「本当の心からの発言か分からない」伊藤環境相が水俣病被害者団体へ直接謝罪も 深く刻まれた拭いがたい不信感

水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が団体側のマイクの音を絞って発言を制止した問題について、伊藤信太郎環境相は5月9日に国会で改めて謝罪した。
また、伊藤環境相は団体側との懇談の場を後日、改めて設けることを明らかにした。

「私の能力の限り最大限努力したい」

この問題は5月1日、水俣市で開かれた伊藤環境相と水俣病被害者団体との懇談の席で、環境省の職員が発言時間の3分を超えた団体側のマイクの音を絞って発言を制止したものだ。

5月9日の参議院環境委員会で改めて陳謝した伊藤環境相は、団体側からの要望を踏まえ、「改めて懇談の場を設けることを私の責任で決定した」と述べ、具体的な開催時期や方法については今後調整するとした。

伊藤環境相:今後、今回の深い反省の上にたって、皆様に寄り添って対話できるようにしっかり進めていきたい。

また、「水俣病を解決する意思があるか」との問いに伊藤環境相は、「私の能力の限りにおいて最大限努力したい」と答えた。

伊藤環境相が被害者団体に直接謝罪

一連の問題を受け、伊藤環境相は5月8日に水俣市を再び訪問し、団体側に直接謝罪した。

伊藤環境相:
今回のことを深く反省し環境省全体として皆様の気持ちに沿えるようにしっかり環境行政を進めることを約束する

まず、水俣病被害者互助会など6つの患者・被害者団体と面会し、出席者一人一人に頭を下げた。

意見交換の場では大臣に対して団体側から厳しい声が相次いだ。

水俣病不知火患者会 森正直副会長:
まだ水俣病は終わっていない。終わっていない被害者の声を聞かなくて何が環境省ですか

水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会 加藤タケ子事務局長
いま世間では「患者団体が3分間の発言時間を守らなかったのが悪いのではないか」というネットでの攻撃がある。少なくともこんなことが繰り返されないように「これは環境省の不手際」というところは痛みを持って認識してほしい

「3分で水俣病のことは分からない」

水俣病被害者互助会 佐藤スエミさん:3分では水俣病のことは何もわからない。来年からは3分といわず最低10分は被害者の声を聞いてください

伊藤環境相は、3分の発言時間を見直し、意見交換の機会を増やす考えを示した。

水俣病被害者・支援者連絡会 山下善寛代表代行:
今日の話を聞いて胸がスカッとして満足だという気持ちは全然ない。68年たっても水俣病が解決していない現実を真摯に受け止めて早急に対策を講じてほしい

水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会 加藤タケ子事務局長:
患者の心に向き合ってこれなかった環境省の結果が、今回の件を招いたということは少なくとも伝わってほしい

「本当の心での大臣の発言か分からない」

その後、懇談の席で発言を遮られた水俣病患者連合の松﨑重光副会長とも面会し、謝罪した伊藤環境相は、松﨑さんの妻・悦子さんなど水俣病で亡くなった人たちの位はいに手を合わせた。

水俣病患者連合 松﨑重光副会長:
ゆっくり落ち着いて話を聞いていただいて話をしていただければよろしくお願いします。

「改めて懇談の場を設けてほしい」との松﨑さんの訴えに、伊藤環境相は「最大限努力する」と回答。これに対し、水俣病患者連合 永野三智事務局長は「努力という言葉ではなくてできるか、できないか、するか、しないかは、大臣が決めていい。そういう立場ではないのか」と厳しい声が上がり、伊藤環境相は「(懇談の場を)設けます」と答えた。

数か月以内に懇談の場を設けると明言した伊藤環境相に松﨑さんは「本当の心で、気持ちで大臣が発言したのか分からない。今回の言葉が本当であれば次の懇談の場で出てくると思う。そしたら信用する。そうでないと信用できない」と話した。

被害者側に刻まれた拭いがたい不信感

環境省はいま、水俣病に真摯に向き合う姿勢が求められている。

一連の問題について岸田首相は9日午後に官邸を訪れた伊藤環境相に対し、「今後、二度と同じことがないよう、厳重に注意していただきたい」と述べた上で「関係者に寄り添った対応」を指示したということだ。

(テレビ熊本)

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