【楢葉の健康づくり】町民運動に育てよう(5月14日)

 楢葉町は健康増進を町勢振興計画の柱の一つに掲げ、著名なウオーキングトレーナーが代表を務める団体と今春、包括的連携協定を結んだ。町民の健康は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向けた地域づくりを支える。運動効果を高める体操などの普及に努め、健康管理を町民運動に高めてほしい。

 住民基本台帳に基づく3月末現在の町の人口6475人のうち、高齢者は2113人、高齢化率は約33%で上昇傾向にある。運動不足などに起因する人工透析患者が増え、国民健康保険被保険者の医療費に占める割合は8.7%で、全国平均の6.1%、県平均の5.2%を上回っている。健康を守る取り組みは喫緊の課題と言える。

 連携協定によって町は、専門家が提唱する体幹強化に向けた健康体操を「町の体操」に位置づけ、普及を進める。町民に体を動かす必要性を訴えかける体操の動画などを作成して周知するとしているが、映像を流すだけでは広がりは限定的だろう。まずは、町職員が部署を超えて習得する。その上で、行政区単位で開く高齢者の交流会などに出向いて指導するといった取り組みを充実させるべきだ。

 ウオーキングなど歩く機会の提供にも力を入れる必要がある。町は10キロから2キロの散歩コースを選定し、実践を呼びかけている。花や新緑、紅葉など季節に応じて楽しめるルートを増やし、散歩回数や歩行距離などに応じて努力をたたえる仕組みを整えれば、目標を持って汗を流す動機付けにもなる。

 町は福島医大の協力を得て健康教室を開いている。理学療法士が筋力維持の運動法を高齢者に個別に指導している。町スポーツ協会は、ノルディックウオーキング大会や登山など町民参加型の催しを展開している。これらと健康体操を効果的に組み合わせ、季節や曜日、時間にかかわらず運動したい時に参加できる環境づくりにも注力するよう求めたい。

 町民を呼び戻す施策や移住者らの受け入れ事業をはじめ、交流人口の拡大、農業の振興、教育の充実など復興関連の財政需要は増している。町民が元気に長生きできる試みは、医療費削減など財政面でも重要だ。(円谷真路)

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