クレディ・スイス最終幕 ケルナーCEOが退社へ

ウルリッヒ・ケルナー最高経営責任者(CEO)の退任とクレディ・スイスの持ち株会社の解散は、同行の168年の歴史の最終章となる (KEYSTONE / MICHAEL BUHOLZER)

クレディ・スイス(CS)の最後の最高経営責任者(CEO)だったウルリッヒ・ケルナー氏が、今後数週間以内に統合先のUBSを退行することが明らかになった。

関係者によると、UBS幹部らは5月末までに同行とCS法人の合併を完了させるべく取り組んでいる。スイス政府主導の下でスイス2大金融機関の「おめでた婚」が成立してからわずか1年あまりのことだ。

ケルナー氏は、CSの経営が傾いていた2022年にCEOに任命され、UBSによる救済買収後もその職に留まった。関係者によると、早期に職を離れようと考えていたが、法的合併が完了するまで留まるよう説得された。

両行の持ち株会社の統合に伴い、CSの経営陣はCEO職も含めてお払い箱になった。

ケルナー氏の退任とCS持株会社の消滅は、スイスの工業化や鉄道の発達を資金面で支えた同行の168年の歴史の最終章となる。

UBSのセルジオ・エルモッティCEOが2月に表明した統合計画に基づき、スイスの両事業体は今年下半期に合併する。CS顧客のUBSへの引き継ぎは来年まで続く。

最終段階であるITシステムの統合は、2026年に実施される見込み。

関係者によると、UBSは法的合併の完了後に人員削減を加速する。統合完了までに総従業員数を8万5000人にすることを目指す。

昨年の2行の従業員数の合計が12万人だったことを踏まえると、総削減数は3万5000人になる。UBS幹部はこの全てが解雇ではなく、自然減も含まれるとしている。

昨年、解雇について訊かれたエルモッティ氏は「従業員への影響を最小限に抑えるよう尽力している。従業員を公平に扱い、経済的支援や再就職支援、再訓練の機会を提供している」と答えた。

驚きのキャリア

UBSはケルナー氏の後任や人員削減計画に関するコメントを拒否した。ケルナー氏もコメントを控えた。

ケルナー氏は国際監査法人プライス・ウォーターハウス、マッキンゼーで働いた後、1998年にCSに入行。昇進の道を歩んでいった。

2009年にUBSに転身した。2年後には23億ドル(当時レートで約1900億円)の損失を出した不正取引で引責辞任したオズワルド・グリューベル氏の後任として、UBSの臨時CEOへと上りつめた。

2021年にエルモッティ氏がUBSのCEOを引き継ぎ、ケルナー氏はグリーンシル・キャピタル関連投資で大損失を出したCSの資産管理部門のトップに返り咲いた。その1年後には、トマス・ゴットシュタイン氏の後任としてCSのCEOに就いた。CSがUBSに買収される9カ月前のことだった。

ケルナー氏はUBSに残ったCS幹部の1人。最高財務責任者(CFO)だったディクシット・ジョシ氏、ウェルスマネジメント(資産管理)トップのフランチェスコ・デ・フェラーリ氏、最高執行責任者(COO)のフランチェスカ・マクドナー氏がこの1年で退任している。

UBSは7日に1~3月期決算を発表した。

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英語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:上原亜紀子

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