【ロードスター復活計画その6】初めてのタイベル交換、ついに完成!? DIYでエンジンはちゃんと元に戻せるのか?

by 瀬戸 学

いよいよ本題のタイミングベルトを取り付ける!!

9年前に車検を切って放置していたNAロードスターを復活させるべく、自宅の駐車場で始めたDIYリフレッシュ計画も、いよいよ6回目。

まずはタイミングベルトを交換しつつ、エンジンまわりのリフレッシュを進めてきた。前回までで補機類などのオーバーホールを終わらせ、今回はいよいよエンジンを元に戻していく。はたして素人のDIYで無事にエンジンはかかるのか? なお、バックナンバーが気になる方は下記の関連記事を参照いただきたい。

タイベル交換と一緒にやりたいウォーターポンプの交換

タイミングベルト交換の際には、ウォーターポンプも同時交換が鉄則。タイミングベルトの奥側にあるので、タイミングベルトを外したタイミングで交換しないと、またタイミングベルトを外すことになるからだ。

水漏れが起きないよう、エンジンシリンダー側の接触面をオイルストーンで磨いたら、新品ガスケットを挟んで、規定のトルクで締め付ける……のだが、うっかり写真を撮り忘れていた。ご容赦いただきたい。

同時にサーモカバーも新しいOリングを挟んで取り付ける。サーモパイプなどもすべて洗浄し、パイプの中もキレイにしてある。

こんな写真しかなくて恐縮だが新しいウォーターポンプ
ウォーターポンプとエンジンの間のガスケット。当然新品
ウォーターポンプの裏側。ここからエンジンに水を送り込む
ウォーターポンプとラジエターの下側、そしてエンジン後方をつなぐパイプ。サーモスタットが閉じている時はエンジン内で循環する
このパイプはエンジン後方につながる。ここのOリングも交換
これはサーモカバー。エンジン側のOリングを新品に交換

ちなみに外す時と違って戻していく時には、ボルト1本ずつ締め付けトルクを管理する必要がある。DIYならトルクレンチに頼ったほうがいいと思う。

筆者がよく使っているのは、SK11のデジタルトルクレンチ「SDT3-060」とトーニチ(東日製作所)のプリセット形トルクレンチ「MTQL140N」の2つだ。エンジンまわりだとそこまで大きなトルクはいらないので、3~60Nmに対応するSK11を使い、足まわりなど、大きなトルクが必要な箇所ではトーニチを使っている。

SK11のデジタルトルクレンチ「SDT3-060」とトーニチのプリセット形トルクレンチ「MTQL140N」

指定トルクは何で調べるかというと、クルマの整備書に書かれている。整備書を見ると分かるが、指定トルクは●Nm~○Nmというように幅が持たせられていて、緩まないように上限値で締めたくなるが、筆者の場合はその上限と下限の真ん中ぐらいで設定することにしている。

というのも、再利用したボルトを上限値で締め込むと、最悪の場合、ボルトがねじ切れる可能性があるのだ。筆者は上限値で締めて足まわりのボルトをねじ切ったことがある。

それともう1つ、中央値にしている理由がある。と言うのも、筆者の場合、全てのボルトを2度締めしている。

ちょっと詳しい人だと、トルクレンチで2度締めは御法度、というのを聞いたことがあると思う。筆者も知ってはいるが、それでも2度締めするのは“締め忘れるよりはマシ”だからだ。

2度締め禁止の理由は、締めすぎ、オーバートルクになるためだ。ただしボルト(ネジ)というのは回転しなければ締め付けトルクが増えることはない。例えばネジピッチ(ネジの山と山の間隔)が1mmのネジを1回転させると、ネジを1mm引き延ばす分だけ締め付ける力が増える、というのがネジの原理。だから何回締め付けたかよりも、「カチ」とか「ピー」とか指定トルクの合図が出た角度からそれ以上回転させないことが重要。

加えて、指定トルクの中央値でトルクレンチを設定しておけば、もしも2度締めのせいで多少オーバートルクになったとしても、許容範囲内には収まるはず。それがトルクレンチの設定を中央値にしているもう1つの理由だ。

