「日本で考えると珍しい」フランスの制度 移住した日本人女性が子育てで驚いたこととは

公園で遊ぶ河野佐和子さんと娘さんと夫のエルワンさん【写真提供:河野佐和子】

日本で出会ったフランス人の夫とともに、9年前にフランスへ移住した「さわ」さんこと河野佐和子さん。会社員として仕事をしながら、自身のYouTubeチャンネル「さわ フランス暮らし- Sawa France」で、フランスでの生活や子育てなどリアルな日常を発信しています。フランスで第1子を出産。4歳になる娘さんが通っている幼稚園は、フランスでは義務教育なのだそう。共働きが当たり前の国で、子育てにおいて大切にしていることはどんなことなのでしょうか。

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フランスの幼稚園は「昼食時間が長い」「週休3日」など日本との違いも

さわさんが現在暮らしているフランスでは、2019年の秋から、日本でいう幼稚園が新たに義務教育に加わりました。子どもたちは3歳になる年の9月から幼稚園に入園し、そこから義務教育がスタートします。

ささわさんの娘さんも、保育園を卒園した昨年の秋から義務教育がスタート。日本の幼稚園とは大きく異なる点があることから、さわさんは初めての登園を心配していました。

「日本では、3歳の子どもは保育園に通う年頃ですよね。保育士さんが優しく面倒を見てくれる『保育』というイメージがありますが、フランスの幼稚園はフランス語で『エコール』といって、これは日本語で『学校』という意味なんです。大人として扱うとまではいかないですが、保育園とは異なる環境で過ごすことになるので、本当に大丈夫なのだろうかという不安がありました」

そんなさわさんの心配をよそに、娘さんは意外にも大丈夫だったそう。「住んでいるところが小さな町なので、保育園に一緒に通っていた友達がみんな同じ幼稚園に行くこともあって、親の心配をよそに大丈夫だったようです」と、入園当時を振り返ります。

ただ、共働きが多いフランスならではの、日本とは異なる点もあるといいます。

「義務教育になった幼稚園は朝8時半から夕方の4時半までなんです。お昼はお金を払って、園内にある給食室みたいなところで食べさせてもいいですし、一度帰宅して食べてから、また登園することもできます。そのためお昼の時間が長いのですが、そのお昼の選択肢があるのは、日本とは大きく違うところだと思います」

園の運営や制度にも日本との違いがあるようで、印象的だったことをさわさんは次のように話します。

「娘もそうですが、夕方4時半に幼稚園が終わったあと、幼稚園内に日本でいう延長保育や学童のような、幼稚園の先生とは別の団体の人たちが子どもたちを夕方6時まで預かってくれる仕組みがあるんです。娘は5時半まで預かってもらっているのですが、ほとんどの子どもたちがこの制度を利用しているようで、日本で考えるとちょっと珍しいですよね」

また、幼稚園は週休3日、月曜日、火曜日、木曜日、金曜日しかなく、土・日曜日以外に水曜日もお休み。ただ、「両親そろって働いている家庭がほとんどなので、水曜日は学童に行く子がすごく多い」といいます。さわさんいわく、「日本よりも学童が根づいている気がする」そうです。

フランスでは義務養育となる初めての幼稚園。登園日のエルワンさんと娘さん【写真提供:河野佐和子】

自然の中での子育て さわさんが大事にしていること

現在、さわさん夫婦が住んでいるのは、山々に囲まれた自然豊かな田舎町。湖や山が美しい、自然豊かな場所に一度は住んでみたいと思っていた夫・エルワンさんの希望もあり、3年前の夏にパリから引っ越してきたといいます。

とはいえ、さわさんにとって、外国の田舎町での生活にはなかなか慣れなかったそう。

「私自身が比較的、街中で育ったので、ここはちょっと田舎すぎるかなと思ったりして、1年目は正直つらかった……。山間なので、秋冬ぐらいから毎朝、雲に包まれているような霧がバーッと出て、本当にどんよりした雰囲気になるんです。『私、ここで暮らせるのかな』と思っていたのですが、2年目に入り、冬が明けて夏に向かっていく季節になると緑が生い茂ってきて、湖も水質が透き通っていてきれいだし、本当に自然豊かになるんです。それを見たときに、『ここ、やっぱりいいな』って思い始めたんです」

新緑の季節に見られる山々の深い緑色と澄み切った空の青さ、湖畔に映る大自然のコントラストを知ったことで、2年目に見た冬の景色が違って見えたと回想します。

「冬定番のスキーをしたり、チーズを食べたり。そのときにできることを満喫して、暖かくなってから、暖かい季節を楽しめばいいと思えるようになりました。季節があることは当たり前のことなので、それを受け入れると『うん、悪くない』と思えるようになって、今はすごくこの町が好きですね」

そんな田舎町だからこそ、さわさん家族にとっては「合っている」と感じるそう。それは、人も交通量も多くて「疲れてしまう」パリとは異なり、ゆったりした空気に包まれながらのびのびと過ごせるから。

子育てにおいて夫婦が大切にしていることは、「自分たちがイライラしないこと」。さわさんいわく「これが我が家のベース」なのだとか。

「娘に対してもそうだし、夫婦間でもそう。やっぱりイライラしてしまうと、娘を強く叱ってしまったり、けんかしてしまったりします。なので、その要因を溜め込まないことが大事かなと思っています。たとえば、イライラの原因が仕事であれば、それを家族の時間には持ち込まないこと。そういうマインドリセットのような、感情を引きずらないことを、とくに娘に対しては日々意識していますね」

とはいえ、人間なので、そうなってしまったとしてもそれをひとつの学びとして、ありのままの自分を受け入れるようにしているというさわさん。お互いを思い合う心が、配信を通じて多くの人たちを魅了しています。

◇河野佐和子(こうの・さわこ)
北海道札幌市出身。慶應義塾大学在学中、第二外国語としてフランス語を勉強し、フランスの文化に興味を持ち始める。フランス語学習のために活用していた交流サイトで、のちに夫となるエルワンさんと出会い、結婚。大学卒業後は日本で会社員として働いていたが、9年前にフランスへ移住。パリから田舎町への引っ越しを機に、自身のYoutubeチャンネル「さわ フランス暮らし- Sawa France」で夫と娘との日常生活を配信している。

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