ボードゲーム風の戦術級ターン制ストラテジー『One-inch Tactics』先行プレイ!シンプルな見た目とは裏腹に玄人好みのウォーゲーム【プレイレポ】

『One-inch Tactics』

今回ご紹介する『One-inch Tactics』は、5月20日にSteamでPC向けにリリースが予定されている戦術級ターン制ストラテジーです。ボードゲームの盤面のような戦場を舞台に、同じくボードゲームのフィギュアのようなロボット兵器が死力を尽くして戦います。パブリッシャーはKOMODO。開発を手がけるのは工画堂スタジオです。

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本作はボードゲームの戦術級ウォーゲームをそのままビデオゲームにしたような作品です。それは記事冒頭に掲載したタイトル画面が象徴している通りで、ビデオゲームらしい演出はほとんどなく、グラフィックも極めてシンプルなもので統一されています。そのため、万人向けの作品ではなく、盤上の駒を眺めるだけで実際の戦場を思い描ける玄人好みの作品だと言えるでしょう。

しかし見た目がシンプルだからといって、ゲームの内容までシンプルなわけではありません。ゲームはミッションを一つずつクリアしていく形で進行しますが、ミッションをクリアするには事前に与えられた必要最小限の情報をもとに、これから起きる戦闘を予測して万全の準備を整える必要があります。敵を攻撃するには、まず最初に“索敵”によって敵を発見しなければならず、作戦中に予期せぬ事態が起こって臨機応変な対応が求められることもあります。このように、本作ではなにが起きるかわからない戦場の不確実さがしっかりと再現されているのです。

今回プレイしたのは開発中のデモ版です。リリースされる最終バージョンとは内容が異なる可能性がありますのでご了承ください。

ブリーフィング

本作にはミッションを連続してクリアしていくキャンペーンと、好きなミッションをプレイするシングルミッションの2つのモードがあります。キャンペーンにはスタンダードとクラシックの2種類の難易度が用意されており、標準難易度のスタンダードに対して、クラシックでは隊員の喪失、補給の減少、ダメージの補正などの要素が追加されます。難易度は設定画面からいつでも変更可能で、今回のプレイレポはスタンダードでプレイしました。

キャンペーンを開始すると短いデモの後、いきなり初ミッションの状況説明が始まります。ストーリーもなにもないので最初は戸惑いましたが、シンプルさを追求したデザインはこんなところまで徹底していました。

ミッションを開始する前には準備が必要です。まず、隊員の搭乗機と装備を設定し、次に戦場での出撃開始地点を決定します。事前の状況説明でわかる情報はごくわずかなので、そこから実際の戦場でなにが起きるかを予測して準備を整えなければなりません。装備には長所と短所があり、隊員の能力も同様です。最善の戦略は戦場で敵に遭遇するまでわかりません。出撃準備の段階から戦いは始まっているのです。

出撃準備で「ああでもない、こうでもない。」と頭を悩ませるのは本作の中でも特に楽しい瞬間です。そこで、本プレイレポではミッションの詳細には踏み込みません。

隊員には名前のほか、AP・対地・対空・白兵・防御の5種類のパラメーターと、索敵・隠蔽・通信・工兵の4種類のスキルが設定されています。AP(アクションポイント)は戦場でさまざまな行動を取る際に消費される行動力です。隊員にはすべて女性風のイラストが用意されており、ミッション開始時に一言二言セリフを話すこともあります。今回プレイした範囲では能力が成長することはありませんでした。

隊員が搭乗する機体には武装を装備できる場所が複数あります。例えば、最初に選択できる“XN-装甲歩兵”には、肩の装備が2箇所、手の装備が2箇所、手榴弾などを携帯できるポケットが2箇所ありました。武装はそれぞれの場所に合ったものを所持数の範囲内で自由に組み合わせて装備でき、グラフィックにも反映されます。ただし、必ずしも隊員全員分の機体が用意されているわけではありません。機体のない隊員はミッションに参加できずにお留守番です。

隊員と搭乗機の準備ができたら、戦場での出撃開始地点を設定します。設定できる地点は特定のマスではなく、ある程度の幅があります。隊員はミッションの開始時、または設定された時刻になると指定した範囲のどこかに出現するルールなのです。正確な出現位置は指定できないので、どこに出現しても問題のない作戦を立てましょう。この出撃地点も隊員全員の分が用意されているとは限らないので、部隊の編成前にあらかじめ確認しておくことをお勧めします。

ここまで準備してようやく出撃です。具体的なミッションの様子はこのあと紹介しますが、ミッションにはさまざまな目的が用意されており、目的達成後に脱出が必要になる場合もあります。ミッションには終了時刻も設定されており、終了時刻を過ぎても目的が達成できなかった場合は、出撃した隊員と装備をすべて失うこともあるようです。

また、ミッションが完了すると新しい隊員が加入し、装備品が追加・補充されます。一部の例外を除いて、ミッションに成功しても失敗しても次のミッションには進めますが、ミッション成功率が低い場合や隊員不足が著しい場合は、プレイヤーが指揮している部隊そのものが解散されてしまいます。

ミッション・スタート!