カムやクランクのオイルシールをハンマーでたたき入れる

続いて、これまたタイミングベルト交換の時に同時にやってしまったほうがいい、オイルシールの交換。

エンジンの中にはオイルが流れているが、それが漏れないよう各所にシールやガスケットと呼ばれるものが入っている。カムシャフトとクランクシャフトはエンジンの外まで伸びているので、その軸の周りにもオイルシールがある。当然カムシャフトもクランクシャフトも回転するから、ここのオイルシールは、より劣化しやすいし、オイル漏れの原因にもなりやすい。実際筆者のロードスターでもオイルが漏れた形跡があった。

上から見た図。カムシャフトは前側でカムプーリーにつながり、後ろ側にはクランク角センサーがつながる

まずカムシャフトについては、2本とも前側でカムプーリーにつながるため、エンジン前方にそれぞれオイルシールがある。それとは別に、後方にも1本(NA8Cの場合は排気側カムシャフト)の後ろにクランク角センサーというのがつながるため、そのセンサーにもオイルシールがある。

クランクシャフトについては、前側はクランクプーリーにつながるし、後ろ側はクラッチを介してトランスミッションへとつながるので、前後2箇所にオイルシールがある。ただ、後ろ側はトランスミッションやクラッチを外さないと交換ができないので、現時点では着手できない。

なので、今交換すべきは4つのオイルシールだ。そのうちクランク角センサーのオイルシールはただのOリングで、クランク角センサーをエンジンから抜き取ればカンタンに交換できる。

クランク角センサーを外してみると、丸い断面だったハズのOリングはすっかり四角くっぽくなって、弾性もなくなっていた。そしてわずかだがオイル漏れの形跡も。ということで新品のOリングにシリコングリスを塗って装着。

ちなみにクランク角センサーは取り付けの角度が変えられるようになっていて、その角度でプラグの点火時期を調整する役割りがある。逆に元の角度で戻さないと点火時期がずれてしまうので、外す前にマーキングしておく必要がある。

クランク角センサーを外す。外す前にマーキングをしておく
外したクランク角センサー
オイルシールはすっかり変形している。そしてオイルが漏れた形跡も
ピンボケで恐縮だがこちらはカムシャフトの後ろ側。この切り欠きに合わせてクランク角センサーを取り付ける

あとはカムシャフトとクランクシャフトのオイルシールの交換。これらは溝に埋まっている形なので、古いオイルシールを外すだけでも大変だ。

やり方はいろいろあるが、下手にこじってエンジン側にキズを付けるとオイル漏れの原因になるので、ストレートツールズの「シールプーラー シャフトタイプ」という専用工具を買っておいた。

たかがこれだけのためだけに工具を買うのはもったいないと思われるかもしれないが、こういった地味なところでシールが外れず何時間も苦労したり、キズを付けて後悔したりするぐらいなら、数千円の工具は安いものだ。実際、この工具はめちゃくちゃ便利で、ものの数分で外すことができた。

シールプーラーを使ってクランクシャフトのオイルシールを引き抜く
ツメの部分を押し込んで引っかけたらテコの原理で引き上げるだけでカンタンに外せる
外したオイルシールは結構傷んでいた
溝の内側もキレイに

外した溝をキレイにしたら、新しいオイルシールを取り付け。これまたちょっとやっかいで、ハンマーでコツコツたたいて打ち込む必要がある。

ボルトを締め付けるような作業は、正しい工具を正しく使えば失敗することはあまりないが、ハンマーでたたき入れる、みたいな作業はなんとも曖昧で自信がない。

しかもオイルシールを痛めないようにパイプなどを挟んで打ち込むのだが、整備書を見ると「適当な径のパイプ」と書いてある……。適当ってなんだよっっ、と思いつつ、ホームセンターでオイルシールに合いそうなサイズのパイプを物色して、水道管などに使われる塩ビパイプをいくつか購入。結局「TSソケット 30」というのがカムシールもクランクシールも使いやすかった。

新しいオイルシールをはめる。内側にだけシリコングリスを塗っておく
塩ビパイプをあてがい、ハンマーでコツコツたたいて圧入
こちらはカムシャフトのオイルシール。内側に斜めのスリットがあることで回転してもオイルが漏れにくくなっている
カムシャフトのオイルシールもパイプを当ててコツコツたたいて圧入

タイミングベルトの取り付け

ウォーターポンプやオイルシールの交換が終わったら、そのほかの部品も戻していく。サビや汚れを落としたカムプーリーやタイミングベルトプーリーを取り付け、新しいアイドラープーリー、テンショナープーリー、テンショナースプリング、そしてタイミングベルトを取り付ける。ベルトを掛けるときは、古いベルトから写したマーキングの位置と、カムプーリー、タイミングベルトプーリーの印がそれぞれ合うようにはめる。

