安平「五輪で感動を」 ハンド男子、日本の司令塔 初の8強入りへ意欲

公開練習で調整する安平選手=味の素ナショナルトレーニングセンター

  ●ふるさと氷見に恩返し

 パリ五輪に出場するハンドボール男子日本代表で、司令塔の安平光佑選手(RKバルダル、氷見市出身)が10日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで強化合宿に臨んだ。元日の能登半島地震では自らも被災。故郷の復興への願いを胸に「五輪で感動を与えたい」と使命感をにじませ、日本男子で初のベスト8入りへ意欲を示した。

 「味方を生かすプレーでゲームをコントロールする。長所であるスピードを磨き、五輪を通して競技をメジャーにしたい」。五輪開幕まで2カ月半に迫る中、23歳の安平選手はチームの中核を担う自覚は十分だった。

 五輪の舞台は自身の夢であるとともに、震災で苦しむ故郷に希望を届ける場にしたいとの思いがある。

  ●元日、実家で被災

 元日の地震発生時は家族そろって氷見市内のすし店で食事をしていた。津波を警戒してすぐに山へ駆け上り、自宅は2日間断水した。「自分も災害に遭ったので気持ちや大変さが分かる。スポーツで元気を与えられたらいい」と心を寄せる。

 小学1年でハンドボールを始め、競技未経験ながら熱心な父哲治さん(49)と練習し、力を伸ばした。氷見高では高校3冠を成し遂げ、「氷見に育てられてきた。少しでも恩返ししたい」と語った。

 さらなる成長を求め、ハンドボールが盛んな北マケドニアで腕を磨いている。172センチと小柄ながら、「身長が小さいのも強みになる」と自信たっぷり。日本代表のカルロス・オルテガ監督は「非常に素晴らしい選手。決断力があり、アタックも優れている」と評価した。

 安平選手は1月のアジア選手権で試合中に腰の骨を痛めたものの、「完治した。コンディションはいい」と強調した。全24選手が参加した合宿で、ひときわ報道陣の注目を集めた日本のヒーロー候補は五輪に向けて「欧州のチームを倒したいとの思いで欧州に行っている。五輪1次リーグを突破するため、2勝は絶対したい」と力を込めた。

 故郷の声援に感謝し、「地元の人たちに応援されるのは幸せなこと。欧州でのプレーが終わった後に、少しでも富山のチームでプレーしたい」と胸の内をのぞかせた。

 安平選手は12日までの合宿後、所属チームに戻る。パリ五輪の最終メンバーは6月上旬に最大17人が発表される予定となっている。

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