ブラジル日本商工会議所協賛企画=現地で活躍する日系企業の今(28)=日本企業と密接な関係持つアベ法律事務所

アベ法律事務所のロゴマーク

 「ブラジルで活躍する日系企業の今」を紹介する本連載の第28回目は、アベ法律事務所のアベ・マルコス弁護士と同事務所ジャパンデスクのチーフ、マルセロ・カルガノ弁護士に話を聞いた。同事務所はブラジルに進出している日本企業やその子会社、関連会社に長年サービスを提供している主要な弁護士事務所の一つである。日本語の窓口であるジャパンデスクから豊富な経験を積んだブラジルの弁護士でチームを編成し、日本の四大法律事務所や政府関連の主要団体とも連携しながら、安心感のある法律に関するフルサービスを提供している。

世界の法律ランキングの権威も認める実績

左からマルセロ・カルガノ弁護士とアベ・マルコス弁護士

 アベ法律事務所はアベ弁護士の専門とするM&A/コーポレート法をはじめ、税法、ベンチャーキャピタル、労働法、契約法、イノベーション・著作権・個人情報保護法、紛争解決、不動産、ウェルスマネジメントなどに関する法的アドバイスを提供している。大企業と中企業向けの法的サポートが中心であるが、ウェルスマネジメント分野では、経営者や大株主、上級管理職といった個人向けの税務計画や相続対策、資産の管理・運用、紛争解決などに関するサービスも提供している。
 同事務所が質の高い信頼できる安全なサービスを提供していることは、世界的な法律ランキングの権威である英国のチェンバーズ&パートナーズ(Chambers and Partners)のThe Chambers Brazil 2022「ブラジル地区優良法律事務所」にランクインしたことでも証明されている。その他にも「ラテンアメリカの優良法律事務所」や法の種類別に様々な賞を受賞している。

日本と同じ時間感覚での業務

 ブラジル有数の弁護士事務所が日本企業と長年パートナーシップを構築してきたのは、法務での実力と同時に「日本と同じ時間感覚での業務」が行われているからである。
 日本企業との密接な関係から設立されたジャパンデスクは、日本のビジネスマナーや日本文化を深く理解したブラジルの弁護士が高度な日本語コミュニケーションで応対するため、それが日本の顧客の大きな安心感につながっている。マルセロ弁護士は文部科学省の留学生として大阪大学で学び、「最初に学んだ日本語は大阪弁でした」と、気さくに日本語でのギャグまで交えるが、その完璧な日本語とスピーディーで細やかな応対は日本そのものである。
 また、同事務所は日本企業対応への豊富な経験を得るため、提携を結んでいる日本の法律事務所と交換教育プログラムを実施して、ブラジルから日本に弁護士を送り、日伯の弁護士や法律専門家の定期的な研修にも力を入れている。同時に、ブラジルについて知見を深めたい日本人弁護士も歓迎している。
 同事務所に所属する40人の弁護士は全員がフラットな関係で、それぞれの専門分野を活かして、顧客の法的業務のニーズに合わせて問題解決に取り組んでいる。

来客に応対するアベ弁護士とマルセロ弁護士

最新の法律経済情報「ブラジルビジネス法レビュー」

 最近は、クリーンエネルギーやカーボンクレジットに関するサービスの提供や、スタートアップ企業を含む日本のイノベーション企業のブラジル進出支援を始めた。
 同事務所が、駐日ブラジル大使館と他の法律事務所との協力により発行している「ブラジルビジネス法レビュー」では、新しい社会のニーズと絶えず変化するブラジルの法律や、経済界に関する最新情報を日本語と英語で提供している。日伯間を直接繋ぐというコンセプトから、インターネットでもアクセスできる。【参照】https://www.gov.br/mre/pt-br/embaixada-toquio/noticias/brazilianbusinesslawreviewvf.pdf

AIREで過ごす子供たち

移民した祖父母の苦労が重なり難民支援

 アベ弁護士はパンデミック中に仕事でアマゾン地域へ行き、行き場を失ったベネズエラ人難民が路上で寝泊まりして苦しんでいる様子に、かつて自身の祖父母たちが移民した当初の苦労を重ね合わせた。第2次世界大戦中に日本語禁止令が出された時、祖父は日本語書物を政府に没収されないために先頭に立って様々な本やレコードなどを地中に埋め、それが見つかって逮捕されたこともあったという。
 「日本人移民が苦労する中で、子供たちは教育を受ける機会を得て、ブラジルで活躍できるようになった。同じように、現代の難民や移民にもそのような機会のサポートが必要です」と話すアベ弁護士は、2020年に新しく入国した人々が新生活を始めるための最低限の体制を整えられるサポートを行うNGOのAIREを創設した。
 8LDKの一軒家をジアデマ市に購入し、現在はベネズエラ人とアフガニスタン人の難民に住居、食料、ポ語学習、就職活動、心理サポートなど基本的な生活を期限付きで提供している。
 事務所ではスタッフに社会的に脆弱な立場の人々をサポートする社会事業への積極的な参加を奨励している。複数のNGOで司法制度へのアクセスを無料でサポートする他、子供たちの音楽教育にも取り組み、プロとして活動する音楽家も誕生していている。(取材/大浦智子)

アベ法律事務所の概要正式名称:Abe, Rocha Neto e Advogados所在地:サンパウロ市設立年月:2007年従業員数:80名(内40名が弁護士)事業内容:法律に関するフルサービスサイト:https://abeadvogados.com.br/

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