「恐怖しか感じなかった」人類史上初の”291mジャンプ”に成功した小林陵侑。滞空時間「8秒」という異次元の世界を生んだ挑戦の舞台裏が公開!

人類の限界を超える勇猛果敢なチャレンジは、いかにして実現したのか。その舞台裏がドキュメンタリー映像として公開された。

去る4月24日(現地時間)、ノルディックスキージャンプ日本代表の小林陵侑が、アイスランド北部アークレイリにあるフリィザルフィヤットル・スキーリゾートの雪山に特設されたジャンプ台で、291メートルという驚異の飛距離を叩き出す世界新記録を樹立。従来のワールドレコード253.5メートルを、なんと37.5メートルも大幅に更新する大ジャンプに成功した。

2022年北京五輪の男子個人ノーマルヒル金メダリストが、人類史に残る大偉業を成し遂げた。今回のチャレンジのために制作されたジャンプ台の高さは360メートル、最大36度の勾配で下降する特別ステージが用意された。昨年11月24日に東京・港区に開業され、大阪市の「あべのハルカス」を抜いて、日本一高いビルとなった「麻布台ヒルズ森JPタワー(地上64階)」の高さが330メートルであることを考えると、小林のスタート地点はそれよりも大きく上回る。スタート台まで運ぶリフトは存在せず、日本人ジャンパーはスキー場のリフトで中間地点まで行き、そこから雪上車で運命のスタート台まで移動した。
小学3年生でスキージャンプを始めた小林は、「今でもシーズンが始まると、一番最初に飛ぶラージヒルでかなりの恐怖を覚えます。もちろん、フライングヒルはそれ以上に怖い。同じ競技なんだからやることはそれほど変わらないだろう! って思う方もいるでしょうけど、僕たちの中では別競技に近いくらいやることが変わってきます」と話し、普段のスキージャンプとはまったく異なる”無謀な挑戦”だと強調。「ましてや見知らぬ土地。恐怖しか感じなかったです」と、当時の心境を振り返った。

最初は慣れるのに精一杯だったというが、徐々にジャンプの感覚を掴んできた。そして、「最後に飛んだ2本で最高のパフォーマンスができました」と、自画自賛するほどの超絶飛行を披露。スキージャンプ史上最長となる飛距離291メートル、滞空時間8秒という人間の限界を超えたチャレンジを見事に完遂した。

「こういったことがやりたくてこのチームに入ったので、今その夢が叶いました。最高のチームに恵まれたし、レッドブルじゃなければできなかった挑戦。またいつかチャレンジしたいです!」

小林のスーパージャンプもさることながら、プロフェッショナルなスタッフが一から作り出した超巨大なジャンプ台のスケールも圧巻。まさに命懸けと言える、文字通りの世界最跳スキージャンプだった。

構成●THE DIGEST編集部

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