「富士山に恥ずかしくないように」川勝知事が語った県民への"感謝と後悔"「痛恨の極み。厳しい反省」【川勝知事・最後の会見(上)】

静岡県の川勝平太知事は2024年5月9日、退任会見を行いました。
川勝知事は4期15年にわたる県政運営について、県民の協力や支援に感謝を述べました。また、知事の最大の任務は「県民の皆様の生命と財産の保全」だったとして、28人が亡くなった熱海土石流災害など在任期間中の災害で「尊い命を失われた48名の御霊に対して衷心より哀悼の誠を捧げる」と頭を下げました。

これまで、在任期間で嬉しかったこととして富士山の世界文化遺産を挙げてきた川勝知事。この日も富士山に触れ「雨の日も風の日も、見えようと見えまいと、公園で毎日手を合わせてきた」と話し、「富士山に恥ずかしくないように」過ごしてきたと振り返りました。

また記者から、富士山に反省を伝えるならどんなことか問われると、違法盛り土の崩落によって28人の命が奪われた熱海土石流災害と答え、「痛恨の極み。悔いても悔いきれない」と話しました。

川勝知事をめぐっては、4月1日の県庁の新入職員への訓示で「毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を売ったりということと違って、基本的には皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」と職業差別とも受け取れる発言をして批判が集まり、知事は翌日に辞職を明言。5月9日いっぱいで退任となり、同日は次の知事を決める選挙の告示日とも重なりました。

【会見での関連発言全文】 <川勝平太知事>
「私は本日令和6年5月9日をもって15年間預かってまいりました、知事職を辞することになりました。この記者会見を通じまして、県民の皆様方に対しまして、これまで慣れない仕事でございまして、いろいろとご心配をおかけしたと存じますけれども、にもかかわらず、ご協力、またご支援、ご理解を賜りました県民の皆様に対しまして、深甚よりありがたく厚く御礼を申し上げるものであります。ありがとうございました。
さて、私が知事に就任いたしましたのは、15年前の2009年7月のことでした。知事の最大の任務は、県民の皆様の生命と財産の保全であります。就任した翌8月の11日に駿河湾沖地震がございました。そして、1名の方が命を落とされました。それを機に危機管理を最優先にすると決めまして、県政に取り組んでまいりました。そうした中、2011年の台風15号で3名の方、2012年の台風4号で1名の方、2013年の台風26号で1名の方、2014年の大雪で2名の方、2019年の台風19号で3名の方、2020年の豪雨で1名の方、また2021年7月の熱海土石流で災害関連死1名の方を含む28名の方、2022年の台風15号では、災害関連死3名の方を含む6名の方、そして2013年の台風2号で2名の方が尊い命を亡くされました。不慮の災害で尊い命を失われました48名の御霊に対しまして、衷心より哀悼の誠を捧げるものであります。ご冥福をお祈りいたします。被害に遭われ、復旧復興の途上の皆様には、1日も早く日常生活を取り戻してくださるように心から願っております。
さて、任期3期を全うした後、現在は4期目で来月で丸3年目となります。これまでほぼ丸15年もの間、県民の皆様に懸命にご奉仕してきたこと、一生の思い出でございまして、光栄の一語に尽きるものであります。私は、富国有徳の『美しい“ふじのくに”』づくりを理念に掲げ、その実現のために現場主義に徹する努力を重ねてまいりました。現場に出かけた回数は15年間で県内3500回を超えておりますけれども、県内各地で仕事に打ち込めましたのは、ひとえにそれぞれの現場でお目にかかりました皆様のご協力、またご支援の賜物でございます。これまでのそれぞれの場におけるご厚情に対しまして、改めて深甚の感謝の意を捧げるものであります。誠にありがとうございました」

<川勝平太知事>
「いかに僕が富士山に深く傾倒してきたかと。また影響を受けてきたかと。この数年間、私は朝、今日もそうですけども、まだ4時半ぐらいになると明るくなりますけれども。そこの公園ですね、城北公園に行きまして、そこから一番きれいに富士山が見えるところがあるんですよ。見えようと見えまいと、そこで手を合わせるんですけどね。毎日それやってるわけです。雨の日も、風の日も。そういう意味でもですね、毎日毎日富士山だなと。また知事室の机がもともと西側の方にあったわけです。私はそれを東に富士山が見えたので東に移しました。窓際族になったわけですけど、富士山が見えるのがうれしいと。その内、見ているんじゃなくて、見られているんだと。富士山に恥ずかしくないようにというのがですね、自然に心の中に入りましたので。「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は変らざりけり」という鉄舟さんの歌じゃありませんけど、まさにそういう感じですね。元の姿というのをですね、常に心の中にイメージして、自分で帰ってきたと。本当にこの富士山のあるところにですね、来て仕事ができたというのは本当にありがたいことだと改めて思う次第です」

<記者>
「一方で、もし富士山に何かこれができなかった、これを反省しているということを言うとすれば、どんなことでしょうか」

<川勝平太知事>
「ともかく、28名の方がですね。突然土石流という命を奪われたと、このことは痛恨の極みであると。厳しい反省でございます。私個人に即して言いますれば、その現場近くに複数回行っているにもかかわらず、七尾団地にお邪魔したわけですけれども、そのすぐ左手に、川が流れているわけですね。そこに違法の盛土がなされていたわけですね。現場を見る機会を持てなかったのかというのが、悔いても悔いきれないところがございます」

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