『四月になれば彼女は』と『青春18×2 君へと続く道』は日本映画の新しい流れを作るか?

ゴールデンウィーク最後の週末と重なった5月第1週の週末動員ランキングは、順位の入れ替わりこそあれトップ6の顔ぶれは不動。4週連続1位の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は週末3日間で動員113万人、興収16億2700万円。前週との興収比は120%と、ここにきてさらに加速がついている。祝日の5月6日を含む累計成績は動員845万3000人、興収120億9900万円。昨年のゴールデンウィーク終了時点の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』との興収比で117%。もっとも、この前作比17%増という数字は、昨年の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のような強力なライバル作品がなかったことも少なからず影響しているだろう。

初登場作品で最上位となる7位につけたのは、藤井道人監督、シュー・グァンハン、清原果耶の共演による『青春18×2 君へと続く道』。5月6日までの4日間の成績は動員12万5200人、興収1億7600万円。全編の半分以上が台湾でのロケという、決して製作費の少ない作品ではないだけに国内外での興収の目標値はそれなりに高く設定されている作品ではあるのだろうが、非コミック原作の恋愛映画としては十分に健闘している。

恋愛映画といえば、『変な家』や『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の大ヒットの陰に隠れて最高位は4位止まりだったものの、3月22日に公開された山田智和監督、佐藤健、長澤まさみ、森七菜の共演による『四月になれば彼女は』は5月6日までの46日間で興収11億3800万円と、既に興収10億円の大台を超えている。こちらも『青春18×2 君へと続く道』と同様、10代が主人公ではなく20代、もしくは30代の登場人物による回想形式の恋愛映画(偶然の一致だが、実は話の構造も似ている)。ティーンムービーではなく、2010年代までのティーンムービー・ブームで育ってきた世代を主要なターゲットにした日本映画の新しい流れとも言えるのではないか。

その背景には、10代の観客を中心に、ますますアニメーション作品に集客が偏るようになり、これまでのような10代をターゲットにした実写の恋愛映画が成り立ちにくくなっていることもあるかもしれない(最近では『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』のような成功例もあったが)。また、5月18日から『四月になれば彼女は』の中国全土での公開が始まることも示しているように、近年は海外、特にアジアのマーケットで日本の実写恋愛映画のマーケットが広がっていて、その際にはドメスティックなノリと日本の芸能界行政に支配されてきたティーンムービーよりも、ちゃんと手間と時間をかけて作られた大人向けの恋愛映画の方が成功の可能性が高いという点も指摘しておきたい。
(文=宇野維正)

© 株式会社blueprint