【外国人労働者急増】共生社会を目指して(5月11日)

 建設、製造業などの深刻な人手不足を背景に、県内の外国人労働者が急増している。働きながら技術や知識を習得する技能実習生を中心に今後も増える見通しだ。少子化に伴い、外国人材に頼らざるを得ない事情が企業側にはある。県内産業の新たな担い手として国、県、市町村、雇用主は生活や労働環境に気を配りながら、多文化共生社会の実現にも努めてもらいたい。

 福島労働局によると、昨年10月末時点の外国人労働者は過去最多の1万1987人で、前年と比べて2059人増えた。増加率は20.7%で前年の4.2%を大きく上回っている。雇用主は過去最多の2328事業所に上る。

 外国人労働者のうち、技能実習生は4408人で全体の36.8%。ベトナム、インドネシア両国出身者が全体の約8割を占める。県国際交流協会によると、円安で日本の魅力にやや陰りは見えるものの、働く場としての人気は依然高い。新規雇用を考えている企業も多いという。

 実習制度を廃止して「育成就労制度」を新設する入管難民法などの改正案が今国会で審議されている。1年を超えて働くなどの条件を満たせば、原則禁止の「転籍」(転職)を可能とする内容だ。一部で問題化している劣悪な住環境や低賃金の改善につながり、外国人労働者の確保や定住者の増加が見込まれる。

 一方で、県内での受け入れを促進するには課題も多い。県内市町村長の8割は実践的な知見不足、言葉の問題、人的・財政的問題が壁となり、具体的な施策はないと、共同通信社が昨秋実施したアンケートに答えている。

 県は、企業向けの相談窓口を設けて対応している。日本国内への就職を希望する留学生と県内企業を橋渡しする初のオンライン合同相談会も今年度内に催す。

 県国際交流協会は外国人を対象に「防災」、ごみの出し方など「生活」をテーマにした講座や、「やさしい日本語セミナー」と題した企業の担当者向けの講座を開き、円滑な意思疎通を後押ししている。担当者は「外国人労働者の多くは若く、母国への発信力がある。県民との交流を望んでいる人も多い」と語る。文化や生活習慣の違いを理解する取り組みにも注力する必要がある。(古川雄二)

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