イギリスの与党議員が最大野党にくら替え かつて移民政策を批判した労働党へ

イギリス与党・保守党の下院議員が8日、最大野党・労働党に移籍すると発表した。保守党からは4月末にも1人、下院議員が労働党にくら替えしている。

下院で毎週水曜に行われる「首相への質問」の直前、ナタリー・エルフィック下院議員は、保守党が「無能と分断の代名詞になってしまった」と移籍を発表した。

下院では首相質問の冒頭、エルフィック議員が保守党側の議席を離れて、労働党側の議席に歩いて移動するという異例の光景が繰り広げられた。

イングランド南東部ドーヴァー選出のエルフィック氏は、リシ・スーナク首相が主要公約を手放し、「約束をたがえた」と批判した。

エルフィック氏の選挙区ドーヴァーは次の選挙区で、「ドーヴァーおよびディール」選挙区に区割りが変更される。労働党はすでに擁立している候補を維持し、エルフィック氏は同選挙区からは出馬しない。2019年12月の総選挙でエルフィック氏は、ドーヴァー選挙区で1万2278票差で勝利した。

本人も労働党も、労働党が政権をとったあかつきには貴族院議員になれるようにすることを移籍の交換条件にしたのではないと主張。住宅政策について無報酬の党内顧問の役職を得る予定だと説明した。

エルフィック氏は昨年4月、労働党には「独自の違法移民対策がない」と新聞コラムで批判。保守党政権が進める、違法移民のルワンダ移送計画を「世界最先端」だとたたえていた。

労働党に移籍するにあたり、同党の移民政策について考えが変わったのか記者団に尋ねられると、議員はスーナク首相は密航ボートを阻止していないと批判。労働党こそこの問題に取り組むと、自信を持つべきだと強調した。

保守党のヒュー・メリマン交通閣外相は、エルフィック氏のくら替えに「まったく仰天」したと話し、「日和見」だと批判した。他の保守党議員は、エルフィック氏が保守党内でも右派に位置するだけに、労働党に移るとはどういうことなのか驚いていると話した。

BBCのクリス・メイソン政治編集長が報告する。

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