【2028年】雇用保険適用が拡大。パート主婦の手取りに影響はある?

円グラフ「あなたは雇用保険の適用対象が10時間以上の人まで拡大されることについてどう思いますか?」意識調査の結果内容は?

2024年10月から社会保険の適用が拡大され、従業員51人以上の企業も対象になります。

段階的に社会保険の適用が拡大されたことで、パート・アルバイトの人にも大きな影響が出ていますが、実は「雇用保険適用の拡大」も検討され始めています。

政府は、雇用保険の適用対象を現行の20時間以上から「10時間以上」へ拡大する方針を示しており、閣議で法律案が決定しました。

雇用保険の適用が拡大されることで、私たちの生活にどのような影響が出てくるのでしょうか。

本記事では、雇用保険の適用拡大における概要や影響について紹介していきます。

雇用保険の適用拡大に関する意識調査についても紹介しているので、あわせて参考にしてください。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

2028年より雇用保険の適用が拡大へ

政府は、2024年2月9日に雇用保険の適用拡大することを盛り込んだ「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を提出し、同日に閣議決定されました。

雇用保険が適用拡大された背景として、多様化する働き方への支援強化があげられます。

雇用保険は一定の保険料を支払うことで、失業した人や育児休業を取得した人に対して、給付金が支払われますが、現行の対象は1週間の労働時間が「20時間以上」の人に限られています。

しかし近年では、女性の社会進出やシニア世代の就労率が増加するなど、働き方が多様化しており、パートやアルバイトなど、短時間勤務の労働者が増えているのが現状です。

短時間勤務の労働者は、失業や育児休業をした際に、十分な支援を受けられない状況であることから、短時間勤務で働く人たちが支援を受けやすくするために、雇用保険に関する改正案が閣議で決定したのです。

改正案では、雇用保険の対象を1週間の労働時間が「10時間以上」の人にまで拡大する方針で、約500万の人が新たに雇用保険に加入し、給付が受け取れるようになる見通しです。

週間就業時間が20時間未満の雇用者数

そんな雇用保険の適用拡大ですが、当事者となる労働者はこの改正についてどのくらい認知しているのでしょうか。

次章にて、雇用保険適用拡大の意識調査をみていきましょう。7割以上の人が雇用保険の適用拡大を「知らなかった」と回答しています。

7割以上の人が雇用保険の適用拡大を「知らなかった」と回答

株式会社ビースタイル ホールディングスは「雇用保険の適用対象拡大」をテーマに、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層にアンケート調査を実施しています。

調査概要は下記のとおりです。

  • 調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
  • 有効回答者数:536名
  • 調査実施日:2024年1月17日(水)~2024年1月24日(水)まで
  • 調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者
  • リリース公開日:2024年4月24日

上記調査の結果、76.7%の人が、雇用保険の適用対象を10時間以上へ拡大することを「知らなかった」と回答しています。

雇用保険の適用対象を10時間以上へ拡大することを知っていましたか?

「知っていた」と回答した人は2割程度にとどまっており、4年後に適用される制度がまだ認知されていない現状がみてとれます。

また、「雇用保険の適用対象が10時間以上にまで拡大された場合、あなたが仕事する際の希望条件に影響はありますか」というアンケートでは、32.8%の人が「希望条件に影響はない」と回答しました。

次いで多かったのは、28.5%で「制度をよく知らないのでわからない」、27.6%で「今より給与を高くしたい」が続く結果に。

雇用保険が適用拡大されることに対して「影響がない」と考える人が最も多い結果となりましたが、3割近くの人が適用拡大に伴い給与を高くしたいという希望をしていることがわかります。

半数以上が雇用保険の適用対象拡大について「どちらとも言えない」

株式会社ビースタイル ホールディングスの同調査で、「あなたは、雇用保険の適用対象が10時間以上の人まで拡大されることについてどう思いますか」と尋ねると、54.1%が「どちらとも言えない」と回答しました。

あなたは、雇用保険の適用対象が10時間以上の人まで拡大されることについてどう思いますか?

「賛成」が33.2%、「反対」が12.7%となっており、賛成のほうが反対よりも3倍近く多い結果となりました。

賛成派の意見としては、「失業保険を利用出来る」といった給付金の適用対象になることをメリットとして挙げています。

一方で反対派の意見としては、「手取りが確実にへる」といった保険料天引きにより手取り額減少を懸念する声が聞かれました。

政府は、改正となる2028年10月に向けて、雇用保険に加入することで対象者にどのようなメリットがあるのか、どの程度の負担が想定されるのかを伝えていくことが今後の課題になるとうかがえます。

雇用保険適用拡大によるパート主婦への負担とメリット

2028年10月以降から雇用保険の適用が拡大された場合、週に10時間以上の労働で加入対象となります。

たとえば、週に2日、1日5時間の労働でも適用となるため、加入対象のハードルが大幅に下がることになるでしょう。

雇用保険の適用になった場合、社会保険料や税金などと同様に、雇用保険料も給与から天引きされるため、手取り額はその分少なくなります。

令和6年の従業員の雇用保険料率は、一般事業で賃金の0.6%とされているため、仮に時給1200円で5時間勤務を週に2回した場合、月の給与は約5万円前後となります。

その場合、雇用保険料は月に約300円、年間で約3600円となるため、社会保険料の保険料率と比較すると負担額は少ないものといえます。

また、雇用保険に入ることで「失業手当」や「育児休業給付、介護休業給付」の支援を受けられるだけでなく、「教育訓練給付制度」といった制度も活用できます。

そのため、育児中の人や育児復帰後に正社員への転職を考えている人にとっては、保険料分以上の支援を受けられる可能性が高いです。

雇用保険の適用拡大により、手取り額が減少する人は増えてしまいますが、多くの場面でメリットに感じることが多いものとうかがえます。

支給条件の確認も忘れずに

本記事では、雇用保険の適用拡大における概要や影響について紹介していきました。

2028年10月より、雇用保険の適用が拡大される見通しです。

これにより新たにおよそ500万の人が加入する見込みとなっており、該当する場合は現在の手取り額が、雇用保険料の天引きにより減少する可能性があります。

とはいえ、雇用保険料に加入すれば、失業手当や育児休業給付などの支援が受けられるため、いざという時の安心感は強くなるのでしょう。

「まだ先のこと」と思わずに、ご自身が適用になるか、適用の場合はいざという時の支給条件なども、今のうちに確認しておけると良いでしょう。

参考資料

  • 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要」
  • 株式会社ビースタイル ホールディングス「雇用保険の適用対象を10時間以上へ拡大:「賛成」が「反対」の約3倍/「どちらとも言えない」54.1%適用対象が拡大された場合の仕事の希望条件「影響はない」32.8%」
  • 厚生労働省「第189回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」
  • 厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」

© 株式会社ナビゲータープラットフォーム