50ccバイク廃止の時代にあえて「HONDA NSR50」をキット化するホビージャパンを応援したい【#静岡ホビーショー】

by 中村聖司

【1/12 モーターサイクルインジェクションプラキット HONDA NSR50】

2025年発売予定

価格:未定

「第62回 静岡ホビーショー」ホビージャパンブースで、話題を独占していたといっても過言ではないのが「HONDA NSR50」だ。

筆者がブースを取材している間にも、「期待しています!」、「ようやくですか」、「待ってました!」と大歓迎する声掛けが次から次に耳に飛び込んでくる。その都度、当時の想いが語られ、いかに待ち望んでいたかが力説される。これは関係者しかいない業者日だからという特殊性もあるのだろうが、NSR50というマニアックな原付バイクにこれほどの期待が掛けられていることに驚かされた。

来年3月にはすべての50ccバイクが生産終了し、その存在すら消えてなくなろうとしているタイミングで、NSR50のスケールキットでの復活。実際、筆者もホビージャパンブースでNSR50のポップに遭遇するまで、その存在をすっかり忘れていたが、確かにこのバイクについて語りたいことはいくらでもある。

今となっては、原付にフルカウルを装備した“原付スポーツ”というカテゴリが実在したことが信じられない思いだが、このバイクの存在は強烈に脳に焼き付いている。ホンダの2ストロードレーサーの花形としての「NSR」。その代表格であるNSR250Rをそのまま50ccに落とし込んだのがNSR50だ。

1987年に登場した初期モデル。写真はホンダ プレスリリースより
参考までにこちらがNSR250R。写真はホンダ プレスリリースより

NSR50が発売されたのは1987年5月。当時は凄まじいバイクブームで、感覚的には、16歳になれば誰もが自動二輪の免許を取得し、バイクを乗り回していたような気がする。そうした中で、NSR50は、原付免許を取得したライダーが最初に憧れるバイクだった。

NSR250Rは高くて手が出せない(そもそも免許がないから乗りたくても乗れない)が、NSR50は原付免許で乗れるだけでなく、20万円台という10代の若者がバイトで買えるギリギリの価格設定だった。優美かつセクシーなフルカウル、ディオやジョグといった原付スクーター勢を突き放す圧倒的な加速性能、あえて膝をすりながら走る美しいライディングフォーム、すべてが憧れの存在だった。つまり、筆者は乗れなかった側だが、その強い憧れは今でも記憶として心に刻まれている。

筆者は1993年発売モデルのイメージが強い。写真はホンダ プレスリリースより

というように、バイクに縁のあった中高年についつい語らせてしまう魅力がNSR50にはある。今年の静岡ホビーショーでも、スケールモデル老舗のアオシマやハセガワは、ホンダ NSR250Rをはじめ、ヤマハ YZR500、スズキ RGVといった名機のキットを新製品として出展していたが、そうした中で、あえて50ccで攻めるホビージャパンは極めてユニークな存在と言える。ぜひ応援したいところだ。

アオシマは完成品バイクシリーズが主力。ホンダのモンキーがイチオシだ
NSR250R SP ‘88’ セイシェルナイトブルー/ホワイトを2024年9月発売予定
ハセガワは1/12スケールのプラモデル
ホンダ VT250Fのリミテッドエディションを追加

というわけで、ようやく本題の「HJM 1/12 モーターサイクル インジェクションプラキット HONDA NSR50」である。これだけ散々語っておいてなんだが、本キットは「発売決定」でも「参考出展」でもなく、「企画検討中」の段階で、発売されるかどうかまだわからないという頼りないステータスだ。NSR50の使用許諾は問題ないものの、社内稟議が通るかまだわからないようだ。ただ、今回の反響を受けて製品化はほぼ間違いないと考えて良さそうで、セットで告知していたNS-1やPCXについても期待できそうだ。

新しい世代向けにもカバーしてくれるのはありがたい

「HONDA NSR50」は他社のバイクキットと同様1/12スケールで、接着剤不要、塗装不要、デカールのみで完成するキットを目指しており、価格もHJMではもっとも安い、税込3,000円以下を狙う。バリエーションは数種類を用意。デザインは基本的にオリジナルを踏襲するとしている。発売は2025年の予定で、企画自体はかなり進行しているという。実機の公開が楽しみだ。

© 株式会社インプレス