駆除のクマ、ソーセージに 青森県弘前市のハンター・盛英吾さん 売り上げは農作物被害対策へ

ジビエベースあおもりの山田さん(右)、藤野さん(中)、津軽熊ソーセージの販売も行っている盛さん
畑を荒らすなどして駆除されたクマの肉を使った「津軽熊ソーセージ」

 畑を荒らすなどして駆除されたクマをソーセージに加工し、販売利益を動物による農作物被害対策などに充てようと、青森県猟友会のメンバーで会社員の盛英吾さん(40)=弘前市在住=が昨年12月から「津軽熊ソーセージ」の販売を行っている。盛さんは「今は『出たら駆除する』だが、将来的には被害を減らし、駆除しなくても良い状況にすることが目標。農家などの役に立てれば」と話している。

 県によると、2023年度の県内はクマによる農作物被害の金額が2129万円(前年度は496万円)と深刻だった。「人と動物のトラブルを防ぐにはハンター(猟師)が積極的に入山し、人は怖い存在だと動物に教える必要がある」と盛さん。しかし、ハンターの減少と高齢化により、クマの頭数の適正管理が難しくなっているのが現状だ。

 クマは捕獲数が少なく、食品としての利用促進が困難であるため、同市では埋却処分が基本。奪った命をただ廃棄するしかない状況の中、盛さんは「命を無駄にしたくない」との思いで昨年11月、ジビエ(野生鳥獣肉)の加工品を販売する「ジビエつがる」を立ち上げた。

 津軽熊ソーセージは、駆除したツキノワグマを秋田県の施設で解体、弘前市内の食品加工会社に委託して作っている。収益の一部を電気柵の設置などに活用することで、動物と人間のすみ分けを進め、将来的に農作物へ被害を与えて駆除される動物がいなくなることを目指す。

 また、盛さんはともに県猟友会メンバーの山田福敏さん(42)=十和田市=、藤野晋三さん(39)=青森市=と任意団体「ジビエベースあおもり」を創設。今後マルシェなどを開いてさまざまな世代にジビエや狩猟へ興味を持ってもらうほか、ハンターの育成にも力を入れていく。

 3人は「ハンターが減り、農作物への被害が県内で増えていくのは目に見えている。今後、(害獣の)防除やハンターの育成を進めていきたい」と意気込んでいる。

 津軽熊ソーセージはプレーン、チョリソー、スパイスの3種類があり、それぞれ2本入りで1500円(税込み)。購入方法など問い合わせは盛さん(メールアドレスeigomori.gibiertsugaru@gmail.com)へ。

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