プロ馬券師・真田理さんを直撃! 10年前のヴィクトリアMデーにWIN5で1億4613万円をゲットした“億り人”の「勝利の方程式」

ヴィルシーナの馬主・佐々木主浩もご満悦(C)日刊ゲンダイ

10年前のヴィクトリアマイルは、11番人気のヴィルシーナが逃げ切った。指定5レースの単勝を当てるWIN5はその日、9番人気→7番人気→6番人気と荒れ模様で展開。とどめが11番人気とあって、払い戻しは1億4613万6380円。この大波乱を見事に仕留めたのが、競馬サイトなどでおなじみのプロ馬券師の真田理さんだ。実は億超えWIN5の的中は2度目。“億り人”はどんな生活で週末を迎えるのか。

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“億り人”は、レース実況のリプレーやパトロールビデオを何度も見返し、全レースにおける出走馬すべての有利、不利や馬場の特徴などを徹底的にチェックする。それが週前半の仕事だ。

「特に重要なのが、大きく4つに分けられる不利のチェックです。馬群に包まれる、出遅れるなどの『物理的不利』、掛かる、馬群や砂を嫌がるといった『気性的不利』、ペースや馬場差など『目に見えない不利』、そして追わない、折り合えないという『騎手の不利』です。もうひとつ大切なのは、馬場のチェック。一般に芝は、良馬場なら開催前半は先行有利、内有利で、後半になると差し有利、外有利に変わります。各馬の有利不利に加えて、コースや馬場の特徴、馬のクセ、騎手の動きなどを勘案し、加点や減点してデータベースに入力するのです。最後に私のチェックした馬とスタッフのチェックした馬を、全員で見直す作業をして情報を共有しています」

チーム真田は、社員1人とアルバイト2人の合計4人。月曜は社長が休み、スタッフ3人は火曜に休む。月曜から水曜にかけて4人で前の週のレース映像を吟味する。こうしたレース分析は、競馬記者はもちろん、ファンも少なからずやっているだろうが、スゴイのはそこからだ。

■自作ソフトを拡張しながらデータ入力

「各馬が走った走路は内ラチから何頭目か、その日の伸びる馬場や伸びない馬場の範囲は内ラチからどのエリアかなどもデータ化することで、距離ロスを具体的に算出しています。競馬ソフト・ターゲットでカバーできない部分を自分でカバーしているのです。ソフトですか? 自作です。馬場差と平均タイム、不利を換算したタイムなどを入力すると、自動的にスピード指数を算出。必要があれば、その都度拡張しているので、いまは入力項目が多く、なかなか大変です」

プロ馬券師というと、どこか怪しいイメージがつきまとうが、仕事として真剣に競馬に向き合っているのが分かる。そんなメモの一部を紹介しよう。

5月5日新潟10R駿風S(芝千直) ⑤着2番ハーモニーマゼラン 物理的不利、目に見えない不利。

〈津村騎手らしく、一旦下げて外めのポジションを取る競馬。ところが、前が詰まり、ほとんど追えずにラスト50メートルくらいでやっとバラけて追えた。不利換算は0秒3前後とみるので、スムーズなら勝っていた可能性あり。次走以降も直線1000メートルで津村騎手の継続騎乗なら、枠順不問で狙い目になる。オッズ的な観点からは内枠がいい〉

同じ日のNHKマイルCでは、⑤着4番イフェイオンについて「物理的不利」「クセ・特徴」としてこんな記述が。

〈不器用さがあり、馬群を捌けないタイプ。前走は直線で前が壁になり、一旦失速する不利あり。馬場的に内めの枠は向いたが、馬群を捌けない点で向かなかった。現状は長い直線コースで多少時計のかかる馬場が理想。入れ込みクセあり注意〉

これだけ詳細な分析をすべての馬に行えば、時間がかかるのは当然だろう。

「月曜から水曜までは9時から17時勤務で、週末のレースに向けて予想に熱が入る木曜は24時まで、さらに金曜と土曜はレース直前の入念な検討が必要で26時まで仕事をしています。そして日曜は最終レースが終わり、17時解散。週末は全員参加でやっていますが、週の前半はリモート勤務や交代で休暇を取れるようにするなどして、ブラックな体質にならないように努めています。これだけの膨大な作業をこなせるのは、スタッフあってのことですから」

