大谷の「お~いお茶」広告に隠された伊藤園の謙虚な思い あえて“広告のタブー”を貫いた本当の意味

ドジャースの大谷翔平【写真:ロイター】

グローバルアンバサダー契約を締結

飲料大手メーカーの伊藤園が主力ブランド「お~いお茶」において米大リーグ・ドジャースの大谷翔平投手とグローバルアンバサダー契約を締結したことを発表したことは、ファンを驚かせるだけでなく、どこかほっこりとさせるニュースとなった。大谷との「縁」が生まれたキッカケは何だったのか。伊藤園広報部がTHE ANSWER編集部に語った契約の舞台裏。全4回でお届けする2回目は、異例のデザインとなった広告制作の背景と大谷に対する熱い思いを明かしてくれた。

米国に主戦場を移し、MLBを席巻する大谷と日本の“ソウルドリンク”ともいえるお茶の組み合わせ。絶妙なマッチングは、ふとしたタイミングで出来上がった。

「当初から『お~いお茶』をグローバル展開していきたいという思いがある中で、海外進出はまだまだできていない。日本の緑茶の健康価値は高く、喉を潤すだけのものではないということをアピールしたい」(伊藤園広報部)と考える中で、「大谷選手が日本にいる時から『お~いお茶』を飲んでいた。そして今でも愛飲してくれている」という情報が飛び込んできたのだという。

そこから極秘裏に進められた契約交渉。話はスムーズにまとまり、広告制作が始まった。「最終的には『お~いお茶』をアピールするところに辿り着くのですが、今回の発表に至る過程で、大谷選手の周りでいろいろなことが起きていました。そういう状況もあり、我々としては大谷選手の『応援をしたい』という思いが第一にありました」と明かす。

関係者の思いが込められた広告の演出コンセプトは「スタンドから球場に向かって『お~いお茶』がそっと見守って応援している」というもの。そして完成したのが、4月30日に国内外の新聞60紙に掲載された全面広告だった。

青空が広がるスタジアムに置かれた1本の「お~いお茶」のペットボトルの写真に「拝啓 大谷翔平様」で始まるメッセージが添えられた。ペットボトルは「商品の顔」ともいえるロゴを背にした異例のスタイル。ラベルの背には「いつの日も 僕のそばには お茶がある」という俳句とともに「カリフォルニア州ロサンゼルス・29歳・大谷翔平」と書かれている。見逃してしまいそうな絶妙な“仕掛け”はファンの注目を集めた。

もちろん、ペットボトルが正面を向いていない写真を使うことに難色を示す者も少なくなかった。「今までロゴが正面を向いていないカットというのはやったことがなかったので、かなり議論になりましたね」。

確かに、業界としては、商品の宣伝効果の面で“非常識”と言われても否定できない異例のスタイル。それでも「今回の趣旨が、ボトルを擬人化させて大谷さんを『応援する』という位置づけなので、あえて商品がグラウンドのほうに向いているという絵を作りたかった」と謙虚なこだわりを貫き、周囲の同意を得たのだという。

一つ間違えば“失敗”に終わったかもしれない広告。そこに込められた伊藤園の熱い思いが世間に響いた形だ。

THE ANSWER編集部

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