4時15分です。京都市がごみの回収に来ました。

観光客が多い日だったが、翌朝までごみがあふれることはなかった。

1日3回の回収で祇園のごみがあふれることはなくなったと、思われたが…

記者リポート(5月3日、午後6時すぎ):ごみ箱に入りきらないからでしょうか、地面にごみが置かれています。

ゴールデンウィークに入り観光客が増えた影響なのか、ごみが路上に捨てられていた。日本最古の歴史を持つ劇場、歌舞伎で有名な南座の前のごみ箱でも…

記者リポート:今、男性がごみ箱の方に向かいました、中に捨てられなかったのでしょうか、ごみ箱の上にごみを置きました。

南座から100メートルほど離れた繁華街・木屋町周辺はさらにひどい状況だった。

記者リポート:観光客とみられる人が、川の近くに座ってお酒を飲んでいます。近くにはごみが散乱しています。タバコの火を地面で消した後、そのまま捨てています。

近くの店舗がごみを出す回収場所にも次々と、ごみを捨てに来る人の姿がありました。

京都市が回収の回数を増やしてもなお、ごみがあふれていた。回収の回数だけではなく、ごみ箱の数も増やせばいいのではと思い、市の担当者に聞いてた。

京都市・まち美化推進課 松岡竜太郎さん:元々、京都市の方としては、700基ぐらい設置していたというところもあります。ただ、家庭ごみであるとか、事業ごみが投棄されるであるとか、色々経過した上で、300基ぐらいになってるんですけど。ゴミ箱を増やしても、一概にごみの散乱が無くなるというわけではない。

という見解だった。

■嵐山で活躍「スマートごみ箱」 費用は1カ所200万円以上

この状況をただ見過ごすしかないのか。京都のもう一つの人気観光地・嵐山には、「スマートごみ箱」という特別なごみ箱が設置され、効果を発揮している。ごみがたまると5分の1に圧縮する仕組みになっていて、インターネットにつながっていることから、ごみがどれぐらいたまっているのかが、リアルタイムに把握できる。 嵐山ではスマートごみ箱設置以降、その周辺はごみの散乱が減ったということだ。

実は祇園の商店街にも、スマートごみ箱は1カ所設置されていて、取材した日にごみがあふれることはなかった。

-Q.スマートごみ箱を広げていく話は?
京都市・まち美化推進課 松岡竜太郎さん:廃品処理業者さんから寄付を受けておりまして、10年間で24基寄付をいただく予定。今年度についても、観光地でごみの多い所に、効果的に設置をしていきたい。

価格が1カ所200万円以上することから、市としても積極的に通常のごみ箱と置き換えることは難しいようだ。

観光客とともに戻ってきたごみ問題。コストをかけずに、ごみをどう減らすのか京都の苦悩は続く。

■工夫してごみ対策を 海外では罰金も

あふれるごみの救世主になるかもしれない「スマートごみ箱」は、1カ所200万円以上の費用がかかるということで、京都市は現在、寄付による設置のみで、お金をかけてまで設置する考えはないという。

市の方針について、「newsランナー」コメンテーターの大阪大学大学院・安田洋祐教授は次のように話した。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:200万円と聞くと、すごい金額な気もしますけれども、どれだけインバウンドで、京都が潤っているかと考えれば、微々たるもののような気がします。適切に観光税であったり、宿泊税など、まだまだ値上げできる余地はあると思うので、お金を回収して、きちんと行政の方である程度処理していくのが、本筋の解決策じゃないかと思います。

広島県廿日市市の宮島では実際に税を徴収している。宮島では訪問税を導入していて、フェリーの運賃に上乗せし、1回の訪問につき1人100円を徴収している。(島民や修学旅行生など除く)

今年度は約3億5000万円の歳入が見込まれるということで、ごみ対策やトイレ、公園の維持管理費などに活用されるということだ。こういったやり方で税を徴収している所もある。

大阪大学大学院 安田洋祐教授世界的に:世界的にベネチアが入島税で、島に入る税を取ることで有名ですけれども、ただこれは誰がそのエリアに入ったかと、捕捉できる宮島みたいなケースだとやりやすい一方で、難しい自治体・観光地も多いです。そういった場合には、例えば宿泊税という形で、宿泊者が多い観光地の場合は、泊まる人に負担してもらうと。あるいは、これはどれぐらい実現可能性が高いか分からないですけど、食べ歩きが多いので、テイクアウトでゴミになりそうなものを出しているお店からは、少し徴収する仕組みとか。まあそういった人たちが、例えばスマートごみ箱を設置するなどの行動を起こしていくと、必ずしも市だけが負担しなくても、地域全体で取り組んでいける余地があるかなと思います。

関西テレビ 神崎博報道デスク:海外の事例では、私が駐在していたマレーシアの隣のシンガポールで、ごみのポイ捨てに高額の罰金をかけるということをやっていました。例えば1回目の罰金が日本円にして22万円、2回目が44万円で、3回目以降は110万円ぐらいになるという形で、ごみを捨てたら高い罰金ということでした。取材でシンガポールに行った時は、ごみと落とさないように、必ずごみはカバンの奥の方に入れて、なるべく落ちないようにと対策をしていました。

観光地のごみ問題、各地の特徴に合わせた解決方法が求められていると言えそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月7日放送)

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