いぎなり東北産[ライブレポート]やさしさに満たされて、北東北ツアー終幕!

いぎなり東北産[ライブレポート]やさしさに満たされて、北東北ツアー終幕!

いぎなり東北産が、5月6日(月・祝)にトーサイクラシックホール(岩手県民会館)にて北東北ツアー<北東北ゴールデンめぐり>ファイナル公演を開催。奇しくもこの日は岩手県出身・桜ひなのの20歳の誕生日当日。本記事では、彼女へのバースデーサプライズも飛び出した2部公演のオフィシャルレポートをお届けする。

取材&撮影&文:Yosuke TSUJI

今回の北東北ツアーは、東北という彼女たちのホームでありながら、最近なかなか足を運ぶ機会がなかった青森、秋田、岩手の3都市で実施された。中でもファイナルとなった岩手公演は、ゴールデンウィーク最終日、そしてメンバーの桜ひなのの誕生日というメモリアルも重なったこともあって、開演前から観客のボルテージはすでに最高潮といった様子を見せていた。

開演時間となり、場内BGMに合わせて飛んで跳ねてのコールを巻き起こす観客側。そんな盛り上がりに張り合うかのように、暗転した会場にはけたたましい陽気なラテンのリズムが鳴り響く。“全力で楽しもうね!”とメンバーがステージへと駆け込み、「テキーナ」からライブはスタート。きらびやかなライトに照らされたステージに向けてペンライトを掲げて踊るオーディエンスは、吉瀬真珠の“大好き!”のキラーフレーズに射抜かれて大興奮の声を上げる。さらにあざと可愛いが詰まった「沼れ!マイラバー」で、今夜もまた彼女たちの一挙一動に視線釘付け。ホールの体感温度も季節先取りの熱中症になりそうなほどに上昇していた。

最初のMCで、桜ひなのは“今日は私の誕生日、そして私の地元ということで、岩手の力を借りたいと思います”と、挨拶。次の瞬間、ステージに手をついて、気合いの声とともに、地面から大地のパワーのような何かを取り込む(?)。そして、おもむろに“ムキッ”とつぶやきながら、客席に向かってボディビルダーのような仕草で上腕二頭筋をアピール。冷静に考えるとまったくもってよくわからないものの、観客からはそんな桜に大歓声が送られていた。

ライブ前半は、4月の春ツアー最終日にリリースされた彼女たちの3枚目のアルバム『東北産万博』収録曲が立て続けに披露された。それぞれメンバーカラーのTシャツをアレンジした衣装で、ステージを縦横無尽に動き回る「大勝利宣言」に、現代社会をゾンビに見立てて反骨心を歌い上げた「ゾンビソサエティー」。さらにキュートと狂気が同居するベイビーベイビーおベイビーな「狂くるどっかーん♡」では照明演出で会場壁面にもくるくると光の輪が描写される。一方、「恋愛フィルター」では、いぎなり東北産メンバーがステージパフォーマンスで切ない恋心を表現する。そして伊達花彩と桜ひなのの2人がそれぞれボーカリストの顔で立ち向かう「轟」に、チーム東北産の体験談や感情が盛り込まれた「東京アレルギー」。

セットリストとして並べられると、アルバム『東北産万博』が、万博の各パビリオンのようにいぎなり東北産のさまざまな魅力をパッケージングした作品であることに改めて気づかされる。同時に、いぎなり東北産は、さまざまな角度からのアプローチが必要となる楽曲群を見事に表現し切る力量を持ち合わせているグループであることを思い知らされた。

中盤には、いぎなり東北産恒例の企画コーナーが用意された。観客を3つのグループに分けてのジェスチャーゲームでは、「領域展開をする大谷翔平」や「ぴょんぴょん舎に行く皆産(いぎなり東北産のファンの総称)」といった、岩手と関わりのある人や場所がお題として出され、オーディエンスは頭を捻りながらも必死にジェスチャーで正解をメンバーに伝えようとしていた。

そして今回のツアーの見どころの1つとなっていたのが「恋はじめ」。昔からこの曲がセットリストに組み込まれる際には、いぎなり東北産は何かしらのチャレンジを行なうのがお約束。昨年夏に山形で開催された8周年イベントでは、ステージに流しそうめんを設置して、そうめんを食べながらこの曲を歌っていたことを記憶している人もいるかもしれない。

今回の北東北ツアーを通じて彼女たちが挑戦することなったのは、けん玉。年末の歌番組で話題になることもあるけん玉チャレンジだが、今回はメンバー全員で16回連続成功を目指す。なお成功した暁には、特典としていぎなり東北産沖縄公演の開催決定がプレゼントされるという。

“ゆっくりでいいから落ち着いていこう。私たちならできる。私たちならできる。けん玉絶対成功させるぞ!”

