再開発に反発する理由は、立ち退きを強いられる可能性? 小田原少年院跡地周辺「1号市街地」巡り住民ら反対署名

2019年に閉鎖した小田原少年院跡地=22年2月

 都市計画区域の線引き見直しで神奈川県小田原市が小田原少年院跡地(同市扇町)周辺の住宅街を優先的に再開発を進める「1号市街地」に指定する方針を巡り、周辺住民らが10日、再開発に反対する署名757筆を市に提出した。市は少年院跡地の再開発構想を掲げており、周辺整備で立ち退きを求められる可能性もあることから、住民らは「再開発は住民の声をよく聴いてほしい」と訴えている。

 県は2025年に都市計画を見直す方針で、市が具体的な開発エリアや規制エリアを定める線引きの原案を今年6月ごろまでに作成し、県に提出するとしている。

 今回の見直しで市は再開発の優先度の高い「1号市街地」に扇町・城山地区の住宅地約10ヘクタールを新たに指定する方針。指定による規制緩和などはないが、民間業者に対する再開発計画への後押しともなり得る。

 指定エリアのうち少年院跡地では市が「ゼロカーボン・デジタルタウン」構想を進め、城山地区では約2ヘクタールに地元の学校法人がマンションや高齢者施設などを整備する構想を立てている。いずれの構想も対象地は住宅密集地で道路拡幅が見込まれ、住民が立ち退きを強いられる可能性がある。

 昨年12月に学校法人が実施した住民向けの説明会では住民が「なぜ自分の土地を明け渡さないといけないのか」と反発。さらに市が1号指定の方針を表明したことで「市が再開発に向けた露払いをしようとしている。何としても止めないといけない」(男性住民)と危機感が広がった。

 住民有志は今年4月、市に1号指定を断念するよう求める署名活動を開始。当初は500筆を目標としていたが、市内全域から700筆以上が集まった。

© 株式会社神奈川新聞社