低迷するチームを再生、名指揮官の勝利への意識改革 家族を支えに、けがからの復活【バスケBリーグ】

Bリーグでは優勝を懸けたチャンピオンシップが10日から開幕。愛知県を拠点とする4チーム中3チームが進出を決めています。低迷するチームを再生させたヘッドコーチに、大けがからの復活を目指す選手、それぞれの思いに迫りました。

今シーズン、大躍進! 豊橋市などを本拠地とする三遠ネオフェニックス。 これまで常に下位に沈んでいたチームがなんと中地区初優勝を飾りました。 タイトルにほど遠かったチームをがらりと変えたのは、昨シーズンから指揮をとる愛工大名電出身、大野篤史ヘッドコーチ。 大野ヘッドコーチ 「僕がコーチをするうえで大事にしている、支えてくれている皆さんに喜んでもらうこと。それは一つ恩返しできたんじゃないかなと」 千葉ジェッツを日本一に導いた実績のある指揮官が、豊橋の地にやってきたのは今から2年前。 低迷していたチームを再生させるため就任しました。 まず取り組んだのは、負けることに慣れていた選手たちの意識改革。 勝利への執念を植え付けるため、常に伝え続けてきたことがありました。 大野ヘッドコーチ 「準備は努力。準備がゲームに対してどれほど大事なものなのか、それをほんとに理解する必要があることを口酸っぱく言ってきました」

大野イズムの浸透でチームは躍進

試合に向けていかにして準備をするのか、練習の質にとことんこだわるのが大野イズム。 就任2年目の今シーズン。 チームに浸透すると、クラブ新記録となる16連勝をマーク。 破竹の勢いで、初の地区優勝に導きました。 山内盛久選手 「大野ヘッドコーチになってからは、自分たちのバスケットをどれだけ追求できるか。コート上の事だけではなく、コート外でバスケに費やす時間が増えた」 そんな大野ヘッドコーチがもう1つ大切にするのが、地域に愛されるチーム作り。 自らも細やかな努力を惜しみません。 ファンとの距離を縮めるため、三河弁を勉強中。 大野ヘッドコーチ 「名古屋の高校(愛工大名電)出身なので、すごいだったら、『でら』とか『どら』とか『ど』って何?みたいな。ウケいいですかね?この人、なめていると思われていないですかね(笑)」 豊橋市内のコーヒー店は3年前に開店して以来、三遠を応援し続けています。 チームが勝つにつれ、お客さんとの会話も三遠の話題が増えていったと言います。 ブリッジビルドコーヒー大野尚巳さん 「大野ヘッドコーチが来てくれたおかげで、つらい時期を乗り越えて今年は地区優勝に導いてくれたので豊橋がすごく盛り上がっています」 不死鳥のごとく三遠をよみがえらせた大野ヘッドコーチ。 地域を愛し、地域に愛される指揮官がファンと共に日本の頂点を目指します。 大野ヘッドコーチ 「自分たちが1年間懸けて培ってきたものを全て出して皆さんと一緒に最後に笑って終われたら、それほど幸せなことは無いのでそのために頑張りたいと思います」

198cmの張本が闘志を燃やす

一方、6日のリーグ戦最終節に勝利し、逆転で西地区初優勝を果たしたのが名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。 11日から始まる大舞台に向け、闘志を燃やす選手がいます。 チーム在籍8年目、張本天傑(てんけつ)選手です。 身長198センチ、強靭なフィジカルを持ちゴール下では無類の強さ。 さらに、正確なシュート力を兼ね備え、明るい性格でチームを盛り上げるムードメーカーでもあります。 Q.誰かに喜んでもらうのが好き 張本選手 「サービス業に向いているんですよ。お世話好きなんですよ」 3年連続5度目のチャンピオンシップで、悲願のBリーグ初制覇を目指すダイヤモンドドルフィンズ。 張本選手はチームの優勝とともに、ある目標を持っています。 張本選手 「チャンピオンシップに向けてやることも最終的にはパリ五輪につながる」 大学生にして日本代表に選出され、2021年の東京オリンピックにも出場。 その後もワールドカップ予選の試合でチーム最多得点をマークするなど長年、日本のバスケットボール界を支えてきました。

右ひざじん帯を損傷

ところが、おととし12月。リーグ戦で右ひざじん帯を損傷する大けがを負ってしまいます。 張本選手 「疲れもあって、足が踏ん張れなくて膝が変な角度に行って、『ああもう終わったのかな』というのが率直な感想」 長きにわたるリハビリ生活。もどかしさもどんどん募っていきました。 Q.ワールドカップは観戦した 張本選手 「家で泣きました、久しぶりに。うらやましい気持ちもあったし、悔しい気持ちもあった。様々な思いがあっての号泣かもしれない」

支えた家族の存在

心がくじけそうになる中、支えとなっていたのが家族の存在でした。 張本選手 「子どもだったり奥さんだったり、いつもサポートをしてくれてるので、自分の身の回りのことを全部やってくれるので本当に感謝しています」 今年3月、1年ぶりの実戦復帰となる試合で張本選手の家族も観戦に訪れました。 妻の望未さん 「楽しみですけど心配や不安は少しあります」 家族が見守る中、迎えた第1クオーター残り2分。出場のチャンスが巡ってきました。 妻の望未さん 「緊張してるなと思いました。全く子どもの方を見ないので」 張本選手 「いつもだったら(家族の方を)見るんですけど、きょうはそんな余裕がなかったです」 8分間の出場で得点とはなりませんでしたが、完全復活へ向け、確かな1歩を踏み出しました。 妻の望未さん 「お疲れ様といいました」 張本選手 「『ありがとう』と。今まで長い間(妻に)お世話になってきたので(恩返しは)これからですね」

4月、ドルフィンズが3年連続のチャンピオンシップ進出を決めた試合。 張本選手は得意の3ポイントを決めるなどチームの勝利に貢献。代表復帰へのアピールは続きます。 張本選手 「自分たちのチームが優勝にふさわしいチームだと思っていますし、優勝に向かって全力を出し切りたい。結果がついてこればおのずと代表でも活躍できると思うので。この夏(パリ五輪)に向けてぶつけていきたいです」

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