リーダー・橘花怜を中心に、メンバー全員、ライブ前よりはるかに気合いの入った円陣をステージ上で組んで、絶対負けられない戦いに歩みを進める。「恋はじめ」のイントロが流れ出すと、1人ずつけん玉に向き合い、そして成功させていく。思えばツアー初日には全然ウマくいかなかった。しかし、そこから彼女たちはそれぞれ自主練に励み、沖縄にもあと一歩のところまで個々のけん玉スキルを引き上げてきた。

そんな練習の成果と本番での勝負強さを存分に発揮して、本公演では連続成功10回を突破。客席からも熱い視線が注がれ期待も一気に高まる。沖縄の青い海と白い砂浜もチラチラと脳裏をよぎり始めてきた。まもなく運命の16回。「恋はじめ」もそろそろアウトロに差し掛かるという、これはもう誰の目から見ても完全に物語のクライマックス。

こんなタイミングで、笑いの神はいぎなり東北産へと微笑む。

栄光に向けて葉月結菜が手にしたけん玉は、ふわりと弧を描いたものの、玉はけんの先にある大皿の縁にあたり、無情にもこぼれ落ちてしまう。痛恨の失敗。結果、“次の曲に行けないよ……”と、メンバー全員がステージに倒れ込んで曲が終わる。コントとしては100点満点の見事なオチは、観客の笑いと交通費や宿泊費の心配が不要となった大人たちの安堵を誘っていた。

後半戦は、律月ひかる、葉月結菜、安杜羽加、北美梨寧、吉瀬真珠の年上組ユニット・とうほくちゃんによる「未成年」が、20歳を迎えた桜ひなのへのエールのように会場に響き渡る。さらにメンバー全員の気持ちを1つにして未来への決意を歌い上げるバラード「I decided」をしっかりと聴かせる。そして“みなさん盛り上がってくれますか! 行動で示してくれますか!”と桜ひなのが煽ってのラストスパートは、ライブで盛り上がる東北産楽曲がこれでもかと並ぶ。メンバー側が全力で歌えば、オーディエンスも力の限りのコールで応える「シャチョサン」に、会場全体がパーリーピーポーとなる「うぢらとおめだづ」では、“夏には沖縄行こう♪”や“コスプレ沖縄集合♪”“沖縄行きたい♪”などなど、沖縄を諦め切れない気持ちをこれでもかとアドリブで歌詞に盛り込んで場内を沸かせる。そして、いぎなり東北産の伝家の宝刀「天下一品 〜みちのく革命〜 2020ver.」で、ステージ側も客席側も荒ぶる感情を全力でぶつけ合い、この日のライブを全身全霊で堪能するのだった。

北東北ツアーの最後を飾ったのは「feeling」。曲が始まると、夜の帳が下りていく途中の街並みのように、客席側の至るところでオレンジの光が1つ、また1つと灯っていく。それは桜ひなののメンバーカラーのペンライトを一斉に灯すというファン主導のバースデーサプライズ。右へ左へとたなびくように揺れる温かな光が広がる光景を目にして、桜はたまらず声を震わせる。そんな彼女の隣でそっと肩を並べるメンバーたちと、客席からそんなステージの様子を笑顔で眺めるいくつもの眼差し。

いぎなり東北産の<北東北ゴールデンめぐり>は、いろんな人のやさしさに満たされて、無事にその幕を下ろしたのだった。

北東北で皆産から熱いエールを受けたいぎなり東北産は、ここからいよいよ年末のパシフィコ横浜リベンジ公演に向けて動き出す。初夏から夏にかけては、<TOKYO IDOL FESTIVAL 2024 supported by にしたんクリニック>を筆頭に、<クロフェス2024~5周年だよ!全員集合だしん!~ ><OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL Special Live 「POPPIN’BASE in KYOTO 2024」>といったフェスに出演が決定しているほか、6月29日にはつばきファクトリーを迎えての主催ツーマンライブ<A LIVE SENDAI Vol.2>を実施。そして7月26日(金)には<東京ワンマンライブ 〜年末への前哨戦〜>と銘打った公演をかつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールにて開催する。

桜ひなの:

今日はみなさん来てくれてありがとうございました! 私ごとですが、私も20歳にならせていただきまして。お母さんやお父さん、お兄ちゃん、おじいちゃんおばあちゃん、甥っ子。たくさんの方々の力を借りて、私はここまですくすく育ちました。でも私の人生の半分は本当にいぎなり東北産で。20年間の半分くらいを東北産とともに歩んできました。その人の人となりって、一緒に関わってきた人によって変わってくると思うんですよ。だから、私の人格は、ほぼ皆産とかメンバーとか、家族とか。そういう方々で作られてきて、だからこんなにいい子に育った……だって、この中に極悪人がいたら、私も極悪人になってるかもしれないし。だけど、こんなに素直で、こんなに可愛くて。可愛い子に囲まれたし、性格いい人に囲まれたから、私もこうやって素直にすくすくといい子に育ったと思っています。本当にありがとう。信頼できる人間がこんなにたくさんいるのってすごいと思うし。こうやって<北東北ゴールデンめぐり>ツアーがあって、みなさんに会う機会ができて、誕生日も祝ってもらえて、お仕事なのに全部幸せで、全部みんなが……(涙で声が詰まる)。言葉で伝えるのって簡単なんですよ。でも、皆産はこうやって行動で示してくれて。飛行機も宿泊代も最近高いじゃん? なのに全通とかしてくれたりする人もいて。私たちのことを飽きずに好きでい続けてくれる人とかいてくれるし。みんな素敵な人だから、自信持ってほしいです(号泣)。いつも“もんちゃんが頑張ってると僕も頑張れるよ”って言われるんですけど、それはこっちの台詞で。みんなが頑張ってお金稼いできたり、仕事終わりにスーツで駆けつけてくれる人もいるじゃん? そういう人を見て、私も頑張らなきゃって思っています。すごい本当にありがとうございます!

いぎなり東北産<北東北ゴールデンめぐり>

いぎなり東北産

<東京ワンマンライブ〜年末への前哨戦〜>

日程:2024年7月26日(金)

会場:かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール

<パシフィコ横浜 国立大ホール ワンマンライブ>

日程:2024年12月29日(金)

<東京ワンマンライブ〜年末への前哨戦〜>

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