オレンジジュースは高級品に?海外産地で不作&円安の直撃国産みかんにシフトするも…

世界的なオレンジ不足でオレンジジュースの値上げや販売休止が相次いでいます。そんな中、九州初となる生搾りオレンジジュースの自動販売機が福岡市内の商業施設に設置されました。店頭では今後さらに品薄状態になる見込みで、オレンジジュースが高級品になってしまうかもしれません。

不動の人気オレンジジュース

RKB三浦良介「フレッシュな生搾りのオレンジジュースが楽しめる自動販売機が福岡市天神に登場しました」

4月末にミーナ天神の地下1階に設置されたのは、生搾りオレンジジュースの自動販売機「FeedMEOrange」。果汁100%のオレンジジュースができるまでの行程をガラス越しに見ながら楽しめる、エンターテインメント性を備えた自動販売機で、九州初進出です。

子供「おいしい」
父親「絞りたてでおいしそうな感じ。珍しいなと思いますね」

1杯あたり3~4個のオレンジを使用し、価格は500円です。季節によって産地・品種を変えていて、一年を通して様々な味わいのオレンジジュースが楽しめますが、オレンジの市場では今、異変が起きています。

オレンジジュースは価格上昇中

ブラジルやアメリカなどオレンジの産地で、ハリケーンなどの天候不順による被害や柑橘類の木の病気がまん延している影響で、オレンジ果汁は世界的に不足しています。福岡市内のスーパーを訪ねてみると…。

RKB三浦良介「オレンジ不足の影響で、オレンジジュースの値段が上がっています。同じメーカーで比べてみても、アップルジュースが179円なのに対し、オレンジジュースは239円と60円高くなっています」

また、アサヒ飲料のウェルチは、オレンジジュースが120円高くなっていました。

買い物客「ちょっと買う回数が減るかもしれない」
子供「オレンジジュースが飲めなくなるのは嫌です」

Q.オレンジジュース好き? 子供「うん、好き」
母親「子供たちが好きなので、あんまり上がると困る」

100%果汁のジュースは販売休止も

エムズ美和台店久松浩一店長「在庫は少なくなってきている状況です。森永乳業のサンキストのオレンジジュースは今後、販売がなくなるという話を聞いています。100%以外のオレンジジュースはまだ販売が可能なので、そちらの方で対応していくしかない」

国内の飲料メーカーでは、オレンジジュースの値上げや販売休止が相次いでいます。雪印メグミルクは2023年4月から「Doleオレンジ100%」の一部商品を販売休止。森永乳業は原料の果汁がなくなる6月中旬ごろに「サンキスト100%オレンジジュース」を販売休止にします。また、モスバーガーは5月22日からSサイズのオレンジジュースを250円から290円に値上げします。幅広い年代に親しまれるオレンジジュース。品薄の状態はしばらく続く見込みです。

日本果汁協会によりますと、オレンジ果汁の輸入先はブラジルが58.9%と大半を占めています。そのブラジルでオレンジの不作が続いている影響で、オレンジ果汁の輸入量が減っています。国内では6万キロリットルのオレンジ果汁が必要とされている中、2021年は3万3000キロリットルと約半分にまで減少しました。2022年は4万4000キロリットル、2023年は5万3000キロリットルまで戻ってきていますが、まだ足りていません。

円安で競争力が弱い日本

そこに追い打ちをかけるのが円安です。財務省の貿易統計によりますと、オレンジ果汁の輸入価格は2020年に1リットルあたり261円でしたが、2023年は482円まで上昇。さらに円安の影響で価格は高騰し、2024年3月には1リットルあたり620円になりました。円安ドル高で日本は競争力が弱いため、アメリカなど他の国に円安で買い負けしていると専門家は指摘しています。

日本果汁協会川村和彦専務理事「オレンジ果汁は濃縮した段階で日本に入ってくるので、かなり日持ちします。普通は為替が安い時に果汁を買って使い続けるのですが、為替レートが非常に円安にぶれていて、ものすごい高い価格で頑張って買っている」
「オレンジは、アメリカでもヨーロッパの国々でもたくさん輸入されていて、競争相手はずいぶんいる。この円安では、なかなか手が出ないかもしれませんね」
「オレンジ果汁不足を解消するには、ブラジルの豊作と、一定程度円高になること。ブラジル以外の販路の多様化とか、国産のみかんをいろいろ活用するとか考えていく必要があると思います」

国産みかんに注目集まるが課題も

世界的なオレンジ不足を受け、需要が増えているのが国産のみかんです。オレンジジュースに変わる新商品も販売されています。協同乳業は4月から国産果汁だけを使用したみかんジュースの販売を14年ぶりにスタート。セブンイレブンは4月からオレンジと国産みかんをブレンドした新商品を販売しています。

世界的なオレンジ不足で注目される国産みかん。みかん王国・愛媛の飲料メーカーには問い合わせが殺到し、果汁が足りない状況になっていました。その余波は福岡にも…。

能古島(福岡市西区)では今、甘夏が収穫の最盛期を迎えています。能古島の甘夏は1玉約200円で販売されますが、ジュースに加工される規格外品の買い取り価格は50円です。例年、甘夏果汁の出荷量は7000リットル程度ですが、2024年は約3倍の2万リットルの出荷を目指しています。

JA福岡市のこのしま加工部会明石栄美子部会長「今、チャンスかな。チューハイ用とかも話が来て、また2500キロリットルくらい追加になっているので、今ひたすら絞っています」

注文が増え、島に新たな雇用を生むという期待感もありますが、人手不足や生産量の減少といった課題にも直面しています。

日本果汁協会川村和彦専務理事「日本の果物は生で売るためのものが中心になっている。加工用はやっぱり価格を安く抑えないといけないので、一長一短でいかないところがある」

国産みかんの需要が高まる中で、課題も見えて来ました。農家の高齢化や人手不足で生産量を増やす余力がないこと。高級なみかんを作ることにシフトする生産者が多く、ジュースなどに加工するみかんが足りていません。

これまで輸入に頼ってきた日本。急激な円安が様々な影響を及ぼしています。この状況が続けば、オレンジジュースが高級品になってしまうかもしれません。

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