【今週のサンモニ】病的反日陰謀論の青木理氏は今週も絶好調|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

どんな話題でも「日本政府が悪い」

2024年5月12日の『サンデーモーニング』においては、相も変わらない青木理氏の病的な反日陰謀論に相も変わらない疲労感を覚えました。

プーチン大統領 異例の長期政権のワケ

青木理氏:ソ連崩壊後の大混乱を一定程度安定させたプーチンをロシアの人たちが望んだということがあると思う。なんでこんな(異例の長期政権)になってしまったのかということを考えると、ロシアで長く暮らしていた人に聞くとね、やっぱりプーチンが着々と専制体制を作っていったわけだ。

いくつかあって、①テロ対策を大義名分にした治安の強化。それから②宗教勢力と結びついて煽られたナショナリズム。あるいはそれと裏腹の③排外主義。それから言うまでもなく④言論・報道の自由をどんどん弾圧していったりとか、⑤あるいは野党とか対抗勢力とか異を唱える人たちを弾圧していなくなっていく。それから⑥街の美化とか開発に名を借りた少数者とか貧困層の排除。それからオリガルヒという言葉にあるようにまさに⑦周辺に利益共有集団みたいなものを作り上げていく。

長年、20年、30年かけて、そういうものがあった末にプーチン体制があるということを考えると、けっして今挙げたような要素っていうのは他人事ではない。ある意味で専制体制ができていくことの兆候というのは、もしかすれば洋の東西、それから政治体制の差異を問わず変わらないんじゃないかというのは注意しなくちゃいけないんじゃないかと思う。

青木理氏

青木氏は、ロシアでプーチンが長期政権を続けている要因として様々な要素を羅列した上で、「けっして今挙げたような要素っていうのは他人事ではない」と主張しています。これは、まさに超ワンパターンの「青木構文」に他なりません。

青木氏は、誰もが納得する悪徳な権力者が存在する場合に、その悪徳の数々を長々と列挙した上で、最後に「他人事ではない」と無理やりまとめて日本政府を悪魔化します。

既に多くの人が気付いているかと思いますが、青木氏のコメントの結論は、どんな話題でも十中八九「日本政府が悪い」です。今回のプーチン批判も、日本政府批判のための単なる伏線でしかないのです(笑)

青木氏が挙げたプーチンに対するネガティヴな評価は、明らかに青木氏がヘビロテで主張している日本政府に対するネガティヴな評価を類推させるものです。一つ一つ見ていきたいと思います。

青木氏の主張にマジレスを連発してみた

まず「テロ対策を大義名分にした治安の強化」とは、明らかに日本のテロ等準備罪を類推させるものです。ただ、日本のテロ等準備罪は、世界的に見て、取り立てて問題視するような悪法ではありません。これと同様の法律はTOC条約署名の要件となっており、世界の百数十カ国に存在します。

テロ等準備罪を問題視しているのは『サンデーモーニング』をはじめとする左翼メディアと左翼活動家だけなのです。テロ等準備罪を念頭に民主政府がテロ組織・暴力団・詐欺集団などを監視することは、一般市民にとってはメリットしかなく、デメリットは全く存在しません。

「宗教勢力と結びついて煽られたナショナリズム」とは、自民党が日本会議や統一教会と結びついてナショナリズム国家を目指しているとする青木氏の突拍子もない陰謀論の世界の出来事を指しているものと考えられます。

「排外主義」というのが、日本の慎重な難民政策や移民政策のことを指しているとすれば、それは日本政府というより、主権者である日本国民のコンセンサスによるものです。これを「排外主義」と断じているのは、変わり者の日本の左翼とバイデン大統領だけです。また、一部国民による外国人に対するヘイトスピーチは政権とは全く無関係です。

「言論・報道の自由をどんどん弾圧」は左翼の陰謀論であり、日本政府がメディアを弾圧している証拠は存在しません。例えば、政権に圧力をかけられてキャスターを降板させられたとされる古舘伊知郎氏と岸井成格氏は、本人が圧力の存在を否定しています。政権がメディアに圧力をかけたとすれば、それは民主党政権です。むしろ一般市民が問題視しているのは、青木氏を含めたメディアの偏向報道です。

「野党とか対抗勢力とか異を唱える人たちを弾圧」は日本では不可能です。そんなことをしたら、異を唱える人たちが黙っていません(笑)

「街の美化とか開発に名を借りた少数者とか貧困層の排除」というのも日本ではありえません。日本は少数者や貧困層を生活保護政策によって手厚く支えています。そればかりか、日本は外国人に対しても必要に応じて生活保護を行っています。

「周辺に利益共有集団みたいなものを作り上げていく」というのも意味不明です。そもそも「みたいなもの」というマジックワードを使えば、個人の解釈でいくらでも「利益共有集団みたいなもの」を作り上げることができます。

歯止めはあるのに「歯止めがない」と断定

青木氏は、国会で成立したセキュリティ・クリアランス制度に対しても徹底的に批判しました。

青木理氏:端的に言うと、あの特定秘密保護法の民間版だ。漏洩した場合には最長5年の拘禁刑が科されるが、そもそも秘密が何なのか、まったく具体的に法律に書いていないので、際限なく広がりかねない。そもそも集めたプライヴァシー情報って誰が集めるの? 誰が集めてどう管理をして、他のことに流用されないかという歯止めもない。公安警察をはじめとする治安機関とか国家権力に相当な権限を与える法律なのに歯止めがない。さっきのロシアの話と通じてくるところがある。

