「シェイがふさわしかった」MVP投票2位のギルジャス・アレキサンダーに、シャックがエール「チャンピオンシップを勝ち獲ってもらいたい」<DUNKSHOOT>

NBAは現地時間5月8日、2023-24シーズンのMVPにデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチが選ばれたことを発表した。

直近4シーズンで3度目の受賞となったヨキッチは、これで3回以上MVPを獲得した史上9人目の選手となった。現役ではレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ/4回)に次ぐ2位に浮上している。

さらにセルビア出身のビッグマンは、カナダ出身のスティーブ・ナッシュ(元フェニックス・サンズほか)、ギリシャ出身のヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)の2回を上回り、海外出身選手として歴代最多の受賞者となった。
初優勝を飾り、王者として迎えた今季。ナゲッツはローテーションの一角のブルース・ブラウン(現トロント・ラプターズ)、ジェフ・グリーン(現ヒューストン・ロケッツ)が退団し、ジャマール・マレーがケガで23試合を欠場するなか、ウエスタン・カンファレンス1位タイの57勝25敗(勝率69.5%)の好成績でレギュラーシーズンを終えた。

NBA参入後では球団記録に並ぶ戦績を残したチームで、79試合に出場したヨキッチは、いずれもチームトップの平均34.6分、26.4点、12.4リバウンド、9.0アシスト、1.37スティールにフィールドゴール(FG)成功率58.3%を記録。

リーグ全体でも平均得点は10位、リバウンドが4位、アシストは3位、FG成功率は10位にランクイン。さらに、68回のダブルダブルと25回のトリプルダブルは、ともにリーグ2位という見事な成績を残した。

「チームメイトがいなければ僕には何もできないよ。コーチ陣、選手のみんな、球団組織、メディカルスタッフ、ストレングスコーチや育成コーチたち。彼らがいなかったら、今の僕であることはない」

米放送局『TNT』のインタビューで、ヨキッチは周囲のサポートに感謝を述べた。昨季の優勝を含め、今回の受賞はナゲッツの組織の素晴らしさの証明でもある。ただ、この男を抜きにチームが第2シードを獲得することはあり得なかったのも事実だろう。 MVPの投票結果で、ヨキッチは79の1位票(10ポイント換算)を含む926ポイントを獲得。1位票15を含む640ポイントで2位に入ったシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)に大差をつけた。

もっとも、『TNT』でコメンテーターを務めるシャキール・オニール(元レイカーズほか)は、「おめでとう、ジョーカー(ヨキッチの愛称)。君はリーグベストのビッグマンだ」とヨキッチを称えつつ、MVPにはギルジャス・アレキサンダーが “ふさわしかった”と持論を展開している。

「どっちのチームが第1シードで、いい成績を残しているんだ? 俺はシェイがふさわしかったと感じている。俺も何度も2位になってきた。この結果が彼を傷つけることになるのはわかっている。彼にはこの結果をモチベーションにし、チャンピオンシップを勝ち獲ってもらいたい」

今季のウエストはレギュラーシーズン最終日まで首位争いが繰り広げられ、ギルジャス・アレキサンダー率いるサンダーが1位の57勝25敗(勝率69.5%)。ヨキッチ擁するナゲッツが同勝率ながらタイブレークの末に2位、ミネソタ・ティンバーウルブズが56勝26敗(勝率68.3%)で3位となった。
そのサンダーでギルジャス・アレキサンダーは75試合に出場し、リーグ3位の平均30.1点、5.5リバウンド、6.2アシスト、同2位の2.00スティールにFG成功率53.5%を記録。歴代最年少のロスター平均23.4歳の若いチームをトップシードへと導いた。

なお、シーズンで平均30.0点、5.0リバウンド、5.0アシスト、2.00スティール、FG成功率50%以上をマークした選手は、過去マイケル・ジョーダン(シカゴ・ブルズ時代に5回)と2015-16シーズンのステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、今季のギルジャス・アレキサンダーの3人のみ。そのうちMVPに選ばれなかったのは、89、90年のジョーダンに続く2人目となった。

これらの記録からも、今季のMVP投票は競り合うことも予想されたが、1位票はヨキッチ(79)がギルジャス・アレキサンダー(15)を圧倒する結果になったことで、シャックのように意外だと思った人も少なくないだろう。

現在開催中のカンファレンス・セミファイナルで、ナゲッツはウルブズ、サンダーはダラス・マーベリックスと対戦しており、もし両チームが勝ち上がれば、カンファレンス・ファイナルがMVPの投票結果トップ2の対戦となる。白熱のプレーオフから引き続き目が離せない。

文●秋山裕之(フリーライター)

© 日本スポーツ企画出版社