中国当局、10年ぶりに「市場支援策」を発表も…上海総合指数が「大幅に下落」したワケ【現地駐在員がリポート】

(※写真はイメージです/PIXTA)

中国では、1~3月期のGDPをはじめ各種経済統計が発表された4月16日に、上海総合指数が大幅に下落しました。市場では「投資家が不信任票を投じた」との声もあがるなか、東洋証券の上海駐在員事務所で所長を務める奥山要一郎氏は「コトはそれほど単純ではない」といいます。中国株安の裏にはいったいなにがあったのか、詳しくみていきましょう。

4月の中国株安…背景に「当局の政策・思惑」か

中国の1~3月期GDPなど各種経済統計が発表された4月16日。上海総合指数は前日比1.65%安と反落し、約2週間ぶりの安値水準まで売り込まれた。

3月の小売売上高や鉱工業生産が予想を大幅に下回ったため、「投資家が不信任票を投じた」と株安を評する声もあったが、コトはそれほど単純ではないだろう。

マクロ経済だけで中国株式市場を占うことが出来るのなら苦労しない。背景には結局、当局の政策や思惑、そしてマーケットとの対話があるようだ。

統計発表前の週末、4月12日引け後のこと。国務院は資本市場振興策として「リスクコントロールの強化と資本市場の質の高い発展の促進に関する意見」を公表した。上場基準の厳格化や上場廃止ルールの確立、違法行為の取り締まり強化などに加え、上場企業の投資価値の向上もうたわれた。

「長年にわたって無配を続け、配当性向が低い企業については大株主の持ち株売却を制限し、リスクがあることを示す警告マークをつける」とされている。

この「意見」は9項目で構成され、現地では「国9条」と呼ばれている。同様の「国9条」は2004年、14年にも発表されており、ネット上では「10年ごとの市場支援策は大きな意味を持つ(だから買いだ!)」のような煽り文句が飛び交った。

実際、週明け15日の上海総合指数は1.26%高と反発した。ところが、冒頭のように翌16日は反落。上場5,362銘柄のうち、実に95%近くに当たる5,066銘柄が下落し、746銘柄がストップ安となった。特に中小型株の売りが目立ち、「中証1000指数」は4.18%安、「中証2000指数」は7.16%安と大きく売られた。

[図表]上海総合指数の推移 (出所)QUICKデータより東洋証券作成

上海総合指数の大幅下落…中小型株が主導で売られたワケ

なぜ中小型株が下落したのか。ヒントは、中国証券監督管理委員会(CSRC)が株安後の16日深夜に行った(とされる)記者会見の中にある。

当局は、配当基準を満たさない企業が上場廃止リスクの高いST銘柄に指定されるとの懸念について、今回の政策の対象は「配当の能力があるのに長期間無配、或いは低配当性向の企業だ」と説明。上場廃止規則の修正についても「小型株をターゲットにしたものではない」とあえて強調した。

今回の「意見」をきっかけに浮上した中小型株への懸念を払しょくした形だ。

株主還元の強化と言えば聞こえはいいが、「配当せよ!」という無理強いにも捉えられかねない政策。株価がネガティブに反応したため、慌てて釈明してきたのだろう。いつもながらのドタバタ劇である。

最初から分かりやすく説明しておけばいいのに…現地駐在員のホンネ

当局と市場との対話は一筋縄で行かないのは世の常。「上からの押し付け政策」が多い中国では、双方のコミュニケーションが難しく、時として誤解を招きやすい。

「最初から分かりやすく説明しておけばいいのに」と思うこともしばしばだが、いずれにせよ中国株式市場は政策の意図や市場の反応を読みながらウォッチし続けるしかない。これがまた困難を極めるのだが。

奥山 要一郎

東洋証券株式会社

上海駐在員事務所 所長

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