さすが『サンデーモーニング』、この制度を「身辺調査法」呼ばわりするのは、悪意に満ち溢れています(笑)。

セキュリティ・クリアランス制度でアクセスが制限される情報(青木氏の言う「秘密」)とは、「政府が保有する安全保障上重要な情報」と定義されています。条件を満たせばアクセスできる情報なので「際限」は必要ありませんし、それが「何」であるかを公表する必要もありません。

そもそも公務員には、職務上知り得た情報を漏らしてはならない守秘義務があります。個人情報は、行政個人情報保護法によってさらに厳重に管理され、他の行政機関に情報を流用することは禁じられています。

また、法律には決定的な歯止めが存在します。プライヴァシーを国家に侵害されるのが嫌ならアクセス権を求めなければよいのです。これはどこにでもある権利と義務の関係です。

さらに、日本のセキュリティ・クリアランス制度をわざわざ専制覇権国家のロシアと関連付けることも不合理です。セキュリティ・クリアランス制度は、米英独仏加豪など自由主義社会の諸外国で既に運用されています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyo_sc/dai3/siryou2.pdf

青木氏のコメントは、極めて杜撰な認識による誤情報を言葉巧みに説き、情弱を認知操作して政権を貶めるものです。このような人物を出演させ続ける『サンデーモーニング』には良識のカケラもないようです。

浜田敬子氏「原発」批判の路線変更

さて、原発をことあるごとに「トイレなきマンション」と揶揄して貶めてきた浜田敬子氏ですが、ここに来て路線変更せざるを得ない状況に陥ったようです。

浜田敬子氏:長年原発をずっと押し続けてきた中でも、最終処分、核のゴミをどうするんだという議論はずっと先延ばしにされてきた。「トイレのないマンション」という言い方もされてきた。結局私たちが住む大都市の電力を凄く使う都市部の住民の人たちはあまりにも関心が薄い。立地も過疎地と呼ばれる地域に任せて、今度は最終処分までここにお任せするのかという議論がなかなか関心をもたれない。ここに大きな問題がある。

佐賀・玄海町が、高レベル放射性廃棄物処分場の第一段階の調査受け入れを表明したことで、北海道の2地点を加えた計3地点において、最終処分場の適性を評価するための文献調査が実施されることになりました。

これまで、「最終処分場がないから原発反対」と主張してきた浜田氏ですが、さすがに形勢が悪くなったのに気付いたのか、「地方に押し付けるから原発反対」に主張を変えたようです。

そもそも、高レベル放射性廃棄物処分場については、1980年代から世界各国の地下施設で大規模な現場実験が行われ、2000年には日本でも地層処分場に関する調査・安全評価・建設等にわたるジェネリックな工学技術が確立されました(JNC2000年レポート)。

地上における安全な乾式貯蔵技術も確立している中、最終処分場の建設は、既に原発稼働のクリティカルパスではなくなっています。浜田氏は、そんな状況も理解できずに、原発を「トイレのないマンション」と揶揄し、日本社会に不合理な罪悪感を持たせて、原発稼働に反対するよう誘導してきたのです。

これは心理学でいう典型的な【感情的恐喝 emotional blackmail】です。

浜田敬子氏:もう一つが、AIによるデータセンターを日本にものすごく作ろうとしている。そして半導体の工場も得て、電力の需要がこれから爆発的に伸びると言われている時に、政府内ではさらに原発の新増設みたいな議論が始まっている。最終処分場の問題を地方に押し付けておいて、さらに作るのか。これでいいのかというのを、私たち都市部の人間が考えなければいけない。

これも教科書的な「感情的恐喝」です。浜田氏は「処分場の問題を地方に押し付けていいのか」という言葉で、都市部の人たちに不合理な罪悪感を与えて、原発稼働に反対するよう誘導していますが、「押し付けて」というのは明確なミスリードです。玄海町の脇山伸太郎町長は受け入れの目的を次のように述べています。

脇山伸太郎町長:お金目的で「文献調査」を受け入れるものではありません。日本のどこかに「最終処分場」の適地が見つかるための呼び水となったらありがたい。

つまり玄海町は、自らの利他的な行動を通して、未来への責任を日本社会に問いかけているのであって、政府が金で地方に押し付けたから地方が金で動いたというわけではありません。

浜田氏の「押し付ける」という解釈は、玄海町が掲げた理念を愚弄するものです。

原発は「トイレのないマンション」ではありません。むしろ浜田氏が無責任に推すメガソーラーこそ、日本の地方の広大な土地を破壊する「有害粗大ゴミの不法投棄場」になる可能性が現実問題として懸念されています。

ちなみに高レベル放射性廃棄物の処分場の場合は、地下数百mに3km四方の土地を日本で一つだけ確保できれば、日本に存在するすべての高レベル放射性廃棄物の処分が可能となります。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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