これぞ亀梨和也の演技の真骨頂! 『Destiny』視聴者を沼らせる真樹の仄暗い色気

テレビ朝日系にて放送中のドラマ『Destiny』の第1部が完結した。

本作は、“検事”の世界を舞台に紡ぐ完全オリジナルサスペンスラブストーリー。第1部にあたる第1~5話は、主人公・西村奏(石原さとみ)の大学時代に起きた事件が引き金となり、消息不明となった同級生で元恋人の野木真樹(亀梨和也)が12年ぶりに現れたことで、過去と向き合うことになるといった内容。そこには先述した「大学時代の事件」、そしてそこから見えてきた20年前の「奏の父の死の真相」が絡んでおり、恋の要素もありつつも、サスペンス要素の強い内容となっていた。

そんな物語において、亀梨は真樹の持つ光と影を見事に表現。今回の記事では、真樹というキャラクターの魅力を深掘りし、第2部以降への期待とともに語っていきたい。

横浜の名家で生まれ、有名弁護士を父に持つ真樹。父への反抗心から長野県にある国立大学を受験し、そこの法学部で奏らと出会うことになる。第1話に登場した大学時代の真樹は、絵に描いたような“モテる大学生”だった。

屈託のない笑顔、誰に対してもノリが良く男女問わずに人気を集める存在。もしも同級生にいたとしたら「みんなが好きになっちゃう人」「手は届かないから言葉にはしないけど、心の中でずっと気になる存在」だったに違いない。

そう語ると真樹は非常に明るいキャラクターに思えるかもしれないが、そうではない。みんなの前で見せるキラキラとした一面の裏には、今まで心から好きになった人はいない、父との折り合いが悪いなどの影の部分も持ち合わせている。

そんな光と影を見事に両立させたキャラクターが真樹なのである。

例えば、第1話。カオリ(田中みな実)が死に至った交通事故の際に隣に座っていたのは真樹だった。それまでは、奏と甘い時間を送っていた真樹が、カオリからの呼び出しに応じ、彼女の前に立った際、その笑顔を封印し対峙する表情は見事だった。愛する人である奏、そして愛する人を餌にゆする・カオリ、2人への表情の対比をぜひ今一度見比べてみてほしい。

さらに、言うなればこの事件、奏と真樹が内緒で付き合っていたことに嫉妬したカオリによる暴走がきっかけであり、真樹に非はない。とはいえ、奏に内緒でカオリの呼び出しに応じてしまったことなどに引け目を感じた真樹は事件以降、仲間たちの前から姿を消してしまう。そんな真樹が唯一現れたのがカオリの葬儀の際。ここで仲間たちに気づかれた真樹は全力で逃げ、追ってきた奏に対して横断歩道越しに真相を吐露。「ごめん! 俺がカオリを……」。たった一言ではあったが、その一言さえも本当は奏に伝えるべきではないのかもしれないと、短い時間の間にためらう真樹の表情は観ているものに緊迫感を与えた。ここで姿勢は完全に振り返ることなく、目だけで振り返る表情こそ、亀梨の真骨頂。この表情、いつどのドラマにおいても、一気に重要なシーンへと変えてしまう魔力がある。

ミステリー要素だけではなく、恋愛においてもそうだ。12年ぶりに奏の前に現れた真樹は、「もう2度と恋に落ちてはいけない」と頭ではわかっている奏の心を相変わらずかき乱す存在だった。検事6年目の奏に「すごいな、頑張ったんだな」とあの時の優しい声で囁く。

なにか裏があっての行動ではない。愛するもの、大好きだった仲間に対しては真正面からさらっと愛を伝える、それが真樹なのだ。

そして何よりも衝撃を与えたのは、第3話におけるキスシーンである。12年前、トラックが通過するとそこからもういなくなっていた真樹が、今回はいなくならなかった。それを見た奏がたまらず走り出し、2人が再び歩道橋の真ん中で落ち合ってキスをするシーン。まさにただ「再会」したのではなく、「出会ってしまった」というにふさわしい。そんな2人の抑えきれない思いが溢れ出したキスの後で奏の肩を辿って手を下ろし「忘れて」という真樹は妙に色っぽい。そして「無理だよ」と答えた奏に「じゃあ……忘れないで」と告げるところまでセットで罪深かった。歳を重ね、もともと持ち合わせていた色気に渋みが加わった亀梨だからこそ生み出せた表情なのだろう。

このようなシーンの積み重ねから、真樹という沼に落ちてしまった視聴者も多いはず。しかし、第5話の最後にはまさかの実家に放火した疑惑が浮上、さらには胆嚢ガンであることが判明した真樹。ここからは奏と“検事と犯人”という関係性になっていく。おそらく触れ合うことはもうない。それでは、2人の12年越しの恋はもう終わってしまうのか。
(文=於ありさ)

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