水郡線振興へ事業支援 全線開通90年 茨城県、誘客を促進

全線開通90年を迎えるJR水郡線

茨城県はJR水郡線の沿線地域振興へ向け、民間によるイベントや旅行企画など新たな事業展開を支援する。12月に全線が開通し90年の節目を迎える一方、沿線の中心となる県北地域は人口減少が進み、厳しい経営環境が続いている。地域資源の活用で魅力を掘り起こす取り組みを促し、観光誘客や地域交通の維持を目指す。

県は「水郡線活性化支援事業」として、本年度予算に1900万円を計上。全線開通90周年を記念したイベント開催に加え、各駅を中心としたおもてなし企画などの提案を民間から募り、開催費などを補助する。

記念イベントは「水郡線フェス」(仮称)などと銘打ち、同線の駅周辺を会場に鉄道、沿線グルメ、県北地域に点在する観光名所が楽しめる催し開催を促す。袋田の滝やリンゴ、ブドウなど豊富な地域資源を活用し、新しい旅行スタイルを提供するツアー商品の開発も後押しする。

同線では土日祝日に、列車内へ自転車を持ち込める「水郡線サイクルトレイン」を導入。2023年10月から利用可能駅を上菅谷-磐城石川駅間と上菅谷-常陸太田駅間の全31駅に拡大し、サイクリング需要の取り込みも進めている。

こうした取り組みをさらに加速させるため、駅を中心としたおもてなし企画として、サイクルトレインの利便性向上につながる提案も募る。季節に応じた車両装飾や駅での歓迎企画なども視野に入れる。

沿線市町や団体などが開催する催しを「応援事業」として承認。催しに参加した同線利用者向けサービスの一部を県が支援する。

JR東日本は23年11月、22年度に利用者が少なかった地方路線の収支を公表。水郡線の県内区間では、常陸大宮-常陸大子間と常陸大子-磐城塙間でそれぞれ赤字となるなど、路線維持に向けた利用拡大策は喫緊の課題となっている。

県交通政策課は「沿線の資源を生かし、25年度以降も継続できる企画を提案、実施してもらいたい」と呼びかけ、開通100周年を見据えた利用促進を進める考えを示した。

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