いわきで農業用井戸の水位低下、夏井川の工事影響か 県が調査へ

収穫のピークを迎えるトマトには、水不足が原因とみられる生育不良が確認されている(上)河道掘削や河川の拡幅工事などが進められている夏井川=いわき市小川町(下)

 いわき市小川町で農業用井戸の水位が下がり、水不足による作物の生育不良が農家で発生している。近くを流れる夏井川は東日本台風で被災し、大規模な災害復旧工事が行われていることから、県は井戸の水位低下と工事に因果関係があるかどうかを確認するため調査に乗り出す方針だ。

 井戸水を使い、夏井川近くでトマトやネギを栽培する農家2軒で水不足が確認されている。トマトを栽培する農家の根本一仁さん(33)は水不足に悩まされており「これからは大量の水が必要になる時期。どうすればいいのか」と表情を曇らせる。根本さんによると、4月下旬ごろから水位低下が始まったという。これまでも、水位が低下することはあったが、いずれも数日で回復する一時的なものだったという。

 県いわき建設事務所は、井戸が水位低下している状況を把握しており、井戸の水位変動の状況などを確かめる考えだ。担当者は「確認のための調査が必要」と話した。夏井川では、河道掘削や河川の拡幅など大規模な改修が進められてきたが、付近にある農業用井戸で水位低下が発生したのは初めてという。

 福島高専都市システム工学科教授の菊地卓郎氏(46)=水工学=によると、河川に限らず土木工事に伴って井戸の水が出にくくなる「井戸枯れ」が発生することはあるという。「河道掘削によって川に水がたまり、井戸の地下水位が低下する可能性はある」とした上で「一時的なことなのかどうか、まずは現況を観測することが必要」とした。

 根本さんは約20アールのハウスで冬春トマトを栽培しており、7月上旬までは収穫が続くという。通常は1日当たり6千リットルの水を使用するが、現在は十分な水を確保できないため、苦肉の策として3分の1程度に減らしている。

 すでに水不足が原因とみられる障害が発生し、トマトの下部が腐る「尻腐れ」や、生育が止まる「芯止まり」などが確認されている。根本さんは「(大量の水が必要になる)これからの時期が不安だ」とこぼした。

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