イスラエルへの武器売却禁止は「ハマスの力強める」=英外相

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は12日、BBCの番組に出演し、イギリスがイスラエルへの武器売却を禁止すれば、イスラム組織ハマスの力を強めることになると主張した。

キャメロン卿はBBCの「サタデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」で、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦は支持しないと発言。一方で、イスラエルへの武器売却の一時停止を計画しているアメリカの政策をまねたりはしないと述べた。

また、イギリスが輸出している武器はイスラエルの保有する兵器の1%でしかないと説明。さらに、イスラエル対し、民間人の保護の強化と人道支援物資のガザへの搬入にもっと取り組むべきだと警告した。

最大野党・労働党のジョナサン・アッシュワース議員は同じ番組の中で、イギリス製の武器がラファで使用されるのは認められないと語った。

イスラエル最大の同盟国であるアメリカのジョー・バイデン大統領は先週、イスラエルがラファで大規模な地上作戦を開始した場合、同国への武器供与の一部を停止すると警告した。ラファには現在、140万人のパレスチナ人が避難している。

国連によると、6日以来、8万人以上がラファから逃げ出しているという。一方で、イスラエル軍の戦車が市街地近くに集まっているという報告も出ている。

アメリカをはじめとする同盟国は、ラファでの地上作戦は多くの民間人の犠牲と人道危機を招くと警告しているが、イスラエルは計画通り作戦を遂行するとしている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマス部隊がラファを拠点にしているとし、この部隊の殲滅(せんめつ)を誓っている。

キャメロン卿は番組で、イスラエルの「人々を守る計画」が提示されるまでは、ラファへの全面攻撃を支持しないと話した。

そのうえで、イギリスは「大規模な武器供給国家」であるアメリカとは「全く異なる立場」にあると述べた。

イギリス政府はイスラエルに直接、武器を売っておらず、法的助言に基づいて武器製造企業にライセンスを与えている。一方、アメリカは政府間の武器売却に関する制限が緩やかだという。

キャメロン卿は、イスラエルがガザ地区で人道支援活動を行っていた慈善団体の車を空爆し、イギリス人3人を含む職員が死亡した際、イスラエルへの武器売却を停止するべきだと述べたと説明。「しかし数日後、イランがイスラエルに残酷な攻撃を行った」と指摘した。

「きょう単純に武器輸出のアプローチを変えると発表したところで、ハマスを強化し、人質解放の合意の可能性が薄まるだけだ」

その代わり、ガザ地区に支援物資が届くように「日々努めること」に注力したいと述べた。

米国務省は10日、イスラエルがガザ地区での戦闘で、アメリカから供与された武器を国際人道法に違反して使用した可能性があると発表した。

この調査内容に同意するかとの質問にキャメロン卿は、イスラエルの「行動は十分に良いものとは言えない」とし、支援物資の運び込みについて「良い状態であるという保証がない」と指摘した。

しかし、イギリスは「(アメリカとは)異なるアプローチをしている」とキャメロン卿は強調し、武器売却を停止するなどの政治的な動きを通した「メッセージの発信にはあまり興味がない」と述べた。

「私が関心を持っているのは、イギリスからの圧力を最大化し、人々を助ける結果を出すにはどうすればいいかだ。これには、イギリス国籍をもつ人を含む人質の解放も含まれている」

一方で、イギリス軍がガザ地区入りするという案については一蹴し、「そうしたリスクは取るべきではない」と述べた。

BBCは4月、政府が支援物資の海上輸送を手助けするため、軍を派遣することを考えていると報じた。

「戦争犯罪を支援」と労働党

労働党のザラ・スルタナ議員は、政府が自らのルールに従わず、イスラエルに武器を供給していると批判した。

政府の戦略的輸出ライセンス要綱は、「国際人道法に対する重大な違反を犯したり、助長したりするために使用される明白な危険がある場合」には、武器を売却できないと定めている。

スルタナ議員は、イスラエルに売却する武器の規模は「関係ない」と指摘。「イギリスは今、日常的に行われている戦争犯罪を支援し、助けている」と述べた。

昨年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃して以降、労働党は、ガザ地区に対する立場を変えている。ハマスの襲撃では約1200人が殺され、250人以上が人質となった。これを受け、イスラエルはガザ地区への攻撃を開始。ハマスが運営する同地区の保健省によると、これまでにガザ地区で3万5000人以上が殺され、7万8000人が負傷している。

労働党は昨年、ガザでの停戦を要求せず、代わりに援助が流入するよう「人道的一時停止」を支持した。これを受け、同党の幹部議員10人が辞職した。

しかし今年2月には、労働党はガザの状況が「進展」したことを受け、「即時停戦」を求め始めた。

影の内閣の主要メンバーであるアッシュワース議員は、ラファへの侵攻に「イギリス製の武器が使われるのを見たくない」と述べた。

「ラファへの全面的な攻撃は、筆舌に尽くしがたい大惨事となるだろう」

そのうえでアッシュワース氏は、イスラエルへの武器売却に関する法的助言を公表するよう政府に求めた。

(英語記事 UK ban on selling arms to Israel would strengthen Hamas, says Cameron

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