「反省してない」「いたるところに抜け道」与党「政治資金規正法改正案」に寄せられる国民の怒り

5月9日、政治資金法改正案の取りまとめに合意した、自民党の茂木敏充幹事長(中央右)と公明党の石井啓一幹事長(同左)(写真・時事通信)

5月9日、自民党・公明党の両幹事長は、政治資金規正法改正の与党案に大筋で合意した。

そもそもこの問題は、自民党議員が派閥パーティーの収入を正しく政治資金収支報告書に記載せず、さらに裏金として処理していたことが発端だ。

そこで、政治資金パーティーの支払者氏名などの公開基準をどうするのか、という点が注目されていたのだが、自公が取りまとめた内容によれば、《公開基準は、(現行の)20万円超から引き下げるものとし、改正法案に盛り込む》としか記述がない。

「公明党は5万円超に引き下げるよう求めましたが、自民党が10万円超は譲れないと難色を示したため、現段階では、具体的な金額は決定に至りませんでした」(政治担当記者)

さらに、政党から議員に渡される政策活動費について。現在は公開の義務はないのだが、二階俊博元幹事長が5年間で50億円を受け取っていたことに批判が集まっていたため、改正案が注目されていた。しかし、《いわゆる政策活動費については、支払いを受けた者がその使途を報告し、収支報告書に記載する》としか書かれていない。これについても、前出の記者は「金額や領収書、そしてどのように公開するのかなどが分からず、具体的な改革とは程遠い内容です」と話す。

そして、立憲民主党や日本維新の会など、野党が改正を主張している企業・団体献金の禁止については、その扱いについて、合意内容に盛り込まれてすらいない。

立憲民主党の長妻昭政調会長は、会見で「言っては悪いが、本当に低レベルの論議で、ゆるい合意すらできていない。政策活動費について、我々は全面公開することで、イコール廃止だと申し上げているが、いくつかのカテゴリーに分けて公表だという議論に終始して、非常にあきれている」と合意案を批判した。

日本維新の会の馬場伸幸代表も、会見で「今回の政治とカネの問題の原因である、企業・団体献金の禁止や政治資金パーティーをどうするかなど、本丸の話をしなければ、自民・公明両党で合意した内容を提案されても何の感想もない」とはねつけた。

こうした自民・公明の改正案について、ニュースのコメント欄には、辛辣な意見が次々に寄せられている。

《なんとか、一円でもちょろまかそうとしてますね。 普通のサラリーマンはガラス張りなんですよ。 なんとかしようとしても税務署の追求があるわけですよ。 表向きは厳しくしたところで 領収書なんかいくらでも偽造できるし 金さえ積めば病院の診断書だって偽造できる。 貴方たちには税金つぎ込んでるんだから 正直になりましょうよ》

《政治資金パーティー券購入者の公開基準の引き下げ、公明党は5万円超から、自民党は10万円超からと折り合いがつかないらしいが、この期に及んで、揉めるところはそんなところではないでしょ。何故1円から公開しないのだろうか? それも自民党が5万円といっているのならまだしも、こんな大きな裏金事件を起こした張本人がこれでは、当然反省もしていなければ、政治資金規正法の改正もまたまたザルだらけに終わるのだろうな。もうこんな与党は懲り懲りです》

《『「政策活動費」は大まかな使途を記すことを義務付ける。政治資金パーティー券購入者の公開基準は現行の「20万円超」から引き下げる。』「大まかな使途」など曖昧そのものです。それに裏金問題の舞台となったパーティーそのものを禁止するものではなく、パーティー券の公開基準を「20万円超」から引き下げるという骨抜きそのものです。要するに、いたるところに抜け道を残しておくことで合意したということだと思います》

前明石市長の泉房穂氏は10日、自身のXに、

《『政治資金規正法改正、自公が与党案に合意。政策活動費公開など』とのニュースだが、企業団体献金にも手をつけず、やったフリだけの開き直りの与党案。にもかかわらず、マスコミは与党の動きを批判もせずに垂れ流し。国民よ、与党にベッタリのマスコミに騙されてはいけない!》

と投稿し、与党案とともにマスコミ批判を展開している。

自民党のベテラン議員秘書は「与党案は見直したほうがいい」とし、こう続ける。

「政治資金パーティー券の購入者氏名の公開基準を、現行の20万円超から公明党案の5万円超に変えると、名前を出されたくない人がパーティー券の購入を控え、『単純計算だとパー券収入が4分の1に減るから、嫌だ』という論理なのでしょう。しかし、パー券の購入者氏名の公表については『1円以上、すべて公開でいい』という自民党議員は、意外かもしれませんが、けっこういますよ。だから、すべて公開すればいい。自分たちが招いた政治とカネにまつわる国民の不信感を払拭する気があるなら、野党案を相当部分、飲む必要があるのではないか。国民からの信頼を取り戻すよりもカネが大事、というなら、与党案を押し通してみればいいだけのこと」

今後、与野党がどのように折り合いをつけるのかが注目されるところだが、改正案を読む限り、岸田文雄首相が本気で取り組んでいるといえるのか、甚だ疑問だ。

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