イスラエル、アメリカ供与の武器を「国際法に違反して使用した疑い」=米政府

アメリカ政府は10日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘で、アメリカから供与された武器を国際人道法に違反して使用した可能性があると発表した。

米国務省は、連邦議会に同日提出した報告書の中で、アメリカが供与した武器がイスラエルが果たすべき義務と「矛盾する」方法で使用されたと「評価するのは理にかなう」と指摘した。報告書はホワイトハウスの指示のもと、国務省が作成した。

一方で同省は、イスラエルはガザでのイスラム組織ハマスとの戦いで「異例の軍事的挑戦」に立ち向かわなければならない状況だとした。

報告書はガザにおけるイスラエルの軍事行動の一部を明確に非難する一方で、イスラエル国防軍(IDF)の作戦が国際法に違反していると断定するには至っていない。

また、米国製兵器の合法的使用についてイスラエルから得た確約は「確かで信頼できる」ものだとし、イスラエルへの武器の輸送を継続できるとしている。

報告書はこうした評価について、米政府は「完全な情報」を有していないと指摘。その理由として、ハマスが「軍事目的で民間インフラを利用し、民間人を人間の盾に利用している」ため、何が正当な標的なのかを「戦闘が続く紛争地帯の現場で事実を究明するのは困難」であることが多いとしている。

それでも、イスラエルがアメリカ製武器に大きく依存していることから、おそらく「IHL(国際人道法)上の義務や、民間人の被害を軽減するための確立されたベストプラクティス(最善慣行)と矛盾する状況で」使用されているだろうと、報告書は指摘している。

民間人の保護については

民間人の保護については、「イスラエルには、その軍事作戦において、民間人の被害を軽減するためのベストプラクティスを実施するための知識や経験、手段がある」としつつ、「多数の民間人犠牲者を出すなど作戦が現地にもたらした結果から、IDFが常に武器を効果的に使用しているのか、かなりの疑問が生じている」と付け加えた。

報告書によると、国連と複数の人道支援団体は、民間人への危害を軽減するためのイスラエルの取り組みは「一貫性がなく、効果がなく、不十分」だと評している。

米国務省によると、紛争初期の数カ月間、ガザへの人道援助の流入を「最大化」しようとするアメリカの取り組みにイスラエルは十分に協力しなかったものの、その状況はすでに変化している。

「現在のところ、イスラエル政府がアメリカの人道支援物資の輸送や配達を禁止あるいは制限しているとは評価していない」と報告書には書かれている。

アメリカ、ラファ侵攻なら武器供与停止も

報告書の寄稿者の1人で、アメリカの元駐トルコ大使、デイヴィッド・サターフィールド氏はBBCに対し、このような報告書は異例のことで、アメリカはイスラエルの行動を引き続き「検討し続ける」方針だと話した。

「この紛争は、世界が見たこともないものだ」と、サターフィールド氏は付け加えた。「我々は、きわめて率直かつ信頼できる判断を下すために、すべての要因を考慮するようにした」。

ジョー・バイデン米大統領は8日放送の米CNNによるインタビューで、イスラエルがガザ南部ラファで大規模な地上作戦を開始した場合、同国への武器供与の一部を停止すると、公然と警告した。

この数日後にようやく、今回の報告書が発表された。

ラファはハマスの最後の主要拠点とされる。ガザ各地から避難者が集まり、100万人以上のパレスチナ人で街は埋め尽くされている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は報告書の発表を前に、ラファでの作戦が「レッド・ライン」(越えてはならない一線)を越えるというバイデン氏の警告を一蹴。「必要なら(中略)私たちは単独で対処する。必要なら私たちは独力で踏ん張って戦う」と表明した。

国連は、6日以降で8万人以上がラファから避難したと9日に発表した。同市は砲撃が絶えず、人々が密集する地域の近くにイスラエル軍の戦車が集結している。

イスラエル軍はラファでの作戦開始と同時に、エジプトとの境界にあるラファ検問所を掌握し封鎖。イスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所は再開したが、国連は職員や車両が近づくには危険すぎるとしている。

昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、約1200人が殺害され、252人が人質となった。イスラエルは直後にガザへの報復攻撃を開始した。

ハマスが運営するガザ保健当局は、ガザでこれまでに3万4900人以上が殺されたとしている。

(英語記事 US says Israel may have breached international law with American weapons in Gaza

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