【只見町ロケ映画】相互交流促進の力に(5月10日)

 只見町などを舞台とした日台合作映画「青春18×2 君へと続く道」が全国公開された。福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便の運航などで台湾から会津地方への観光客が大幅に増えている。映画の公開を契機に、さらなる相互交流の促進に期待したい。

 映画は台湾と日本の若い男女の恋を描いた作品で、監督・脚本を「余命10年」「ヴィレッジ」などの話題作で知られる気鋭の藤井道人さんが手がけた。アジアで人気の台湾俳優のシュー・グァンハンさんと、実力派俳優の清原果耶さんの2人が主演を務める。物語は清原さん演じる主人公の故郷が只見町という設定で、JR只見線や町内の美しい風景とともに感動的な結末を迎える。

 原作では、福島県は旅の通過点にしか過ぎなかったが、只見線の再生の歩みと沿線住民の地域愛が藤井監督の心に響き、只見町が重要なロケ地に選ばれた経緯がある。まさに只見線と、福島県と台湾の交流を後押しする作品と言える。公開初日の3日に全国の映画館280館と台湾をオンラインで結んで行われた舞台あいさつでは、出演者の一人黒木華さんが「台湾の風景と日本の美しい風景を迫力ある大画面で見てほしい」と語った。沿線の魅力を国内外に発信する上で、映画の力を借りられるのは頼もしい。

 只見町は町内4カ所のロケ地を紹介するマップを作り、それぞれのロケ地には案内看板も設置した。只見線を活用した旅行商品を造成してきた会津若松観光ビューローには、マップを活用してロケ地を巡るツアーなどを企画してほしい。福島空港と台湾を結ぶ国際線の定期便化には、台湾からの誘客だけでなく、福島県から台湾を訪れる相互交流も欠かせない。台湾のロケ地を巡る福島空港発着のツアーなども検討すべきだろう。

 台湾では日本に先駆けて公開され、1カ月で観客動員30万人を突破した。映画のヒットで今後、会津地方へのさらなる観光客の増加が期待される。福島民報社が会津地方17市町村を対象に実施したアンケートでは、只見線沿線以外の町村では全線再開通の効果があまり実感できていないことが浮き彫りとなった。沿線以外にも足を延ばしてもらえるような仕掛けづくりも求められる。(紺野正人)

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