「日々の運動は犬の散歩くらい(笑)」 65歳・吉田鋼太郎が衰えない理由は「舞台の時間」

吉田鋼太郎 撮影/イシワタフミアキ

18歳から舞台に立ち、その後『花子とアン』『おっさんずラブ』などのドラマや映像作品でも存在感を示す俳優・吉田鋼太郎。近年では演出家としても活躍する彼の、人生における「THE CHANGE」とはーー。【第2回/全2回】

僕は役者として舞台に立つときもあれば、演出家として舞台の袖から見守るときもあります。演出するうえで一番大事なのは、自分が何をやりたいのかっていうことを、出演者やスタッフにちゃんと分かってもらうこと。

ひとつの台本があって、それを読めば、「だいたいみんなが考えていることは一緒だろう」と思ったら大間違いなんです。みんな、まったく違うことを考えているんですよ。

演出家はみんなが考えている以上のことを細かく考えないといけない。そして、その考えていることはどういうことなのかを噛み砕いて「僕にはこういうことが書いてあるように読める。そういったことも踏まえて演じてほしい」と、細かく丁寧に伝えています。

その人が演じる人物が、髪型はこうで、どういう服が好きで、どういう人生を送ってきたか……そこまでは必要ないだろうっていうところまで細かく丁寧に説明しないと、絶対に分かってもらえないんですよね。で、分かってもらえないままやると、現場が大混乱に陥ったりするわけですよ。このことは演出家としてはとても心掛けています。

ただ、それを伝える時間が長いと他の稽古をする時間がなくなっちゃうので、いかに簡潔に伝えるかということで言葉の表現力が必要になってくるんですね。その表現力には多くの引き出しを持っていなきゃいけないと、常に思っています。

「このままで良いのか、いけないのか、それが問題だ」

現在65歳。「若さの秘訣」をよく聞かれますが、プライベートではジムに行ったり定期的にスポーツをやるってことは、まったくないです(笑)。せいぜい犬の散歩ぐらい。

そもそも、僕は18歳から舞台をやっていて、3時間ぐらい最初から最後まで大声を出しながら走り回ることをもう50年近くやっているから、これは定期的に運動をやっているのと同じことではないかと思っているんです(笑)。

精神面では、「女の人のことを好きな気持ちを、いつまでもなくさないようにしたい」とかって答えを期待しているかもしれないですが(笑)、もちろん、なかなかそうはいかないですよね。

蜷川さんのライフワークだった『彩の国シェイクスピア・シリーズ』を、今は僕が引き継いで演出に携わっています。このシリーズは一度全37作やり遂げたのですが、今春からまた新たなシリーズとして始まります。

全部で37作あるので、年に1回やったとして、終わる頃は90歳超えなんですけど(笑)、シェイクスピアは僕にとってもライフワークなので、ちょっと頑張りたいですね。

シェイクスピアといえば「To be,or not to be, that is the question」っていう有名なセリフが「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」とよく訳されますが、僕は「このままで良いのか、いけないのか、それが問題だ」っていうのが一番合っていると思うんです。

それが今の僕の人生も表していると思うんですよ。もちろん舞台以外にも、これからもドラマや映画を大事にしていきたいと思っていて。

実は、自分がどういう俳優人生を送るのか、興味があるところなんです。まだ「若作りしてでもモテたい」という野心や邪心がありますが、どうこれからスイッチしていくかというのも、今後の展望の中にありますね(笑)。

吉田鋼太郎(よしだ・こうたろう)
1959年1月14日、東京都出身。B型。身長174センチ。シェイクスピア・シアター、東京壱組を経て、1997年に演出家・栗田芳宏とともに劇団AUNを結成。その一方で、『半沢直樹』『花子とアン』などのドラマで映像作品にも関わるようになる。1999年に「第6回読売演劇大賞優秀男優賞」、2001年には「第36回紀伊國屋演芸賞個人賞」、2014年には「第64回芸術選奨 演劇部門文科科学大臣賞」をそれぞれ受賞。吉田が演出、上演台本、出演と一人三役をこなす「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd vol. 1 『ハムレット』」は5月7日(火)~26日(日)まで「彩の国さいたま芸術劇場」にて上演。

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