キレイにしたカムプーリーなどを取り付ける。角度も元通り
古いベルトから合いマークを写す
アイドラープーリーとテンショナープーリー、テンショナースプリングも新品に
最初はテンショナースプリングが一番伸びた状態で固定する
ベルトを掛ける。カムプーリー、タイミングベルトプーリーの合いマークとベルトの印が一致すればOK

このベルトの位置合わせで苦労する、といった声も見受けられたが。まずは、クランクプーリーからベルトを掛けて、そこから時計回りに、テンショナープーリー→IN側カムプーリー→EX側カムプーリーと位置を合わせて、最後にガイドプーリーに滑り込ませるようにするとカンタンに取り付けることができた。なにを隠そう、整備書にそうやれと書いてあったのだ。

ベルトやプーリーへのマーキングは、必要ないと思う人もいるだろう。たしかにカムシャフトの角度もクランクシャフトの角度も分かっているので、理論上はマーキングしなくても問題なく作業できる、はずではある。ただ、実際にひと山ずれてやり直しになったケースも見たことがあるので、DIYならなおのこと、惜しむ手間ではないと思う。

ベルトを掛けたらクランクを2回転回して、そのときにカムプーリーの角度が最初の位置になっていることを確認(ベルトの合いマークはずれていてもOK)。問題無ければさらにクランクを1回転と6分の5回転させて、指定の位置に合わせたら、テンショナープーリーでテンションを掛けた状態で固定すればOK。これでタイミングベルトの装着は完了だ。

クランクプーリーを取り付けて2回転させる。このとき最初の位置関係になっていればOK。さらに1回転と6分の5回転させた位置でテンショナープーリーのボルトを緩め、ベルトにテンションを掛けたところで締め直す

ヘッドカバーをきれいに洗浄

ヘッドカバーやベルトカバーを戻していくが、その前にヘッドカバーなども洗浄する。ヘッドカバー洗浄するのは結構カンタンで、「サンエス K-1」という万能洗剤につけ置きすればびっくりするぐらいキレイになる。

ただし、ヘッドカバーがすっぽり入る大きさの容器が必要。かといって大きすぎると、それだけ洗浄液をたくさん用意する必要があるので、ちょうどいいサイズがほしい。でもって見つけたのが、システムコンテナBOX #22というサイズだ。これがNA8Cのヘッドカバーを入れるのにはちょうどいいサイズで、価格も手ごろだった。

システムコンテナBOX #22というのが、NA8Cのヘッドカバーを入れるのにピッタリだった。が、この後つけ置きした写真を撮り忘れた

サンエス K-1はお湯で使う方がいいらしいが、駐車場ではそんなにたくさんのお湯は用意できないので、家にある鍋を集めてお湯を沸かしたら、足りない分は水道水でまかなって、ぬるま湯程度にはなった。あとはつけ置きして2時間ほどしたらブラシで磨けばキレイになる。表面にはうっすらアルミのサビが浮いていたが、その辺りもすっかりキレイになった。

洗剤分をキレイに流してよく乾かしたら、新しいガスケットを付けてエンジンに付ける。今どきのクルマはこのゴムのガスケットだけで大丈夫らしいが、NAロードスターの場合、主に角の部分に液体ガスケットを塗る必要がある。

キレイになったカムカバーに新しいガスケットを付ける
古い液体ガスケットをキレイに削り落としたら
新しい液体ガスケットを塗ってからヘッドカバーを付ける

ヘッドカバーが付くとすっかり見慣れたエンジンの風景だが、ヘッドカバーもキレイになって気持ちがいい。

せっかくヘッドカバーを外したらバフがけしてピカピカにしたい気持ちもあったが、実は前のロードスターで挑戦したことがあって、途中で挫折したので、もうやらない。鋳物のざらざらした肌を消すのは、かなり大変なのだ。

