幼い新1年生が突然ピンポン 「めちゃめちゃ温かいエピソード」に8.3万“いいね”

漫画のワンシーン。ドアを開けると見知らぬ女の子が【画像提供:さざなみ(@3MshXcteuuT241U)さん】

小学校に入学したばかりの新1年生が、少しずつ登校にも慣れてくる時期です。小さい体には大きすぎるように見えるランドセルもなじんできた一方で、心もとない印象も。X(ツイッター)では、そんな新1年生との交流を描いた漫画が話題になっています。作者のさざなみ(@3MshXcteuuT241U)さんに、当時の状況について詳しいお話を伺いました。

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「ひとりであるくのこわいから…」

2人の姉妹を育てながら、子どもたちとの日常を漫画で描いてSNSに投稿し、イラストレーターとしても活躍しているさざなみさん。愛らしいタッチと、「近しい人に話したいと思うエピソード」をテーマにした優しい気持ちになる作品が人気を集めています。

今回、話題になったのは「新1年生の帰り道」という漫画。ある日の午後、子どもが帰宅するにはまだ早い時間に、ピンポンと家の呼び鈴が鳴りました。モニターを確認しても姿が見えず、いたずらかと玄関に出てみると、ランドセルを背負った新1年生の女の子が。まだ小さくて、モニターに映らなかったようです。

さざなみさんの知らない子どもでしたが「どうしたの? 何か困ってる?」と問いかけると、「ひとりであるくのこわいから 一緒にあるいてください……」とお願いされます。「なんとかわいいお願いだろう」と思ったさざなみさんは、女の子を送っていくことにしました。

勇気を出して呼び鈴を鳴らし、さざなみさんにお願いする健気な女の子の表情。かわいらしい作風と、その後の展開にも心が温まり、とてもほっこりした気持ちになります。

この作品が公開されると、8.3万件もの“いいね”が集まりました。リプライ(返信)には「なんて素敵な話。絵もかわいくてほっこりしました」「頼れた子も偉いし、それを否定したり面倒くさがらずに受け止めてくれる作者さんも人格者すぎる」「めちゃめちゃ温かいエピソード」「その年で自分が怖いことを人に話せて人に頼めることが本当にすごい」など、女の子の勇気とさざなみさんの対応に感動の声が上がっています。

女の子がさざなみさんを頼ったのには理由が…【画像提供:さざなみ(@3MshXcteuuT241U)さん】

お母さんの言いつけを守り、考えて行動した女の子

新1年生が登校するのを見かける季節になり、昨年のことを思い出して作品を描いたというさざなみさん。当時の状況について、お聞きしました。

Q. 女の子がさざなみさんのお宅を選んだのは、なぜだと思いますか?
「うちには小学生の長女がいるので、見送りと出迎えをしたくて、朝と夕に家の前で掃除をしたり、水やりをしたりしています。そうした際に、その子も毎朝その道を通っていて、なんとなくランドセルの色に見覚えがありました。だから、小学生の子がいるとわかっている我が家のピンポンを押したそうです」

Q. どうして女の子は、一緒に歩いてほしいとお願いしたのでしょう。
「最初に送っていった際に聞いたのですが、集団下校が終わってしまうことを心配したお母さんが『必ず誰かと一緒に帰ってきなさい』とその子に言ったそうです。なのに、気がつけば周りに誰もいなくなって困ってしまった。我が家を選んで『一緒に歩いてほしい』とお願いしたのはそういうわけで、考えなしに行動したわけでは決してなく、思慮深いお子さんだったと思います。その後、雨の日に傘が壊れてしまったときも、ピンポンを鳴らして助けを求めてくれました」

女の子を家の近くまで送り届けたさざなみさん【画像提供:さざなみ(@3MshXcteuuT241U)さん】

「本人が自分の不安に気づいて行動できたことをまず褒めたい」

Q. 一緒に歩いている間、どんなお話をしましたか?
「『おうちに家の人はいるのか』とか『通るときに怖い場所があるのか』など、気になったことを尋ねたあとは、チョウチョが飛んでいることとか、田んぼや畑に今、なんの野菜が植えられているかとかをのんびり話していました」

Q. 女の子の家までは、かなり距離があったのでしょうか。また、保護者の方とお話しする機会はありましたか?
「自治会の班は違いますが、同じ町内です。大人の足だと5分もかからない距離ですが、1年生にはもっと遠く感じたと思います。参観の日には、お母さんとおばあちゃんがわざわざ家まであいさつに来てくれました」

Q. 多くの反響が寄せられていますが、どんな印象を持ちましたか?
「新1年生や小学生の登下校について、多くの方が不安を抱いているとわかりました。地域の雰囲気やおうちの考え方も千差万別で、今回のエピソードが一概に良かった良かっただけでは済ませられない世の中なのだと感じます。私としては、女の子が自分の不安に気づいて行動できたことをまず褒めたいですね。助けを求めれば、助けてもらえるという体験をしてほしいと思います」

慣れない通学などで、新1年生が戸惑いながら行動している時期。困っている姿を見たときは、いつでも助けられるようにしたいですね。

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