元宝塚トップ和央ようか「年を重ねたいまだからこそ」『ベルばら』フェルゼン役や『ドラキュラ』への思い

和央ようか 撮影/三浦龍司

宝塚歌劇団・宙組の元トップスター、和央ようかさん。トップ在任期間は6年を超え、平成以降の最長記録だ。現在は夫で世界的作曲家のフランク・ワイルドホーンさんとハワイで暮らし、日本と行き来しながら活動の場を広げ続けている。芸能生活35周年を迎えた彼女の素顔と人生の転機、「THE CHANGE」とは。【第5回/全5回】

“いまのフェルゼンのほうが好き”と思えるよう演じたい

宝塚歌劇団、宙組の元トップスター和央ようかさんは、宝塚を退団した後も舞台に立ち続けている。退団前と退団後で、舞台に対する意識に変化はあったのだろうか。

「自分の意識は変わらないですが、肩の荷はおりました。舞台に立つときは自分というより周りのことが気になっていましたから。でも同時に、賑やかだったのが一人になって、少し寂しい気持ちがあります。みんなで一緒に頑張っていたあのころは、やっぱり楽しかったですね」

そんな懐かしい“賑やかさ”を再び感じられる公演を、和央さんは控えている。’24年5月、6月に大阪・東京・愛知にて上演予定の『ベルサイユのばら50〜半世紀の軌跡〜』。宝塚の歴代レジェンドスターたちが勢揃いするなか、和央さんはマリー・アントワネットの愛人、フェルゼン(スウェーデンの伯爵)を演じる。

「あのときの若さはないけれど」フェルゼン役への思い

「私が演じた『ベルサイユのばら フェルゼンとマリーアントワネット編』から、もう20年以上たっているんですよ。同じ衣装を着て、同じ踊りをする自分を褒めてあげたい(笑)。でも、年を重ねたいまだからこそ、自然に出るものがあると思うんです。

あのときの若さはないけれど、さまざまな人生経験を経て、当時なかったものが出てきたらいいな。私は常にいまの自分を好きでいたいと思っているので、“いまのフェルゼンのほうが好き”と自分が思えるよう、演じたいですね」

常に「いまの自分」を更新し、愛し続ける和央さん。最後に、今後の目標を聞いた。

「舞台に、モデルに、いろいろなことに挑戦していきたいです。一番大切で自分の軸である、結婚生活を保ったうえで。 あと目標といえば、大好きなミュージカル『ドラキュラ』にもう一度携わることかな」

和央ようか 撮影/三浦龍司

’11年と’13年に和央さんが主演のドラキュラ伯爵を演じた、ミュージカル『ドラキュラ』。宝塚歌劇団を退団し、初めて男役を務めた作品だ。

「演じた作品をまた、と思うことはあまりないのですが、『ドラキュラ』に対しては特別な気持ちがあります。繊細で、美しくて、残酷で。夫のフランクさんが手がけた曲も本当にステキで、大好きな作品なんです。“無償の愛”という、いまもこれからの時代にも、忘れてほしくないテーマ。主演とは限らず、いつか何かしらの形で作品に携わるのが、夢ですね」

気取らず、自然体で自身の「男役」を創り上げていった和央ようかさん。舞台での円熟した姿を、多くのファンが見たいと望んでいることだろう。

和央ようか(わお・ようか)
大阪府出身。74期生として宝塚歌劇団に入団し、雪組に配属。1998年宙組創設メンバーとして組替えすると、’00年にはトップスターに就任。’06年『NEVER SAY GOODBYE- ある愛の軌跡-』で退団後は、舞台だけでなくモデルとしても活動する。’15年に作曲家のフランク・ワイルドホーン氏と結婚し、現在は米国と日本を行き来する生活。そのライフスタイルも注目を集める。

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