【六本木】サントリー美術館「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」を見に行こう

サントリー美術館の国宝・重要文化財が大集合&知られざる迷品も

サントリー美術館で開催中の「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」[2024年4月17日(水)~6月16日(日)]を見て来ました。

「生活の中の美」を基本理念として収集されたサントリー美術館のコレクションは約3000件

本展では、漆工、絵画、陶磁、染織と装身具、茶の湯の美、ガラスの6章で構成された会場に、国宝1件・重要文化財15件を含むサントリー美術館のコレクションが一堂に会します。

これまで展示機会の少なかった一見"迷品"と思われる作品も、作品解説と共に添えられた“学芸員のつぶやき”のマニアックな解説で実は「名品」と気付かされる鑑賞体験を味わえる展覧会です。

※特別の許可を得て撮影しています。会期中、撮影OKのマークの作品は撮影が可能です。会場の注意事項に従い撮影してください。

出典:リビング東京Web

漆工―生活を美で彩る

時代を問わず高貴な人々の調度品や、庶民の生活用品まで彩って来た漆工は、日本を代表する伝統工芸技術です。

装飾的な美しさだけではない漆工の魅力を再発見です。

これは"迷品"?!実は名品《鞠・鞠挟(まり・まりばさみ)》

《鞠・鞠挟》。不思議な存在感を放つ丸く白い物体黒漆塗の架台。ハテ?これは…と足を止めて見入ってしまいました。

平安(へいあん)時代後期以降、貴族文化として継承された蹴鞠(けまり)で用いられたと、鞠挟だそうです。

黒漆塗の架台は、蒔絵(まきえ)渦まきと上がり藤の紋が散らされ、鞠を挟むリング状の枠は金地に金銀蒔絵の菊唐草(きくからくさ)が描かれ、金具は銀製

本作のような鞠挟は、他に類例のない形だそう。本作の以上に形も良く美しい鞠も残っていないとか。

現在の蹴鞠界では名品中の名品だそうです。

出典:リビング東京Web

北条政子(ほうじょうまさこ)愛蔵の名品、国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえてばこ)》

国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》

表面は金粉を密に蒔いた沃懸地(いかけじ)。細やかな螺鈿細工の円形の浮線綾紋(ふせんりょうもん)がきれいに並びます。

北条政子愛蔵と伝わる7つの手箱のうちの1つとされ、豪華で格調高く仕上げられた鎌倉時代の手箱の代表作です。

学芸員のつぶやき解説には、本作を納める箱には手箱にまつわるある伝説が記されているとのこと。是非会場でご覧ください。

出典:リビング東京Web

信仰と祈りの輝き《花鳥螺鈿蒔絵聖龕(かちょうらでんまきえせいがん)》

幼子イエス・キリストを抱く聖母マリアの優しい眼差し。

聖龕(せいがん)とは聖画を納める厨子(ずし)のことだそうです。本作は西欧に輸出された「南蛮漆器(なんばんしっき)」です。

螺鈿と蒔絵のきらびやかな輝き神の光を感じさせ、信仰者に静かな祈りの時をもたらしたのではないでしょうか。

出典:リビング東京Web

絵画―おおらかな心で愛でる

絵画には「上手い」「下手」にこだわらない見方もあるようです。

身分の高い人々の生活空間を飾った豪華絢爛な花鳥図屛風や風俗図屛風。鮮やかな色彩や、優れた描写で描かれた絵巻

他方で、ゆるくて素朴な室町(むろまち)時代のお伽草子絵巻(おとぎぞうしえまき)も存在します。

おおらかな心で日本絵画の幅広い表現を愛でてみると意外な作品に心惹かれるかもしれません。

異国の王を描いた重要文化財《泰西王侯騎馬図屛風(たいせいおうこうきばずびょうぶ)》

王冠を戴き王笏を手にし、きらびやかないで立ちの騎馬の人物は、右からペルシア王、エチオピア王、フランス王アンリ4世とされています。

左端はイギリス王とされていますが諸説あるそうです。

オランダ・アムステルダムで刊行された世界地図の周囲に描かれた図をもとに仕上げられた重要文化財《泰西王侯騎馬図屛風》

学芸員のささやき解説によると、もとは会津若松(あいづわかまつ)の鶴ヶ城に伝来した八曲一双の屏風だったそうです。戊辰戦争(ぼしんせんそう)での落城後、一隻ずつ別々の所蔵者に渡りました。

