工事完了は申請数に対して1%未満…被災した住宅を行政が撤去する「公費解体」が進まぬ理由に“訴訟リスク”があった

住宅や納屋などを国や自治体が費用を負担して解体・撤去する「公費解体」。石川県七尾市でも作業が始ままったが、課題は山積みのようだ。

自治体職員の人手不足

七尾市で始まった公費解体。罹災証明で半壊以上と判断された場合に国や自治体が費用を負担して解体・撤去する制度だ。七尾市では公費解体について1479棟の申請を受け付けているが、なかなか進んでいない。解体業者への依頼や住民との日程調整などを行う職員の人手が足りていないのが主な理由だ。七尾市環境課の和泉智之主幹は「業者さんはたくさん人も投入できるという話は聞いているので、あとは役所の方から発注をたくさんできるように進めていくことが、このあと加速させていくために必要なことかと考えています」と話した。

公費解体を終えたのは申請数の1%未満

能登地方の3市3町でこれまでに受け付けた公費解体の申請は合わせて8438件。しかし、実際に解体作業が完了したのはわずか55件と、申請数に対して1%未満だ。能登半島地震の発生から4カ月余り経ったが、解体作業は遅々として進まない。

相続人全員の同意が必要

自治体職員の人手不足に加え、公費解体が進まない理由がもうひとつある。それは申請をする際に「相続人全員の同意が必要」という点だ。奥能登では、所有者が変更されず何代も前に亡くなった人が所有者になっているケースがある。「相続人が何十人もいる」「外国にいる」といったケースが実際にあり、全員の同意を取ることは事実上困難なのだ。

こうした中輪島市は条件を緩和し、もし親族間で問題が起きても申請者が責任を持って対応するという“宣誓書”を提出すれば、申請を受け付けることにした。しかし、その他の自治体ではこのような措置はとっていない。「公費解体に同意していない」と相続人が自治体を訴える恐れがあるからだ。これに対し、馳知事は次のような考えを示した。「誓約書方式を首長がいいですよと
言ったときに、訴訟リスクを自治体の首長に負わせないような仕組みを、できれば特措法で政府が考えてほしい」。馳知事は国に対策を求め、公費解体を後押ししたい考えだ。

(石川テレビ)

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