「不登校」の子ども、同じ目線で支援 経験者3人が大津町でフリースクール 「悩みに共感 居場所づくり」

「おおあそ未来の杜 大津校」の開校式で自己紹介する(左から)上田晋也さんと安谷達夢さん、駒﨑裕樹さん=4月6日、大津町

 不登校を経験した職員たちが運営するフリースクール「おおあそ未来の杜[もり] 大津校」が、大津町に開校した。「学校に行けずに悩む子どもの居場所をつくりたい」。代表の上田晋也さん(33)は自身と似たような境遇を抱える生徒らに、同じ目線で手を差し伸べる。

 4月6日、家族と暮らす上田さんの自宅でささやかな開校式があった。出席者は中学生の男子1人に職員や保護者ら10人。和気あいあいと談笑し、温かな雰囲気に包まれた。

 上田さんは小学校低学年から中学まで不登校を繰り返した。「集団行動が苦手だった。人の目を気にして嫌いな人にも優しくしていたら気疲れした」。高校にもなじめず、3カ月で通信制に転校した。

 「青春を取り戻そう」と進学した大学では、充実した日々を過ごした。卒業後は企業に就職したが、「自分の経験をもっと生かせる何かをしたい」と思うようになった。頭に浮かんだのはフリースクール。会社を辞め、大学の通信教育部で教員免許を取った。

 通信制高校で4年間、社会科の教諭を務めた後、昨年9月から不登校の子どもたちに学びの場を提供する熊本学習支援センターの天草下田南校で経験を積み、この春に〝独立〟した。

「おおあそ未来の杜 大津校」の開校式であいさつする代表の上田晋也さん=4月6日、大津町

 教諭時代の忘れられない体験がある。悩み相談に乗っていた生徒から「先生、なんでそんなに私の気持ちが分かるの?」と言われ、はっとした。不登校を経験した自分だからこそ、悩みを抱える生徒に共感できるのではと考えた。

 安谷達夢さん(22)と駒﨑裕樹さん(23)は、当時の教え子。2人とも不登校でそれぞれに深い悩みを抱えていたが、上田さんの指導に心を動かされた。「自分たちも関わりたい」とフリースクールの職員となり、恩師を支える。

 上田さんの両親も運営に加わり、育て方が間違っていたと悩む親を孤立させない仲間づくりに注力する。

 上田さんは「自分って何だろう、と悩む子どもに来てほしい」と呼びかける。小、中、高校生が対象で、今のところ生徒は1人。5月6日には阿蘇市に「阿蘇校」を開校する。

 「つらい毎日を過ごす子どもが安心して長所を伸ばせる場所にしていく」。同じ苦悩を味わった教え子2人と同じ思いを胸に歩み出した。(草野太一)

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 おおあそ未来の杜☎080(9299)4017

開校した「おおあそ未来の杜 大津校」。中央が代表の上田晋也さん。左は安谷達夢さん、右は駒﨑裕樹さん=4月6日、大津町

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