人気の「ソニーグループで働く」とはどういうことか 就活生は正しく理解できている?

マイナビと日本経済新聞が共同で実施した「2025年卒大学生就職企業人気ランキング」が、今年も発表された。理系の総合1位はソニーグループで671票を獲得。2位の味の素の477票、3位のKDDIの389票を大きく引き離している。

ソニーグループの理系1位は3年連続で、文系総合でも11位。しかし、それにしても「ソニーグループで働く」とはどういうことか。都内で人材サービス会社に勤めるAさんは、就活生から「ソニーグループに入りたい」と相談されるたびに、次のような確認の質問をしているという。

「あなたがイメージしているソニーグループとは、ソニーブランドの事業会社のこと? それとも、グループの持株会社のこと?」

「ソニーグループで働く」には2つの意味がある?

ソニーの源流は、1946年設立の東京通信工業。日本初のテープレコーダーやトランジスタラジオ、世界初の家庭用VTRを開発したメーカーだが、現在は連結売上高および金融ビジネス収入が11兆円を超える世界的な多国籍複合企業に成長している。

2021年4月の経営機構改革により、ソニーグループはグループ本社機能を「ソニーグループ株式会社」が担っている。2023年3月末現在の子会社数は1627社、関連会社数は155社で、これらすべては「ソニーグループ」の一員である。

たとえば、お笑いのハリウッドザコシショウさんが所属しているソニー・ミュージックアーティスツという芸能事務所も、内田有紀さんがテレビCMに出ているソニー損害保険も、「ソニーグループ」の一員だ。

一方で、グループ本社機能を有するソニーグループ株式会社に入社することも「ソニーグループで働く」ことになる。Aさんは就活生に対し、「ソニーグループ」には2つの意味があること、ソニーグループには数え切れないほどの事業会社があることを何度も説明しているという。

現在のソニーグループの事業区分は6つ。「ゲーム&ネットワークサービス」から「音楽」「映画」「エンタテインメント・テクノロジー&サービス」「イメージング&センシング・ソリューション」「金融」と幅広い。

2023年度上半期の事業区分別売上高構成比は、「ゲーム」「音楽」「映画」の3つの事業の合計が54.5%と過半数を占めている。祖業のエレキ(電気機器)は全体の2割程度にすぎない。

ただし、年によっては「エンタメ」が振るわない代わりに「金融」が好調だったり、「イメージセンサー」が業績をけん引したりと大きく変化することもあり、ソニーがどんな会社か、ひとことで言い表すのは難しい。

「ソニーグループで働きたい、という就活生に、どんな仕事をしたいのかと聞くと、そこまではよく分からない、そもそも事業区分が6つもあるとは知らない人も多い。そもそもグループ本社のソニーグループで何をやっているかについては、私自身も十分理解しているとはいえないかもしれませんね」

新卒で「グループ本社」に採用されることもある

そもそも、グループ本社の「ソニーグループ株式会社」では新卒採用を行っているのだろうか。ソニーグループ株式会社の広報に尋ねてみた。

「新卒採用は、ソニーグループ株式会社と、(電気機器などの)ソニー株式会社、(半導体などの)ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、(ゲームの)株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの4社が合同で行っています」

逆にいうと、それ以外のソニーグループの会社は、それぞれ別々の新卒採用を行っている。たとえば「音楽」事業を担うソニーミュージックグループに入りたければ、傘下のアニプレックスなどとともに立ち上げている専用サイトからエントリーしなければならない。

なお、一般的に持株会社制を採るグループの場合、新卒はまずはグループ内の事業会社に配属されて経験を積むことが少なくない。しかしソニーグループでは、新卒でグループ本社に採用されることもあるという。

「グループ本社機能には、本社コーポレートスタッフ機能を担う部署のほか、グループ全社に関わる研究開発を担当する部署や、DX機能や事業開発などを担う部署もあり、新卒で配属されることもあります」

採用人数の内訳は非公表だが、2025年新卒採用では4社合計で技術系・事務系あわせて130の職種で採用を行ったという。ソニーグループの新卒採用の「募集コース」を検索するサイトで「ソニーグループ株式会社」を選択すると、21件の職種がヒットした。

職種の中には、一般的な本社機能である「経営企画・事業管理」や「広報」などのコーポレートスタッフのほか、「クラウドサービス開発」「ソフトウェア開発」「AI & Machine Learning」といった開発・R&Dのコースや、「データサイエンティスト & AIエンジニア」などのグループDXを担うコースもある。

学校で勉強してきた専門性を直接業務に活かせる道も

たとえば「データサイエンティスト & AIエンジニア」のコース紹介を見てみると、

「ソニーグループの様々な製品、サービスから集められた大規模な顧客データ、マーケティングデータの分析およびカテゴリをクロスした分析を行い、新たなビジネス価値の創出、顧客ニーズの把握、プロモーション戦略への活用などを支援しグループ全体の成長や持続可能な発展に貢献する」

などといったミッションのほか、活かせる経験やスキルとして「ソフトウェアのコーディング経験(Python, JavaScript, SQLなど)」「数理統計、機械学習の知識、およびそれらを用いたデータ分析経験」などがあげられている。

さらに「3~5年後のキャリア」として、

「ソニーグループの多様な事業領域の多種多様なデータを扱い、問題発見、課題解決、因果分析、将来予測等グローバルに様々なデータ分析を最先端の技術を用いて実施、データサイエンティストとして幅広い経験を積む」

などと書かれており、社会人経験のない学生でも、大学の学部や大学院で勉強してきた専門性を直接業務に活かすことができ、かつ中長期的に経験を積めることが見通せる。なお、学歴についての要件はない。

いずれにしても、ソニーグループ株式会社では、コーポレート以外の人材を幅広く採用しているのだ。前出のAさんはこう話す。

「その時々のグループの経営・事業戦略や課題によって、開発テーマやDXなどの取り組みも変わるので、それに応じて募集する専門職も変わってくるのでしょうね。『ソニーグループに入りたい』と希望する就活生にとっては、グループ本社の募集状況の確認が必要でしょう」

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