パーソナルミールソリューション市場に関する調査を実施(2024年)~2030年度のパーソナルミールソリューション市場規模は2,885億円と予測、少量多品種生産で食材のアップサイクルにも貢献~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のパーソナルミールソリューション市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

ライフスタイルが多様化する中で、その中心にある食についてもパーソナライズが進んでいる。フードテック・キッチンテック(フードや調理とテクノロジーを融合させた技術)の進展に伴い、食材の買い出しや調理における利便性を追求するだけでなく、個人の健康状態や嗜好に合わせて食事を最適化することがウェルビーイング(幸福)につながると考えられている。また、DXで食のパーソナライズ(少量多品種生産)を実現することは、フードロスを削減するだけでなく、地域食材や未利用食材の認知度向上や活用にもつながり、地球環境への負荷軽減も期待できる。

パーソナルミールソリューション市場を構成するパーソナライズフード、献立(レシピ)提案アプリ、スマートキッチン家電は、いずれも市場導入期から成長期に向かう段階にあり、参入プレーヤーが少なく、対象となる商品やサービスも限定的ではあるものの、新しいテクノロジーへの関心や社会貢献意識が高いとされる若年層を中心に支持が高まっている。

パーソナライズフード、献立(レシピ)提案アプリ、スマートキッチン家電、フードデリバリーサービスの4市場から構成される、2022年度のパーソナルミールソリューション市場規模は事業者売上高ベースで948億円と推計した。

2.注目トピック~3Dフードプリンターの動向~

食品の製造に利用される3Dプリンターは「3Dフードプリンター(3DFP)」と呼ばれ、プリンターのインクに食品素材を用いる。その利点としては、高いデザイン性と安全性(ほとんど人手を介さず、衛生的であること)に加え、食べる人の好みや健康状態に合わせたパーソナライズ(少量多品種生産)が容易であることが挙げられる。また、食品のデザインやレシピを共有して同じ食材を使用する限り、どこで何度プリントしても同じ食品(食事)を安定的に製造することができる。

3DFPは食材をインク(ペースト状)にして利用するという特性から、廃棄(未利用)食材のアップサイクルや代替肉などのサステナブルフードの製造にも活用されるなど、環境負荷の低減に有効な食品製造装置としても注目されている。

3.将来展望

パーソナルミールソリューション市場は、構成する市場の多くが立ち上がって間もないことから現状は市場規模も限定的であるが、コロナ禍を契機として健康への関心がより高まり、ライフスタイルの変化や多様化に後押しされて食のパーソナライズが進んでいる。今後は、献立(レシピ)提案アプリとスマートキッチン家電、生協やネットスーパーなどのフードデリバリーサービスの連携が進み、キッチンテックプラットフォームの構築に向けた動きが加速すると考える。

パーソナルミールソリューションの市場規模は、事業者売上高ベースで2025年度には1,600億円に成長し、2030年度には2,885億円まで拡大すると予測する。

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