サザエが消える不気味回も… 『サザエさん』ファンが愛する「迷エピソード」プレイバック

フジテレビ『サザエさん』番組公式サイトより

1969年の放送開始以来、日曜日の夕方に欠かせない番組となっているテレビアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)。今年のGWには4月29日から5月3日にかけて、『ゴールデン「サザエさん」ウィーク傑作選』と銘打ち、厳選した過去エピソードが5日間連続で1話ずつ放送されたことも話題になった。

今年10月で放送から55周年を迎える同番組だが、磯野海平のような親戚キャラクターが登場したり、堀川くんのような変わった言動を行うキャラクターが登場したりと、いつもとは違ったエピソードが放送されると、ネットで話題にのぼることもしばしば。今回はいつもの平和な『サザエさん』とは違う、もう1つの顔。“迷エピソード”とも呼ばれる珍しい回を振り返っていきたい。

■遂にサザエさんが髪をおろす「キレイになりたい」

まずは2013年に放送された「キレイになりたい」だ。これは、サザエさんが一念発起し、イメチェンにチャレンジするという貴重なエピソードで、放送中からネットで大きな話題を集めた。

サザエさんがどんなイメチェンをしたのかというと、いつもの髪形をやめて、髪をおろしてしまったのだ。すると、肩が隠れるほどの黒髪のロングヘアーに大変化。サザエさんがまるで新キャラのような、別人とも言えるほどの見た目になった。

三河屋のサブちゃんは「女子大生かと思いました」とリップサービスしているが、サザエさん一家は、変貌したサザエさんにとまどうばかり。サザエさんのパートナーであるマスオや、サザエさんを子どものころから見ているはずの波平すらびっくりすることとなった。

マスオや波平のリアクションを見ると、サザエさんは日常でも絶対にあの髪形を崩さないのかもしれない。実に貴重なサザエさんのイメチェンだが、2018年の「生まれ変わった姉さん」ではストレートヘアのメガネ姿になっていたり、2022年の「姉さんのイメチェン」では茶髪のボブヘアになっていたりと、時々変身を遂げて視聴者を驚かせている。いずれもネットをザワつかせた、レア回だ。

■全自動タマゴ割り機が飛び出した「父さん発明の母」

迷エピソードといえば、この回は外せない。珍妙なキッチンアイテムである“全自動タマゴ割り機”が登場した2007年放送「父さん発明の母」である。ネットで多方面でネタにされた回で、もしかすると、この回がサザエさんの全エピソードで一番有名かもしれない。

この話は、波平が「いいものを買ってきた」と全自動タマゴ割り機を家族に披露するところから始まる。波平は「あっと驚く主婦の味方だよ」と自慢げに話すが、大袈裟な作りのわりに機能はタマゴを割るのみ。カツオの「手で割ったほうが早いんじゃ」とツッコミも耳には入らず、波平が凄い機械だと自信満々なのがこの話である。

翌朝には珍しく割烹着まで着て、台所に立って全自動タマゴ割り機を使い、目玉焼きを作る波平。いつにもまして家長としての波平のキャラが際立っており、妙にオーバーアクションで「うまい! やっぱり機械で割ったタマゴはひと味違いますよ」というマスオのヨイショも相まって、男性陣のおかしな姿が楽しめる珍しい回だ。ネタ要素が満載の、迷エピソードと言えるだろう。

■あまりにも不可解な空気感が漂う「こたつ依存症」

同じ2007年に放送された「こたつ依存症」のエピソードも、ファンの間でたびたび話題に上がる珍回のひとつだ。

こちらは寒い冬に、サザエさん一家がリビングのこたつを取り合うという日常のほのぼのエピソードだが、ラスト十数秒に不思議な演出が入る。なぜか「ポク……ポク……」と、木魚のような音がゆっくりと響くだけの奇妙な音楽をバックに、サザエさん一家がそれぞれの部屋で寝ているシーンが流れるのだ。そして電気が消えたリビングのこたつのカットが描かれ、その後回想シーンのようにサザエさん一家が皆でこたつに入っているシーンが挿入され、そのままこの回は終了となる。

急にセリフが一切無くなり、静かで奇妙な音楽が流れるのは、いつもの『サザエさん』とは違った演出。また、就寝シーンではタラちゃんとマスオが同じ布団で寝ている描写があるが、なぜかサザエがその場にはおらず、最後の最後まで彼女は姿を見せない。サザエは一体どこへ行ってしまったのか、そしてなぜ真っ暗な部屋の不気味なこたつカットが挟まれるのか。

最後のカットは、昼間に磯野家のみんなに愛されたコタツの寂しい気持ちを演出しているのかもしれないが、謎の多いエピソードとしてファンの間で語り継がれている。

他にも、サザエさん一家が全員パリピ風になってしまう「わが家のニューモード」など、まだまだ迷エピソードは存在する。おかしな回である一方で、ネットを盛り上げるこうしたエピソードをリアルタイムで目撃すると、ラッキーと感じてしまう視聴者は筆者だけではないのではないだろうか。

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