生産危機食材で未来へ警鐘…渋谷に「2050年の食」体験カフェ 日本のフェアトレード規模は「ドイツの17分の1」さらなる理解を

東京・渋谷に「2050年カフェ」が期間限定でオープンした。
気候変動により生産が困難になる食材を使ったメニューで、2050年の食事体験を提供する。
専門家は、公正な価格設定による持続可能な消費行動の推進が必要と述べ、未来への警鐘を鳴らす。

未来へつなぐ「2050年の食」体験

未来の食の危機について考える、その名も「2050年カフェ」が登場した。

東京・渋谷で9日、期間限定でオープンしたのは、生産の危機にある食材を使ったメニューで「2050年の食」を体感するカフェだ。

栁原弥玖記者:
グラスの半分だけのコーヒーや、チョコチップが少しだけのクッキーなど、2050年を想定したカフェメニューが提供されます。

コーヒー豆やカカオ豆は、気候変動の影響で、2050年には生産量が激減すると指摘されている。

認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン・潮崎真惟子事務局長:
いつも私たちが大好きで飲んでいるコーヒーや、チョコレートがいつかなくなってしまうかもしれないと思うと、自分事にしていただけるかなと。

青山学院大学の学生が商品のセレクトや、カフェの運営に携わっている。

主催するNPO法人は、SDGsへの意識が高い若い世代をきっかけに、その家族にも食の危機について関心を持ってほしいとしている。

先進国側が価格決定権→途上国は子供を労働力に

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
未来をイメージしたカフェ、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
今、チョコレートの原材料であるカカオの価格は、天候不順による不作などによって、金属の銅の先物価格よりも高くなっています。

カカオのマーケットの20年間を見てみると、繰り返し価格が高騰していますが、その陰でカカオ農家は、栽培したくても、作ることができない、買いたたかれてしまうなど、大きなダメージを受けてきました。

さらに、生産者を苦しい状況に追い込んでいるものに、貿易の“ゆがみ”があります。

堤キャスター:
それはどういうことでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
生産する途上国と、消費する先進国とで貿易が行なわれるわけですが、輸入する先進国側が価格の決定権を持つケースが多いんです。

そのため、生産側が安い価格での販売を強いられたり、生産者が利益を出すために、子供を労働力に使うことが日常的に行われています。

そこで、生産者にしっかりと利益が届く公正な貿易をしようというのが、フェアトレードです。

日本はフェアトレードへの理解が進んでおらず、その規模はドイツの17分の1ほどの200億円程度にとどまっています。

さらに、1人当たりの年間の購入額はおよそ100円で、スイスの100分の1程度になっています。

低価格の理由を知ることで公正に

堤キャスター:
日本でも、フェアトレードの商品を手に取る機会を増やしていきたいですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
経済学には「合成の誤謬(ごびゅう)」という言葉があります。ミクロの視点では合理的な行動であっても、それが合成されたマクロの世界では、必ずしも好ましくない結果が生じてしまうことです。

価格は安い方がいいが、口にしている食べ物がどうやって生産されているのかを考える必要があります。

個人や企業の利益だけを追い求めると、生産者が生産できなくなり、最後は社会全体に物が届かなくなるかもしれません。

今回の未来カフェの世界がやってこないように、どこかにだけ「富」が偏りすぎない社会をつくっていくことが求められています。

堤キャスター:
いま私たちにとって当たり前の食生活が、数年後、数十年後も当たり前とは限りません。限りある資源、そして、人、それぞれの抱える課題を知り、未来のために何ができるのかを考えていくことが求められています。
(「Live News α」5月9日放送分より)

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