ヘッドカバーが付いて、見慣れた姿に

曲がったラジエターのフィンを直す

あとはリビルトのオルタネーターや、前回オーバーホールしたパワステポンプなどを戻して、ファンベルトを取り付ける。

そしてサーモスタットも新品にし、ラジエターやホース類を戻せば完了だ。

オルタネーターなど補機類を戻す
ファンベルトも新品交換
オルタネーターにつながるB端子のカバーがボロボロなので交換
すでにB端子カバーは廃番だったので代替パーツ
サーモスタットも交換。どうせならローテンプサーモとかにすればよかったかも
オイルレベルゲージの柄が折れてしまったのでこれも新品に
あとはラジエターとインテークパイプを戻すぐらいだ

せっかくなのでラジエターもキレイにした。特に外側のフィンの部分。長年使っていると結構つぶれてしまっているところがあるのだ。でもってこのフィンを修正するための工具を買ってちまちまと直してみた。

使ったのはケイバのメタペンという工具。実はレース現場ですばやくラジエターフィンを修正するために作られたという工具なのだ。

このメタペンと先のとがったピックツールを使ってちまちまと修正。なかなかキレイに直すのは難しかったが、空気の流れと言う意味ではよくできたんじゃないかと思う。

ラジエターのつぶれたフィンを直すために……
メタペンという工具を購入。目新しい工具を見つけるとつい欲しくなってしまう
つぶれたフィンを1つひとつ手直し
元通りとは行かないが、まぁ空気は流れるようになったと思う
ラジエター横のすき間をふさぐスポンジテープも新品に
エアコンのエバポレーターの洗浄剤なども使ってコアを洗浄した

ラジエターを戻したら冷却水を入れ、パワステフルードを入れ、エンジンオイルも入れ替える。手元を調べて余っているネジもない。いろいろな部品を外す前に撮ったiPhoneの写真とも見比べて、配線のレイアウトなども問題ない。久しぶりに大物のDIYをやったが、メモ代わりにiPhoneで撮っておけるのはめちゃくちゃ便利だ。

やっとここまできた。エンジンオイルを入れ替え、冷却水を入れるたらついにエンジン始動だ

ついにエンジン始動!! ホントにかかるのか?

そして携行缶で新しいガソリンを入れ、充電しておいたバッテリーをつないだらいよいよ6年ぶりのエンジン始動だ。

セルがまわるのは確認済みだが、燃料がちゃんと吹くのか? 火花がちゃんと飛ぶのか? 燃料ポンプがダメかもしれないし、インジェクターが詰まっているかもしれない、コイルがダメになっている可能性だってある。内心は不安でいっぱいで神頼みしたい気分である。

エンジンが掛かってくれれば記念すべき1発目だ。せっかくなのでクルマ好きの娘と一緒にエンジンを掛けてみることにした。娘が免許を取る頃にはキーを回してエンジンを掛けるクルマなんてもうないだろうし。

できるだけ負荷を減らすため、エアコンなど電装系は全てオフ、ギアはニュートラル、クラッチを切りスロットルは全開。その状態でキーを回すとセルがまわった! 13年前のオデッセイバッテリー(関連記事参照)だが、ちゃんとまわってくれている。

が、エンジンはかからない。

ただし何年も掛けていなかったのだから、ここまでは想定の範囲内だ。

しばらく回しては少し休め、再度キーを回すのを何度繰り返しただろうか。最初はセルモーターの音だけだったのが、エンジンの音に変化が! そのままセルを回し続けると、その数秒後、ついにエンジンが始動した。最初は苦しそうだったが、スロットルを開けていたこともあって一気にエンジンがふけ上がる。

うっほー、いい音! 親しいライターさんに教えてもらったインテグラル神戸のマフラーの乾いたいい音!! 最高すぎる!! とかよろこんだのは筆者だけで、今時の静かなクルマしか知らない娘はその音に泣きそうになっていた。

といっても、違法なレベルの音量ではない、と思う。ちゃんと測定しないと分からないが、音量も以前と同じ程度の印象なので、たぶんマフラーはダメになっていないと思う。

ということで、そのままラジエターのエア抜きをして、ようやくエンジンまわりのリフレッシュ編については、ひとまず完成と相成りました。

長年不動にしていて、どこが壊れていてもおかしくない状況だっただけに、いろいろ不安だったものの、結果的には大きなトラブルもなく再始動までこぎ着けてひと安心。(実際にはその後ちょこちょこトラブルが出てますがその話は後日)。

ただし、エンジン以外にもリフレッシュしなきゃ行けないところは山積み。ロードスター復活計画はまだまだ続きます……。まぁ楽しいんですけどね。

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