レベッカ NOKKO、BARBEE BOYS 杏子、SHOW-YA 寺田恵子……色褪せない80年代女性ロックシンガーの歌声

一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」に伝説のロックバンド、REBECCAのボーカル NOKKOが初登場し、名曲「フレンズ」を歌唱して話題。このNOKKOの歌唱に対して、当時を懐かしむREBECCA世代の声もありながら、「60歳でこの声はすごすぎる」「名曲は色あせない」「今の時代にはないスター性、唯一無二感がある」など、若い世代からの絶賛の声も多く集まった。

REBECCAは、1984年にシングル『ウェラム・ボートクラブ』でメジャーデビュー。1991年に解散するも1995年の限定再結成ライブ以降は不定期に楽曲リリースを行い、2015年に本格的に再始動、今年4月にメジャーデビュー40周年を迎えた。「フレンズ」は、「RASPBERRY DREAM」などと並ぶREBECCAの代表曲。1985年にリリースされ、同年放送のドラマ『ハーフポテトな俺たち』(日本テレビ系)のエンディングテーマとして大ヒットしミリオンセラーを記録。再結成した2015年末に出演した『第66回NHK紅白歌合戦』で歌唱されたことでも知られる。

シンセサイザーとエレキギターが重なる、一発で「フレンズ」であることが分かるキャッチーなイントロ。パワフルでありながら少女性を帯びた甘さを持った、NOKKOのハイトーンボーカル。その歌声は、友情か恋か、二つの感情がせめぎ合う心の葛藤を、時に荒々しく時に儚く、エモーショナルに表現した。「THE FIRST TAKE」では、時を経て声が変わっている部分もありながら、当時のNOKKOがフッと重なる瞬間も多々あり、当時のみずみずしいきらめきがよみがえった。NOKKOの歌声の存在感と「フレンズ」という楽曲が持つパワーが、今も決して失われていないことを実感させる歌唱だ。

デビュー当時、どこかお人形のようなポップなファッションとコケティッシュな魅力で、「和製マドンナ」や「和製シンディ・ローパー」などと評されていたNOKKO。幼さと妖艶さという相反するものが同居した声質は独特で、どこか非現実的な存在感を放っていた。大人の女性でありながら、同時に永遠の少女でもあるのが、NOKKOの歌声の魅力。それが失われていないからこそ、「フレンズ」を歌うNOKKOの歌声を、今もみずみずしく感じるのだろう。

NOKKOは、「THE FIRST TAKE」にてソロ曲「人魚」を歌唱している他、今年7月から9月にかけて、東京・昭和女子大学人見記念講堂での4公演を含むREBECCAとして7年ぶりの全国ツアーを開催することも発表。「THE FIRST TAKE」で公開した2曲のライブでの披露にも期待が集まっている。

REBECCAが活躍した1980年代は、レトロブームの一環で現在注目を集め、当時のアイドルや歌謡曲が人気となる中で、バンドシーンにも目が向けられ始めている。1980年代のバンドシーンには、NOKKOのようにオリジナリティあふれる感性と歌声でファンを魅了した歌姫が多く存在していた。例えば、BARBEE BOYSの杏子やSHOW-YAの寺田恵子などが挙げられる。

BARBEE BOYSは、REBECCAと同じく1984年にメジャーデビュー。KONTAと杏子の男女によるツインボーカルという独自のスタイルで、「女ぎつねon the Run」や「目を閉じておいでよ」などがヒットし、1988年には東京ドーム公演も開催している。

KONTAのハスキーなハイトーンボイスに対して、杏子のボーカルは、女性にしては低音で実に情熱的だ。KONTAとは異なるハスキーさを持った声質からは、人生経験の豊富さを感じさせ、どっしりと構えた低音からは安心感が生まれる。色香漂う艶やかさと包み込むような優しさを併せ持った歌声から繰り出される表現は、杏子の真骨頂だと言えるだろう。前述のNOKKOが永遠の少女であるならば、杏子は生まれ持っての姉御肌だったと言える。実際に所属事務所であるオフィスオーガスタでも、所属アーティストという立場を越えて後輩アーティストたちを束ねている。

一方、寺田恵子はSHOW-YAを結成して1985年にデビュー。バンドと言えば男がやるものだという当時の既成概念を覆し、卓越した演奏テクニックとパワーで日本のハードロック/ヘヴィメタルシーンに燦然と輝いた。女性アーティストだけのイベント『NAONのYAON』を1987年から主催するなど、今も多くの女性ロックアーティストから信望を集めている。

キャッチーなギターリフにノリのいいビートが重なる「私は嵐」は、寺田のパワフルなハイトーンが魅力。声のパワフルさと爽快感は、まるで雲を切り裂くよう。続くギターソロも様式美に則っており、ハードロック/ヘヴィメタルのお手本のような楽曲だと言える。一方、スピード感あふれるビートに乗せて、歌謡曲的な分かりやすいメロディを圧倒的なパワーで歌い上げた「限界LOVERS」。スリリングなビートに続けて繰り出される、目の前が大きく開けるようなサビの開放感は唯一無二の存在感だ。豪快なシャウト、エネルギッシュなロングトーン、圧倒的なパワー。そこに女性ボーカルならではの、しなやかさと細やかさが加えられることで、オンリーワンの歌声が実現されている。

SHOW-YAは、5月18日に東京・日比谷公園大音楽堂で『NAONのYAON 2024』を開催。PRINCESS PRINCESSの渡辺敦子と富田京子の出演も話題となっており、当時人気を二分した両者の共演に期待が高まっている。

この3人の他にも、パンクの歌姫・戸川純、「麻里ちゃんは、ヘビーメタル。」というキャッチコピーで鮮烈なデビューを飾った浜田麻里など、個性豊かな女性ロックボーカルが多数存在した1980年代。音楽の聴かれ方も在り方も多様性が求められ、本当に個性が光る者しかデビューすることが許されなかった時代。選び抜かれ、磨きあげられた個性であるからこそ、40年経った現在でもその輝きは色あせていないのだろう。

(文=榑林 史章)

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