いよいよミッション開始です。ゲームはターン制で、自分と敵の手番が交互に回ってきます。自分のターンではAPが残っている限り、好きなユニットを好きな順番で何度でも動かすことができます。すべての行動を終えたら自分のターンを終了して敵のターンに移ります。

ユニットが取れる行動は移動・攻撃・索敵・隠蔽など8種類。どの行動もそれぞれ決まった量のAPを消費して実行します。APはターンの開始時に最大値まで回復しますが、APの最大値は隊員の能力や機体の装備によって決まり、武装を追加すればするほど減少します。

本作では敵の居場所を特定する“索敵”が非常に重要です。ユニットの視界は武器の射程に比べて狭く、直接見える範囲だけで敵を発見していたのでは出会い頭の遭遇戦や奇襲攻撃を避けられません。敵が目と鼻の先にいても索敵に成功しなければ見つけることができないのです。また、索敵には隊員のスキルや機体の装備のほか、障害物や高低差、相手が“隠蔽”しているかどうかも影響を与えます。例えば、森の中に隠れた敵や窪地に潜んでいる敵は発見が困難です。

遭遇戦の例を一つご紹介しましょう。あるミッションに2人の隊員を送り込んだときのことです。まず最初に、一人が見通しの良い高台から眼下に広がる平地を索敵しました。しかし、まったく敵を発見できません。平地に敵はいないと判断した筆者は、もう一人を平地から一気に突進させます。すると、小さな森を越えた先で敵に遭遇したのです。索敵したときには森が障害物となっており、その先にいる敵が発見できていませんでした。

幸いまだAPが残っていたため、高台と至近距離からの攻撃で敵の撃破に成功しました。自分のターンで撃破したので敵の反撃はありません。遭遇戦は運良くこちらの完全な奇襲で終わったのです。ホッと胸をなでおろした筆者が念のためにもう一度索敵を試みると……なんと、目の前に敵が隠れているではありませんか!

あわてて攻撃しようとしましたが、今度こそAPが足りません。なんとか煙幕だけでも張れないかと思いましたが、どうしてもAPが1だけ足りませんでした。結局、筆者は敵を目の前にした状態で、祈りながら次のターンに進むボタンを押す羽目になったのです。その後、どうなったかはご想像にお任せします。

このように、本作ではいつ敵に遭遇するかわかりません。奇襲攻撃を避けるなら、むやみに前進しないでこまめに索敵を試みるべきでしょう。索敵しながら敵の勢力圏に一歩ずつ足を踏み入れていくこの感覚は、なかなか手に汗握るものがあります。

本作では索敵だけでなく“射線”も障害物や高低差の影響を受けます。一部の武器では射線の通っていない敵を攻撃できませんし、逆に索敵範囲外の敵を広範囲にわたって攻撃できる武器も用意されています。ミッションによってはこうした武器の使い分けが必要です。また、一部のミッションではマップ外からの支援攻撃を要請することもできます。

ミッションの途中で状況が変化することもあります。目的を達成して、あとは脱出するだけというところで事態が急変し、ミッションの目的が突然変更されたこともありました。戦場ではなにが起きるかわからないのです。

ミッション開始前の説明になかった状況が発生した場合、手持ちの隊員と装備を駆使して臨機応変に対応しなければなりません。筆者は目的変更と同時に“ある装備”を使うよう指示を受けましたが、その装備をミッションに持ち込んでいなかったため苦労しました。どんな事態に陥っても大丈夫なようにあらかじめ装備を整えておくのがベストですが、装備を増やせばそれだけAPの最大値が減少するので、プレイヤーの戦略が試されることになります。

本作はボードゲームをそのままビデオゲームにしたような作品です。グラフィックや演出がシンプルなので万人向けではありませんが、戦術級ウォーゲームが好きな方ならシンプルさの裏に隠れた奥の深さに気づけるかもしれません。

『One-inch Tactics』は、PC(Steam)向けに5月20日の発売予定です。

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