『花咲舞が黙ってない』劇団ひとり演じる半沢直樹が登場 堺雅人版との差別化に“深い縁”も

『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)第2章突入の第5話では、ついに半沢直樹が登場した。演じるのは劇団ひとり。産業中央銀行の経営企画部次長で、原作同様に中盤から最終話まで物語に絡んでくる重要人物だ。

避けて通れないのは、日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)との差別化である。最終回42.2%の視聴率を誇るドラマの、誰もが知る半沢直樹(堺雅人)のイメージを拭い去るのはあまりにも無謀。この役を引き受けた劇団ひとりの勇気を賞賛したいくらいだが、舞(今田美桜)や相馬(山本耕史)、そして昇仙峡(菊地凛子)と敵対するヒール役として描かれることで、新たな半沢直樹の一面を描くことに成功している印象だ。

第5話では、物語が大きく動く。東京第一銀行と産業中央銀行の合併だ。両銀行頭取の極秘会談に同席していたのが、昇仙峡と半沢。合併を一足先に察知した半沢は、東京第一銀行眠山支店が融資する予定の白鷺亭に、それよりも1億多い6億円で産業中央銀行が融資することに暗躍。銀行合併後に行われる、支店の統廃合を見据えた先手だ。

そのことを知った舞は当然黙ってない。駆け寄ったのは昇仙峡の元。眠山支店で出会ったパートの従業員の未来を案じ、合併の情報を黙っていたなんてアンフェアだと訴える。昇仙峡は「人の心配をしてる場合?」といつもの如く、冷たく舞をあしらうが、「その一人ひとりに人生があるんです。彼女たちの未来を奪わないでください」という言葉が昇仙峡の心を動かしていた。回想するのは亡くなった恋人の川野(平原テツ)との会話。「パートでもこの銀行の一員」と話していた川野の思いを否定することになってしまうからだ。

昇仙峡玲子が黙ってない。その矛先は半沢だ。産業中央銀行が合併情報を支店に漏らしたのではないかと抗議する姿勢を見せる。東京第一銀行の融資計画をそのまま流用する形でも開き直った態度を取る半沢は、昇仙峡が言う通りに「やり方が汚い」。それでも半沢は「私たちが最優先に考えなくてはならないのは、お客様の利益です」と答え、自身の正義を貫く。

ユニークなのは、半沢の登場によって舞と昇仙峡が共鳴していくことだ。舞から見て昇仙峡は「血も涙もない人」だが、健(上川隆也)が話すように似た者同士なところも見えてくる。声を揃えて「ムカつく!」と叫ぶラストシーンがその先例になっていくのだろうか。

番組の公式SNSには、舞と半沢からのスペシャルメッセージとして、劇団ひとりが「やられたり、やられなかったり。倍返ししてみたり、的な感じです。」と日曜劇場寄りにコメントをしている。なお、今田美桜は『半沢直樹』にも出演。半沢に憧れを抱く若手社員・浜村瞳を演じていたのはなんとも縁深く、面白い。

(文=渡辺彰浩)

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