本作は太平洋戦争の空襲にも遭遇しましたが、焼失をまぬがれたとか。数奇な運命を物語る四人の王の屛風図です。

出典:リビング東京Web

仏教の信仰を伝える素朴絵《かるかや》

素朴で味のある描写が魅力のお伽草子《かるかや》

仏教の教えを説く説教節(せっきょうぶし)「刈萱(かるかや)」絵入本だそうです。

世の無常を感じて妻子を置いて出家した加藤重氏(かとうしげうじ)刈萱道心(かるかやどうしん)と名乗ります。

父を探しに高野山へ上った息子も出家しますが、親子の名乗りを上げないまま2人は同日同刻に息を引き取ったそうです。

学芸員のつぶやき解説では、人びとに信仰を伝えようという真摯な思いを持つ宗教者が描いたのではないか、とのこと。

つたない描写でありながら見る者の心を打ち菩提心を呼び覚ます素朴絵です。

出典:リビング東京Web

染織―江戸(えど)の粋(いき)を装う 火消(ひけし)の美学《平四目紋革羽織(一番組よ組)(ひらよつめもんかわばおり いちばんぐみよぐみ)》

火事と喧嘩は江戸の華

江戸の町火消(まちびけし)火事場で羽織った《平四目紋革羽織(一番組よ組)》(左)。

よ組は江戸の神田(かんだ)周辺を担当した町火消だそうです。

いち早く火事場に駆け付け、まといを振り火消に命を張る粋でいなせな江戸っ子の背中がイメージされます。

江戸町火消の美学を感じさせる名品かもしれません。

出典:リビング東京Web

茶の湯の美―磨き抜かれた眼力の美《赤楽茶碗 銘 熟柿(あからくちゃわん めい じゅくし)》と《褐釉四方茶入(かつゆうよほうちゃいれ)》

茶の湯の美は、茶人たちの眼力で日常使いの器の中から、茶席に相応しい茶陶を選び出し使うことにより名品とされ磨かれてた美があります。

早速、茶席の亭主になったつもりで、《赤楽茶碗 銘 熟柿》と、《褐釉四方茶入》四角い次郎柿に見立てて秋の茶席を思い浮かべてみました。茶の湯は自分自身の美的センスが問われる場だと感じました。皆さんも展示を見ながら季節の茶席をイメージしてみてはいかがでしょう。

出典:リビング東京Web
出典:リビング東京Web

ガラスー不透明さをも愛する ユニークな酒器の形《乙女の杯》、《鹿形パズルゴブレット》、《レースガラス・カンティール》

生活用品でありながら繊細で脆く割れやすいガラスの器酒器としてのガラス器は、注がれたワインやビールより美しく味も引き立ててくれます。

《乙女の杯》(右)は紳士とその妻が酒席で楽しむ余興用の酒器だそうです。

《鹿形パズルゴブレット》(中央)は普通のグラスのようにはワインが飲めない酒器。どうしたら飲めるのか大騒ぎしながら宴会の余興として楽しんだとか。どちらもドイツの酒器です。

所々に溶接されたガラス装飾がヴェネチアン・グラスの影響を感じさせる《レースガラス・カンティール》(左)。ユニークでおおらかな形はスペインの酒器

出典:リビング東京Web

心が動かされたらそれが名品

サントリー美術館「サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品」は6月16日(日)まで。

本展では、陶器や、染織と装身具にも暮らしを彩る「生活の中の美」をまとう名品が出展されていました。

身近な暮らしの中に置いてみたい、使ってみたい心が動かされたらそれが自分だけの名品になるのかもしれません。

是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

小中学生向け「わくわくわーくしーと」 親子で美術館体験

小中学生向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくしーと」。親子で楽しみながら作品について学べる鑑賞支援ツールです。

例えば《鞠・鞠挟》のシートには「これは何に使うものかな?」とあり、中を開くと鑑賞の手引きとなる言葉がわかりやすく記されています。

※数に限りがあります。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、香り遊び手作り匂袋(2,750円)を購入。

香りの元、香原料9種類でオリジナルブレンドの香りを作ることが出来ます。

早速、自分だけの匂袋を作ってみました。身の回りに置くと芳しい香りに癒されます。

※在庫はご確認ください。

出典:リビング東京Web
出典:リビング東京Web
出典:リビング東京Web

カフェ 加賀麩不室屋

カフェ 加賀麩不室屋では展覧会にちなんだメニュー「水ゼリー~加賀棒茶蜜がけ~」(1,210円、税込)をいただきました。

初夏の少し暑い日に、涼し気な見た目とさっぱりしたほどよい甘さの水ゼリーは丁度よいスイーツです。

加賀棒茶とのセットドリンク(350円、税込)もお薦めです。

※販売期間2024年4月16日(火)~6月16日(日)

出典:リビング東京Web

〇サントリー美術館

URL:https://www.suntory.co.jp/sma/

住所:〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階

TEL:03-3479-8600

※10:00〜11:00は「GALLERIA (ガレリア)」の1F入口から入館できます。

〇サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

会期:2024年4月17日(水)~6月16日(日)

※作品保護のため、会期中展示替えを行います。

前期展示:4/17〜5/13、後期展示:5/15〜6/16

開館時間:10:00~18:00(金曜は10:00~20:00)

※6月15日(土)は20時まで開館

※いずれも入館は閉館の30分前まで

休館日:火曜日※6月11日は18時まで開館

入館料(当日):当日一般 ¥1,500、大学・高校生 ¥1,000

※中学生以下無料

※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介助の方1名様のみ無料

割引:100円割引

・あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示

・20名様以上の団体

・世田谷美術館「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」との相互割引

※他の割引との併用はできません

※最新情報はウェブサイトでご確認ください。

*ミュージアムショップ

営業時間:10:30~18:00

※火曜日・展示替期間は11:00~18:00

※展覧会会期中の金は20:00まで営業

定休日:展示替期間中の火曜日、年末年始、※6月11日は18時まで

○カフェ 加賀麩不室屋

営業時間:11:00~18:00

※展覧会会期中の金は20:00まで営業

定休日:展覧会会期中の休館日、展示替期間中の月曜日・火曜日、年末年始、※6月11日は18時まで

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