2日以内に迎えがなければ殺処分 平均寿命を大きく超えたシニア犬を引き取った理由 「ありがとうと見送る人間の1人になりたい」

保健所で「殺処分まで2日」の期限を迎えていた琴虎(ことら)

2024年初め、大型犬・グレートデンのオスメスが保健所に収容されました。2匹はいずれもシニア犬ですが、高齢の飼い主が死去し、身内などで引き取る人がおらず、行き場を失ったと言います。2日以内に保護団体からの迎えなどがなければ2匹は殺処分とも。

この話を聞いた保護犬猫カフェPETS代表は「引き取ります」と即答。しかし、この時期のPETSのキャパシティには限界があり、メスを引き取ることにし、オスは別団体が引き取りました。

長年一緒だった2匹を離してしまうのは心苦しいことでしたが、それでも期限寸前で殺処分を免れることができました。

「やっと会えた」と大きな体を震わせた

PETSと提携するボランティアさんが保健所からこのメスのグレートデンを引き出し、多くのワンコたちが楽しそうに過ごすPETSのカフェに連れてきた際、このメスのグレートデンはホッとした表情を浮かべ、その大きな体をブルブル震わせていました。

その姿に代表は涙があふれました。

「今まで怖い思いをさせちゃってごめんね。もう大丈夫だからね。ここではのんびり楽しくやっていこうね」

そう声をかけ抱きしめました。

散歩中、初めて笑顔を見せてくれた

後につけられた名前は「琴虎(ことら)」。まずは汚れていた体をシャンプーし、伸び切っていた爪を切ってあげました。

代表の思いはすぐ通じたようでしたが、亡くなった飼い主は高齢で散歩にも連れて行っていたのかは不明。散歩などの経験が乏しければ、この年齢からのトレーニングはかなり厄介です。

そんな不安を抱えながら散歩に連れ出してみると、琴虎は上手にスタスタ歩き、リードを引っ張ることもありません。代表のほうを振り返り初めてうれしそうな表情を見せてくれました。

不安だった散歩ですが、いざ連れていけば上手にスタスタ歩きました
そして琴虎は振り返って初めて笑顔を見せてくれました

「私、散歩大好き。あと、この道も大好き。連れてきてくれてありがとうね」。琴虎はそんなふうに言っているかのようでした。代表の胸に熱いものがこみ上げました。

迎えを待つように3日間耐えた

「元飼い主との悲しい別れを経験して、さらに殺処分なんてむご過ぎる」と琴虎を引き取った代表でしたが、グレートデンの平均寿命は一般に7歳ほど。後にわかった琴虎の推定年齢は10歳ほどでした。

現実的には、ここからの里親さんへのマッチングは難しいことは承知の上でした。そして、もちろんそう遠くない時期にお別れの日が来ることも……。

それでも代表は「天国に行くまでお世話をし『ありがとうね』と見送ってあげる人間の1人になってあげたいです」とお世話を続けていましたが、保護から約1カ月後のある日、琴虎の息がおかしくなってきました。

代表は「旅立つのかもしれない」と察しましたが、それから2日間、琴虎はずっと息を荒くさせ耐え続けていました。代表の目には、琴虎がまるで元の飼い主が近くに来てくれるのを待ち続け、それだけを頼りに生き抜いているように映りました。そして、3日目を迎えた日。琴虎は静かに虹の橋を渡っていきました。

代表は、お空の向こうで琴虎の飼い主さんと再会できていることを願い、そして旅立つまでの約1カ月、PETSの元で過ごしてくれたお礼を言いました。

「一緒に過ごしてくれてありがとうね。短い時間だったけど、琴虎と一緒に過ごせて本当に楽しかったよ」

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(まいどなニュース特約・松田 義人)

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