「産休クッキー」に賛否、メーカーには過去10年間クレームなく戸惑いも…「はけ口になった部分あったのでは」

話題になった「産休クッキー」(「スイーツ工房フォチェッタ」ECサイトより)

赤ちゃんのイラストに「産休をいただきます ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします」というメッセージが添えられたクッキー。この“産休クッキー”がSNSで物議を醸している。当初は「妊娠出産はデリケートな話題だから贈り物のデザインには避けるべき」など懐疑的な声が目立った一方、好意的に受け止める意見も増え、賛否両論に。クッキーのメーカーに開発の経緯や受け止めを聞いた。

4月中旬、これから産休に入る予定という女性が、職場の同僚に配る品として産休クッキーの写真をXに投稿した。すると「妊娠出産はデリケートな話題」「子どもを授かれなかったり不妊治療したりしている人がいるかも」「祝ってください、の主張が強すぎて違和感がある」といった声が相次いだのだ。

一方で「子どもを授かれない人の気持ちを察しろなんて言い出したらキリがない」「普通に可愛いしおめでとうって思える」「この程度で炎上してしまう社会は息苦しすぎる」といった肯定的なコメントも多く寄せられ、一時はトレンドワードにも入った。

クッキーは、株式会社ドリームエクスチェンジ(本社・東京)の通販事業部「focetta(フォチェッタ)」の製品。さまざまな場面の贈り物に使えるプリントクッキーを1000種類以上取り揃えており、このクッキーはその一つだという。2015年ごろ、利用客からの要望で製品化した。

10年間クレームなし

同社代表取締役会長の瀧口信幸さんは「そもそも産休も育休も法律で保障されている権利であり、頭を下げてお願いするものではないと考えます」としつつ、「負担が増す同僚に対して感謝の気持ちを伝えたいという方がいる限りは、弊社がその気持ちをお手伝いする余地はあるのではないかと思います」と、このクッキーに込めた思いを語る。

これまでプレゼントとして利用した人からは「クッキーがきっかけでコミュニケーションがとれ、子育てのサポートもしてもらえた」など好評だったという。瀧口さんは「コミュニケーションツールとしてはかなり有用なんじゃないかなと思います」とする。

製品化してからの約10年間でクレームの類は一切なかったという。「渡す相手や距離感に合わせて使っていただくものですし、少なくともこれまでクレームがなかった以上、皆さんそうしたTPOをわきまえて利用されているということだと思います」。SNSではクッキーのデザインを見て「製品開発において女性の視点がないのでは」といった批判もあったが、担当部署の社員30人のうち27人は女性。「批判するためにそこまで捻じ曲げて言われてしまうのか、というのが正直な思いです」とした。

「はけ口になった部分も」

炎上を受け、同社にも数件クレームが寄せられたという。「身内が交通事故に遭ったからといって、自動車メーカーに文句を言う人はごく一部では」と違和感を感じた部分もあったという瀧口さん。それでも、実名で寄せられているクレームにはきちんと向き合い、対応していきたいと話す。

「交通事故に遭った方やご遺族にはケアする団体はあると思いますが、体の調子とかいろんな原因で子どもに恵まれなかった方をケアする仕組みが日本にないっていうのもあるんじゃないかな、と。そうした(不満の)はけ口になったような部分もあったと思います。ご意見はしっかりと受け止めたいと思います」としている。

(まいどなニュース・小森 有喜)

© まいどなニュース