スポーツは地域に新たな活力や価値をもたらす。選手が存分に活躍できる環境を整え、地域に根差し、市民に愛されるチームに育てていくことが大切だ。
自動車部品王手、デンソー(愛知県)の運営する女子バレーボール部「デンソーエアリービーズ」が同県西尾市から、郡山市に練習や試合の拠点となるホームタウンを移転すると発表した。10月に開幕する国内最高峰の新リーグ「SVリーグ」に参戦する。
デンソーが2008年、田村市に子会社デンソー東日本(現・デンソー福島)を設立した縁で、エアリービーズは17年に県、郡山市とそれぞれホームタウンパートナ ー協定を締結、第二の本拠地として公式戦などを行ってきた。
移転は復興支援が最大の理由という。チーム誕生から50年以上、ホームタウンとしてきた西尾市を離れるのは大きな決断だ。日本代表に登録された選手も在籍する。トップレベルのプレーを通して、バレーボールの魅力や感動を県民に伝えてもらいたい。
チームは今後、数年かけて郡山市に練習拠点となる自前の体育館や事務所などを整備する方針だ。
これまで郡山市で夏合宿などの実績はあるものの、本拠地となれば選手が常に練習に集中し、充実した生活を過ごせる環境が求められる。市はチームの意向や構想を踏まえ、練習拠点の整備などに積極的に関わり、ホームタウンとしての役割を果たしてほしい。
SVリーグは男子10チーム、女子14チームで構成する。ホームアリーナの規模や売上高などの参加基準を設定している。初年度は売上高4億円以上、3千人以上が入場可能な本拠地を定める―などが参加基準だったが、基準は今後引き上げられる予定だ。
チームは、現在改修中で約3千人収容の宝来屋郡山総合体育館をホームアリーナにする。改修で観客席数は5千人に増え、基準引き上げにも対応できる見通しだが、年間約20試合のホーム戦で毎回5千人を集めるのは容易ではない。
県内のファン拡大とともに、対戦相手の地元からの誘客にも力を入れる必要がある。市外から多くの人が訪れれば、飲食店や宿泊施設などへの波及効果も大きいだろう。市や経済団体はサッカーのJリーグなどの取り組みを参考に集客に知恵を絞ってほしい。
リーグの参加要件には15歳以下、18歳以下のチームを保有することが定められており、県内の中高生の育成、技術向上が期待できる。子どもたちが夢や目標を持ち、取り組める環境づくりも重要だ。