その地道な仕事ぶりが実ったのが、1億円を超えたWIN5を2回的中させたことだろう。1度目は2013年4月28日。フェノーメノが勝った天皇賞・春の日だ。3レース目に16頭立て15番人気の超人気薄が突っ込んだことで、WIN5は1億3372万2760円にハネた。2度目は前述の通りで、1億5000万円近い特大馬券だ。

わずか1年ほどで、一般的なサラリーマンの生涯年収に匹敵する金額を手にしたことになる。“仕事の成果”は絶大だ。なぜ超大穴WIN5をゲットできたのか。

「一般の方が用意する週末の競馬資金は、2日分で1万から3万円くらいだと思います。しかし、その範囲でWIN5を購入しようとすると、どうしても点数を絞って穴馬を消さざるを得ません。そこがミソ。WIN5で買えない馬は、不当に人気が下がる分、期待値が上がります。そこで、私は手広く勝負するため、通常の馬券とは別にWIN5用に毎週25万円前後を用意していたのです」

WIN5の資金を減らし通常の馬券に

西日本の有名大付属高校を卒業後は、建築と経営の専門学校へ。その学生時代にスロットを覚えて、7年弱で約1億円を稼ぐと、06年から競馬に転じた。詳細なレース分析から、基本スタンスは本命党で、レースや馬を本人やスタッフが「診る」と表現するのは、「儲かる競馬への治療の意味を込めているのです」。1億円の軍資金をベースに、点数を絞って確実に儲ける一方、高めが期待できるWIN5ではレース次第で手広く流す柔軟性も併せ持つ。その後、億超えは?

「数百万円は時々、的中していますが、あの2本以外に億超えはありません。3年くらい前からWIN5の配当が下がっているように感じるので、WIN5資金は10万円程度に減らし、その分を通常の馬券資金に組み込んでいます」

最近のヒット馬券は、たとえば4月21日の福島7R.3歳未勝利、芝千二を勝ったニシノアヤカゼだ。その根拠は、2月の小倉戦にあった。

「好スタートを決めながら鞍上が控えたことで、やや折り合いを欠いて位置を下げた上、勝負どころでは内ラチから7頭目の大外回しでした。当時は内有利の馬場で、距離ロスとコース取りの不利は大きかったものの、0秒5差⑤着。私のデータでこの不利を計算すると、ロスタイムは1秒5と算出。スムーズなら楽勝していた可能性で、次走に期待したのですが、そこは出遅れて参考外の結果。それでもう一度、福島戦で狙ったときは、陣営から『今回は前へ』といったコメントもあり、小倉戦⑤着くらい走れば足りるメンバー構成で単複と馬単で勝負。ゴールは首差でヒヤッとしましたが、4番人気と1番人気の組み合わせで馬単3190円はおいしかったですね」

単勝980円、複勝210円も含め、「かなり儲かった」と笑う。競馬に転じて18年。不利馬に好走条件が重なったとき、ドンと勝負する。馬券作戦は玄人筋で、決して無理筋ではない。

■今週の新潟で石橋脩騎手を狙う理由

さて、今週は東京、京都、新潟の3場開催。注目は、GⅠが行われる東京ではなく、京都と新潟だという。

「まず今開催の京都ダートは通常より差し馬に優勢な馬場で、コーナリングの上手な馬の好走が目立ちます。そこで注目は日曜の京都11R・栗東S(ダ千四)のスマートフォルスです。いまの馬場にマッチしたタイプですからGⅠの前にぜひ注目してほしいと思います」

新潟は?

「最近の新潟は開催後半で外差しの馬場になっても、ペースが緩むと、前と内の馬が上位入線するケースが意外とあります。その傾向を踏まえると、馬場読みに定評がある石橋脩騎手と岩田康誠騎手です。特に石橋騎手は昨年、そんな馬場で多くの馬が外めに持ち出す中、内を突いて好走を重ねていたので要注意。特に前走で不利を受けた馬に石橋騎手が騎乗したらおすすめです」

ちなみに15年に税務署に税金未納を指摘され、延滞税などを合わせて1億2774万円を納税。以来、毎年きちんと確定申告している。「大勝したときはスタッフ3人に臨時ボーナスを支給。できるだけ希望額を払います」というから太っ腹だ。

さあ、あなたもチーム真田を見習って、夢の馬券生活を!

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